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なぜ僕がこうなったのかについての2、3の理由(14)

 喫茶店のバイト中にはたいていジーンズだからわからなかったが、ミニスカートをはいてきたBBの足はすらりと形がいい。長いわけではないのだが、ある規則的な丸みを帯びた肉づきがかわいらしさを感じさせる。白いジーンズ生地のミニに、丈の短いグレーのパーカーが、テーブルにひじをついたBBにぴったんこ、という感じだった。
僕はたぶん口を半分開いたまま、ふくらはぎの形を観察しつつBBの話を聞いていたんだろう。唾液が口にたまってしょうがなかった。注文したブルーマウンテンアイスコーヒーを飲んでしまったあと、水ばかりお代わりしていた。
 「映画、面白かった?」
 「正直言って、期待はずれだったかな。この監督の前作がすごく良かったから、期待しすぎちゃってたんだね」
正直にものをいうBBはいい。僕に腹を割ってくれてるという印象を受けて勝手にうれしくなる。
 「じゃ次は映画じゃないほうがいいみたいだな。遊園地とか好き?」
 「ディズニーランド以外なら」
 次の休みに、車で迎えに行く約束をさせられた。車は持ってないのだが、しかたがない。友人に借りるとかする。どの遊園地に行くかは、BBが考えておくことになった。カフェを出て、外を少し散歩したあとに、雑誌にのっていた夜景が見えるダイニングカフェに連れて行こうとも考えていたのだが、BBは用事があるから帰ると言い出した。じゃあ、またねといわれても僕は落胆したりしない。次の遊園地デートは具体化しつつある。

 別れる直前、BBは僕の背中をぽんぽんとたたき、今日はどうも、とお礼を言った。たたかなくていいよ、と思ったりしたが、僕はこちらこそどうも、とお礼を返した。街路樹が街道沿いに植えられた道から見上げる湿った空からは、ぽつんと雨のしずくが落ちてきた。夜景なんて今夜はあまり楽しめそうにない。雨に濡れないように早く帰ってね、と言って地下鉄の階段を軽やかに下りていくBBの後ろ姿を、見えなくなるまで追った。BBは一度も振り返らずに、曲がり角を曲がっていった。

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