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なぜ僕がこうなったのかについての2、3の理由(8)

  次は、日本語を修行したくて、弁論部に所属したという奴。商社に勤める父親のために5歳から10年間イギリスで、3年間をオランダで過ごし、家では日本語だったんだけど、他はすべて英語で生活したから、日本語にいまいち自信がないという。たしかに言葉の端々になまりがある。ファーストネームがイエヤスっていうんだけど、あっちだと長くて言いにくい名前だし、イエスと間違えられるから、ジョンって呼ばせてたんだ、そのほうがわかりやすいでしょ。漢字とか書けるの?と聞くと、そりゃ、そこまで馬鹿にしないでよ、とはしゃぐ。じゃあ、英語とかぺらぺらなの?と聞くと、そりゃそうです、あとフランス語も少々。今一番楽なのは、と聞くと、英語かなあと困った顔で答えた。
 

 次は僕の番だった。これまでの3人に圧倒されかけたが、ありのままを言えばいいじゃないかという開き直りとともに、それでいい、という気がしてきた。だって、しかたがないじゃないか、僕のせいじゃない。小学生の駄々っ子がしゃべるみたいに、だって、が心の中でこだまする。だって、生まれが違うんだもの。僕は山梨県出身、実家は酒屋、推薦入学、彼女なし、サークルは「くろねこ」、と自己紹介した。みな三様に反応してくれた。ハラダは、ああ、くろねこなら何人か知り合いいるよ、あそこはのんびりしてて君に合いそうなとこだねえ、ヒロくんは、僕も彼女いないからさ、今度合コン一緒にやろうよ、イエヤスは、山梨ってどのへんにあるの?と言った。僕は帰り道、日本酒と焼酎を両手いっぱいに買い込んで、自分の部屋でひとり飲み直し、すすんで飲み潰れた。 

 あの日酔い潰れた夜と、今のこの布団の中でぐだぐだしてる状況とどこが違うんだ?この1年半、僕はサークルの連中と遊びまくっていた。そのほかは、時間が過ぎていっただけのように思う。やらなきゃならないことはたくさんあるはずなのに、そのどれもが自分に必要喫緊なこととはどうしても思えない。うわの空な毎日が過ぎていくばかりで、結局なにも残らない。まわりのものすべてを消費するばかりで、おなかがいっぱいになることを知らず、食べ尽くしたとたんにもっともっととねだるのだ。

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