ショートショート「棒アイドル」
たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加しました。
今回のお題は「棒アイドル」
棒アイドル
わたしは、棒です。
棒のアイドルでした。
姿形の美しさだけでなく、かなり努力もしました。
でしゃばらない力強さ、存在感。
棒が目の前に落ちていたら、普通は邪魔ですよね?それを、
「棒が落ちてる。そうだ、カレと一緒に砂浜でハートマーク書こう」
そう思わせる佇まいを、努力で身につけるのです。
ハートマークでお役に立つほかにも、一人暮らしの人の背中を掻いたり、もちろん疲れた人の杖代わりにもなりました。
ふふっ、人気ありましたよ。
ですがある日、悪者に連れ去られて…。
そう、あなたの会社の社長。
彼は気に入らない部下を、わたしを使って叩いて…。
でもあなたはカッコよかった。
社長に立ち向かい、追い出した。
だから、わたしはあなたの家に来ました。
お役に立ちたくて。
筋トレの補助や、肩が凝ったときにも使ってほしいのです。
だからアイドル、引退します。
みんなのアイドル、できなくなりました。
だって、たったひとりの人を好きになったの…あなたを…。
***終わり***
読んでくださってありがとうございました。