「オード」生井祐介さん、5月9日の答。
―架空の3店舗―
「Ode(オード)」が『アジアのベストレストラン50(Asia's 50 Best Restaurants)』35位を獲得したのは、東京オリンピック延期が決まった3月24日だった。本来なら予約が殺到するタイミングでの自粛、休業。しかしみんなの心配をよそに、生井祐介シェフは3つのレーベルでテイクアウトを始めた。架空の店舗とその物語、音楽までキメる、その世界観はじつに痛快。
結果を出した、というほうが大事
そう、それみんな言ってくれるんですよ。せっかくの『アジアのベストレストラン50』初登場が、この状況で気の毒だと。
でも僕自身はあまり気にしてなくて、まぁまぁもう大丈夫だけどって思ってます(笑)。
自分っぽいな、とも感じるんですよ。みんなに注目されて、おめでとう!やったぜ!っていうのもガラじゃないから。
コロナの件がなければ、今年の授賞式は佐賀県武雄市で開催予定でした。スタッフ全員連れて行きたいから、2月は航空券や宿泊先の手配などしてみんなで盛り上がってもいました。
3月初旬に運営の方から、海外のシェフたちも来られないし、リスクも高いので中止という知らせがあり、3月24日に東京で小規模のライブストリーミングを開催、という経緯です。
たしかに大っぴらに喜べる状況ではなかったけど、僕らにとっては35位にランクインできたという結果のほうが大事で、それは変わらないので。
僕の予想はなんとなく42位くらいだったから、それより上位で、長くセレモニーも楽しめたのでよかったです。早く呼ばれちゃうとドキドキできないでしょう?
2017年9月にオープンした当初から、「Ode(オード)」の大きな目標は、海外からも来てもらえるレストランになることでした。スタッフ全員がそこに向かってがんばってきたので、僕らにとっては、一緒になって心から喜んだ瞬間でした。
本当は去年のランクインを目指していたんですけど、でも結局、今回のタイミングが正しかったんだと思います。
1年目はベスト50常連のお店と同じように、海外を行き来して世界の人の目に触れればなんとかなるんじゃないか?っていう考えもあったんです。
でも、そうじゃないとわかった。
(海外とのコラボでも)普段のレストラン営業と同じように、お客さんとちゃんと向き合って、心を通い合わせないと伝わらないんだと。そういう気づきが大きくて、2年目は気負わず臨んだ。そうしたら結果がついてきました。
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