あんずのジャム
あんずのジャム。
というものが憧れだった。
1 あんずのジャム
6月の初夏。まだ鎌倉郵便局長だった頃。
友だちの家に行ったら、料理研究家のお義母さんがいた。
「あら、局長さん。今日これから杏のジャムを煮るんだけれど、一緒にされませんこと?」
「お友達から大量に杏が届いたの。この時期は作っても作っても杏ジャムづくり。みんなにおすそわけするの。」うれしそうに、大変そうに。でも嬉しそうに。
とっておきの杏ジャムの作り方を教えてもらう。
あんずを割りタネをとる。砂糖を入れて寝かせて。グツグツと時間をかけて煮る。ぐるぐるかき混ぜる、飛び跳ねたジャムの熱さ、甘やかな香り、湯気のあたたかさ。瓶を消毒してずらりと並べる。そろそろいいかな?ジャムテスト。脱気。つやつやのピカピカのジャム。種の魔法✨
あれがわたしの、幸せな風景の原点だ。
豊かさの象徴。。。と言ってもよいだろうか。
なんだかなあ。
私のほしいものが、ギュッと詰まってる時間な気がしたのだ。
泣きそうなぐらい、豊かな光景だった。
あの頃、ソレが何だか
ぜんぜん気付いてなかったけどね。
人が何を好きだと思うか、歓びとするかは人それぞれだ。
都会のおしゃれでベンリな生活が好きな人もいるし、海と暮らすのが好きな人もいる。バリバリ仕事をするのが大好きな人も、音楽が豊かな暮らしや、山登りや子供や猫との暮らしがいい人もいるだろう。
私にとっては、「あの時間」こそが、こよなく憧れの存在だったのだ。
2 暮らしとしごと。7年目に思うこと。
今年も11月11日がやってきた。
私が第一の人生を退職した日。第二の人生も、7年目に入る。
「暮らしとしごと」
この7年「しごと」をつくるかたわらで、1つ1つ自分が好きだと思う、あるといいなと思うもので「暮らし」を作り上げてきた。
もう何年目ということを意識することもないのだけれど。。。フトもうすぐ11月11日だなーと思ったら「あんずのジャム」がプカリと浮かんできた。気がついたら今わたしの暮らしは、あの頃、心の奥底であこがれてあこがれてあこがれたモノたちでできている。
そう。
あんずのジャムの世界に生きている。
季節の旬の、自然な美味しいたべもの。
暮らしのほとんどが、手の仕事でできている。
共感する仲良しの仲間たちと家族と、自然と生きる日々。
社会と人のお役に立ちながら、生きる希望も、暮らしも満ちる。
自分も満ちて、人も満ちる。
春は、苦味のある菜の花たち。柑橘。走りの筍。
初夏は、梅仕事。杏ジャム。柑橘しぼりたてジュース。山椒。
夏は、つやつやの夏野菜!トマト・キューリ・茄子・ゴーヤ・・・桃もね。
秋は、実がなる。さんざん梨を食べ、スダチを絞り、柿、栗・くるみに、お芋。
冬は、レモン、柚子。大根やカブ、白菜も寒さで美味しい。お味噌の仕込みもね。
きほん、在宅仕事だからね。
手仕事の合間に、パソコン仕事の合間に、自然をいただく。
3 あの線路から、外れたところにあったもの。
世の中の「こうあるべき」
自分の中の「見栄」「常識(とじぶんが思うもの)」・・・
いろんなものをぜ〜んぶ取っ払うと、あんずのジャムだった。
良い大学に入ることがよきことで。
良い就職先に入ることがよきことで。
日本の国が、世の中が良くなることが大好きで、たまたま少し勉強ができたから。
いつしかご縁で霞ヶ関まで行き。
深夜まで、早朝まで、働き続けたけれど。
40万社員さんの会社で、がんばってみんなと楽しくやりがいあるお仕事をし。与えられた役職とそれに見合う働きを!とがんばったけれど。
都会生活もさんざん味わい。ブランド品も買い、季節ごとに流行りを少し取り入れたお洋服を買ったり、東京のお店やデパ地下、毎日コンビニ生活だったけれども。。。
あの線路の上にいたときは、気づかなかったなあ。。。。
あの線路を進み続けることこそが、使命だと思っていた。
”個”の
すべてとっぱらった私は、こういう人だったのだなあ。という。
さて、またよき7年目を、重ねていきたいと思う。
暮らしとしごと。
今年は、ワイン味噌を仕込みたいなあ。
魚料理もうまくなりたい。
ダーニング刺繍でたっぷりお直しもしたいし。カンタの上掛けもはじめよう。
織りの腕前を磨き、HPも作り、オーダー手仕事で人に歓びをもたらしたい。
旅もしたいし、共感する人にも出会いたい。
整体ももっと腕を磨きたいし。美味しい野菜とイチゴも作りたい。
そして何より、人に、社会に、生きる希望の光を灯し続けるプロジェクトたち✨✨✨
感謝しかない、日々。
トントン。
あなたは、どんな人ですか。
あなたの、憧れはなんですか。
いつか、どんな暮らしをしたいですか。
いつか、どんなしごとをしたいですか。
それはきっと、いつかではなく。
小さくとも。
今、はじめてよいものなのじゃないかな。
7年目の秋に。
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