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真夜中のマトリショカ
寝不足での夜勤ほど堪えるものはない。こんな日に限ってハードな夜になったりするのだ。
開けても開けても同じ人形が出てくるロシアのお人形、マトリショカと言おうか、それとも倒しても倒しても起き上がるお人形、おきあがりぼこしとでも言おうか。
ある認知症のおばあちゃんが寝てくれないんだ。
眠れないから寝かせて、部屋が分からないから連れてって、とナース室前に歩いて来る。
部屋へ案内して布団をかけてドアを閉める。ナース室に戻ってひと息つくとまた出てくる。
眠れない、どうすればいいの、と部屋から出てくる。
段々スパンが短くなりベッドに横になった途端起き上がるんだ。
10分の間に3回、それが不定期にエンドレスに続く。
巡回をしていると姿が見えないから諦める事もあるが、
ドンドンドンとドアを叩き、誰かいないの?部屋へ連れて行って!と言う。
真夜中だ、他の方が起きてきちゃうって。
そこそこの距離をダッシュして再び部屋へ連れていく。
おばあちゃんもフラフラだが、私もクタクタ汗まみれになる。
眠れないというよりも、もはや鍛えているレベル?
腹筋割れてるんじゃないかな?
そうこうしていると、別のおじいちゃんが紙パンツ姿で廊下に立っている。
パンツをまさぐって 、んん?
あっ、この仕草は
放尿のサインだ!!
すかさずトイレまで誘導できて、思わずガッツポーズだ。
その後部屋へ連れていったら、水溜りが光ってる。
そっか、今夜は二度目のおしっこだったのね。
まあ、ベッドは無事だし廊下での蛮行は阻止したから上出来だよね。
久しぶりに不穏な夜にノックアウトされたけど、もし自宅でこのような状況だったら…きっと共倒れだ。
介護って千差万別なんだよね。
うちの母みたいに身体が思うようにいかない人もあり、記憶が根付かない人もいて、寡黙な人から暴言吐く人、放尿する人etc …
介護を体験すると心底世界観変わるんだ。
入院されている人の介護をしたり、反対に世話してもらう側の家族の立場になったりするとなおのこと。
何が正解なのか答えはない。
考えて考え抜いて、無理やりでも納得するしかないんだ。
介護だけじゃないよね。
ひとつひとつの生活を納得して選んで
それで失敗しようが七転び八起き
そう、おきあがりぼこしのように。
と言っても
夜勤明けの今夜はゆっくり寝ちゃいますけどね。
おやすみ。