【Opera】DOTオペラ第1回コンサート『アイーダ』
DOTオペラ第1回コンサート『アイーダ』@府中の森芸術劇場ウィーンホール(DOTとは「Dodo、Onodera、Torikiの頭文字だそう)。とにかく、歌手陣のものすごいクオリティの高さに度肝を抜かれました。演奏会形式なのに、歌の背後にエジプトの神殿が、ナイル川が、見える……!観客が少なかったのですが、もったいないの一言。みなさん素晴らしかったのですが、特に印象に残ったのは鳥木弥生さんのアムネリス。権力をかさに着て人の恋路を邪魔するアムネリスは、演じ方によっては単なるヒステリックな女性になりかねない。しかし鳥木さんのアムネリスは、アイーダへの嫉妬の炎はあくまでも強烈で、でも恋に身を焦がす場面ではか弱さや切なさを見せ、ラダメスが捕えられてしまうと身悶えするほど苦悩する。その表現のアップダウンが素晴らしく、かつ、人としてのイヤな面をこれでもかと見せつつ王女としての気高さを決して失わないところに非常に感動しました。
さて、本公演は「ピアノ伴奏」による演奏会形式で行われたわけですが、このスタイルによるオペラ上演の意義は、もっともっと認識されていい。舞台上演ではオーケストラの響きや装置などのヴィジュアル情報の多さのために、きちんと勉強している人でないとわかりづらい「音楽の構造」というものがみえてくる。作曲家が創り上げたハーモニーという縦の線とメロディという横の線の組み合わせ。そこから生まれる音楽が表している「意味」とは何なのか。こうしたことは、このスタイルだからこそはっきりとわかるものです。もちろんそれは、今回でいえば小埜寺美樹さんという類稀なコレペティトゥーアのピアノ演奏があればこそ、ではありますが。
そしてコレペティトゥーアという存在のすごさを知ることができるのも、このスタイルの利点です。コレペティトゥーアは、普通に劇場でオペラを観ているだけでは知ることのできない役割ですが、この縁の下の力持ちがいなければどんなゴージャスなオペラ公演もできないという意味では、何よりも誰よりも必要な才能なのです。今回の演奏は、そうしたコレペティトゥーアの重要性をはっきりと印象づけるものでした。
余談ですが、実は私、ピアノと共に歌も習っていた時期があって、その先生のところでは2年に1度オペラか創作ミュージカルの舞台を上演していて合唱で乗ったりしていた。だから、私がオペラというものにきちんと接したのはこの「ピアノ伴奏」によるスタイルだったのです。これは今でも、音楽を理解する上での財産になっていると思っています。
閑話休題。
オペラは音楽。今の状況の中でお金をあまりかけずにそのことを知る上で、ピアノ伴奏による演奏会形式上演はもっとあってもいいな、と思わされる公演でした。それにしても、このメンバーで舞台上演をしたらどれだけすごい『アイーダ』になることか。観たいなー。
アイーダ 百々あずさ(S)/ラダメス 与儀巧(T)/アムネリス 鳥木弥生(MS )/アモナズロ 町英和(Br)/ラムフィス 伊藤貴之(Bs)/巫女 吉田珠代(S)
ピアノ 小埜寺美樹
2020年11月30日、府中の森芸術劇場ウィーンホール
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![室田尚子](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/4125891/profile_386861ddcdba18fe667dfcf545cb55d1.jpg?width=600&crop=1:1,smart)