『이야기 요정』(おはなしの妖精)
『이야기 요정』(おはなしの妖精)というとても可愛い本が韓国から届きました。こだわりの詰まった本づくりをしている個性派の出版社 atnoonbooks(엣눈북스)から6月20日に発行されたばかりの大人の絵本です。
atnoonbooksのInstagramなどで書影は何度も目にしていましたが、手に取って驚いたのは本の小ささ! なんと横15㎝×縦13㎝で、わたしの両手の手のひらにすっぽりおさまってしまうサイズです。これはかなり特別な例ですが、韓国の本って判型がわりと自由ですよね。(絵本作家のペク・ヒナさんも超ミニサイズの新作を出したばかり)
うちの子どもたちは小さい本が大好きで、小さいというだけで喜びが増すようなので、これは我が家にとっては嬉しいサプライズでした。
黄色をベースにした優しい色彩の表紙には物語の登場人物たちが描かれ、裏表紙には「이야기의 힘을 믿는 모두에게(物語の力を信じるすべての人へ)」ということばが小さく書かれています。このひっそり控えめな裏表紙のデザインがまた素敵!
公式のブックトレイラーが公開されていますが、ちょっと出し惜しみしている感じで(当たり前…)ほんとうはもっとさまざまなテイストのページがあります。とにかく言えることは、チェ・ヨンジュさんの絵がほんとうに素敵だということ! この方、5月に日本でも翻訳出版された『Mo Story 子猫のモー』(矢部太郎訳、玄光社)の作者さんです。原書の『모 이야기』も同じくatnoonbooksから出ていて、こちらも布張りの特別感のある本です。わたしは『모 이야기』でチェ・ヨンジェさんの絵に一目惚れしてしまったので(ものすごく有名なイラストレーターさんだとも知らず翻訳したいと騒いでいた)、今回も作家さんのお名前を見て迷わず買いました。
「おはなしの妖精」のストーリー
あるところに、新しいおはなしが思い浮かばずスランプに陥った作家がいました(表紙で鉛筆をかついでいる帽子のおじさん)。行き詰まった作家は藁にもすがる思いで「おはなしの妖精」に助けを求め、そんな作家の悲痛な手紙を受け取った妖精は、さっそく「おはなしの種」を持って作家を助けに向かいます。ところがところが…(つづきは本を読んでください)
ネタばれになってしまう発言は控えたいと思いますが、だれの人生にもだれかに聞いてもらいたい固有の物語があること、そしてスランプを乗り越えてまた歩みだすための「種」は自分のなかにあることを感じさせてくれるおはなしでした。
それと、これは子どもに読んであげるために口に出して読んでいて気づいたことですが、「おはなしの妖精」の言葉や行動というのがつねに相手への心配や配慮に満ちていて柔らかく優しいので、それが読者の心にも響てくるのだと思います。
作者のチョン・ミジンさんはatnoonbooksからたくさん著書を出されている方なので、今後注目してみたいと思います。
大人も子どもも
atnoonbooksは大人向けの絵本を作っているという印象がありましたが、『이야기 요정』は7歳の息子も興味を持って読んでいたし、さらには3歳の娘も自分の手の大きさにぴったりの本を嬉しそうに開いて「なんで幽霊はトゲトゲなんだろう…」「ねこちゃんはお空に行ったらもう会えないの?」とたずねながら熱心に読んでいます。「120ページもあるから大人向け」なんていう安易な分類は無意味で、いい絵本は大人も子どももいっしょに楽しめるものなのだと実感しました。
韓国語多読にも
小さいながらも120ページあるので、それなりにボリュームがある本ですが、普通の絵本を3冊分読むくらいの感覚で読みきれると思います。満足度は抜群で、心地よい読後感が味わえます。 ソルレム韓国語多読の会でもぜひ読んでみてください。7月の会から本棚に追加します。
書籍情報
題名:이야기 요정(おはなしの妖精)
著者:정미진(チョン・ミジン)文
최연주(チェ・ヨンジュ)絵
出版社:엣눈북스(atnoonbooks)
発行日:2024年6月20日
ISBN:9791188594313
ページ数:120ページ
教保文庫リンク:https://product.kyobobook.co.kr/detail/S000213544817
atnoonbooks
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