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Flying Solo (博多編)

3年ぶりの帰国。めずらしくひとり旅。会った人たち、目にしたもの、考えたことを徒然なるままに書き綴っております。最初から読んでやってもいいぞという方はこちらからどうぞ。

二泊目の夜は広島港の方に宿を取った。そろそろ海が恋しくなってきたのだ。海の見える窓際に座って静かに心を落ち着ける。今日一日見たこと、聞いたこと、話したことに情緒が追いつかない。頭の中が忙しい。

大浴場があるホテルで、QRコードを読み込むと、混雑状況が分かる。便利な世の中だ。空いている時を狙って行ったら、しばらく露天風呂を独り占めできた。

翌日はまた新幹線に乗り込み、次は博多へ向かう。博多で待ってくれているのももちろんClubhouseのお友達。

日本からイギリス、ドイツに移り住み、ドイツ人のご主人とドイツで生まれたお嬢さんと日本に戻って、イラストとともにご家族との毎日のあれこれを超絶面白いブログに書いている。

最近はギターにばっかり夢中で、なかなかブログを書いてくれないのだけど、そんなに夢中になれるものがあるのは正直とても羨ましいし、三度の飯よりギターという姿勢はむしろ清々しい。

Clubhouseでの彼女はクールで、時に辛口。でも言うことはいちいち的を得ていて説得力がある。たぶん本人は説得するつもりなどないのだろうけれど。

改札口で待っていた彼女に会った時、Clubhouseで知り合った誰もに共通する、初めて会った気がしない、不思議な懐かしさをもちろん感じたのだけど、それだけじゃない何かがある。何だろう。敢えて言うならいい塩梅?何だそれ。

まずはホテルに荷物を置きに行き、そこからぶらぶら歩いて天神駅へ向かう。

福岡は両親が新婚時代に過ごした街で、私も母のお腹の中にいたせいか、何となく知らない土地という感じがしない。

住んだことはなく、仕事で何度か訪れただけで、ゆっくり来たこともない。それでも両親に色々とその頃の話を聞いているせいか、はたまたDNAレベルに埋め込まれているのかはわからないけど、しっくり肌に馴染む感じがする。

天神から西鉄電車に乗る。井尻駅を通過して、両親がこのあたりに住んでいたと言っていたのを思い出した。他愛のないことを話しながら、ゆっくりと太宰府天満宮へと向かう。車窓からの日差しがぽかぽか暖かい。

太宰府は平日なのにやはり名所だけあって人が多い。お土産屋が並ぶ参道を進んで行く。残念ながら御本殿は改修工事中で拝めなかった。

梅がふわりと香る。道真公を慕って京都から飛んできたという伝説の飛梅も咲いている。

奥にあるお茶屋で、梅を愛でながらお抹茶と梅ヶ枝餅を頂く。焼きたてでかりっともちもちの皮と、甘さ控えめのあんこの黄金比。

そこで彼女がインスタライブを始めた。 Clubhouseの仲間たちが見に来てくれて、その時に撮られたスクリーンショットを見て驚いた。

私は彼女の前で、こんな穏やかな顔をしているんだ。自分のこんな顔、久しぶりに見たな。いつもはあまりにアレだもんな。そう言えば私、びっくりするほど肩の力が抜けてる。

彼女が夕食の予約をしておいてくれたのは、天神にある魚男(Fishman)という、文字通り魚中心の炉端焼きのお店だった。

何を食べても美味しかったが、特筆すべきはオリジナルの燻製醤油を使った鮪の漬け。九州醤油の甘みと鼻に抜けるスモーキーな香り。甘めに炊いた岩のりを付けて頂くとこれがもう絶品。らっきょうが入ったタルタルソース付きの、中が半レアのアジフライも味わい深い逸品。両方毎日食べたい。博多バンザイ。

彼女と半日一緒に過ごして、何も飾らずどこにも力が入っていない自分を振り返って、なぜなのかを考えてみた。

距離感が絶妙で心地よさが尋常じゃないのだ。まるで昔からの友達みたいで、そこに彼女がいるという安心感が、ともするとあちこちに飛んで行きかねない私の心を地につかせてくれる。

けれど彼女は決して「待て待て」と襟首を掴んだりはしない。「アタシはアタシ、アンタはアンタ。だから飛んで行きたければ飛んで行けばいい。それは尊重するよ」というスタンスが痺れるほど心地良いのだ。

まるで温かさと涼しさのバランスが絶妙な露天風呂に入ってるみたい。どうりでリラックスしてるわけだ。ずっと浸かっていたい。

大学生の時にお母様を亡くしたことで、彼女は突然大人にならざるを得なかった。それからはとまどいも苦労もたくさんあったと思う。でもそんな素振りは見せない。

その強さが彼女のバックボーンであることは間違いないけれど、しなやかさがあってポキッと折れてしまいそうな心許なさはない。それが私の感じる絶対的な安定感なのだと思う。

しかも国際結婚にまつわる時にはアタマの痛いことも、笑ってしまえる潔さと知性も備わっている。

そうか、さっき改札で感じ取ったのは、佇まいに滲み出たこの格好良さなんだな。そう思いながら写真の中の私たちを見ると、本当に昔からの友達同士みたいに笑っていた。

続く

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