ラビット関根に似た女
中卒で食品工場に就職した。
中卒の女子も半分以上いた。
先輩やオッチャンがあの娘と付き合えとか
やたら誰かとひっ付けようとする。
機械部のオッチャンが中卒同期のラビット関根に似た
野中さんを推薦してきた。
目は二重瞼でバッチリしており頬骨が大きく可愛いんだかなんだか微妙な感じの女子だった。
私は他の部署のジャッキーチェンの顔に似ていた女子が気になっていた。
よく言えば山口百恵さんにも似ていて良く言われると言っていた。
私が好意を持っているという事を社交的で話し好きのオッチャンはジャッキーに伝えた。
百恵ちゃんはともかく私がジャッキーチェンに似てると言っとったという話もそのまま機械部のオッチャンがいうとメチャ怒っていたという。
ジャッキー(百恵ちゃん)は自分の写真を何枚かくれた。そのフォトは美少女だし可愛いらしいが、多少色黒でやっぱり百恵ちゃんより、やっぱり一流アクションスター、ジャッキー寄りに観えた。
しかし、野中さんもジャッキーも結局、先輩や先輩の友達と付き合い始めた。
職場を辞める事になった。
自宅に電話がかかってきた。
職場の女子グループからだった。
あんまり喋った事の無い女子まで電話で話したいという。
妙に照れたが一人一人と声を交換した。
泣いてる娘がいたのはビックリした。
胸を撃たれた。
まだ若い純粋な女子労働者達は仲間意識を持っていてくれていたのだ!そんな想ひも気づいてなかったのか!
汲みとるべき、感謝すべき、うつくしいものなのだ。
高校に行かなかった行けなかった女子達・・
それは底辺というのかもしれない・・・
でもまだみんな15〜6歳の儚い熱い青春なのだ。
私はこれまでの自分の浅はかな傲慢な態度も反省した・・・
ラビット関根激似の野中さんが一番号泣していた。
何度も私の名前を呼び、辞めんといて、なんで、なんでぇと泣きじゃくる。
清純な少女の泣き声だった。
ラビット野中さんが私に好意を持っていた事は聴いてはいた。
あの時付き合ってといってくれたら絶対付き合ってたと言っていたのを先輩から聴いていたし、機械部のオッチャンも野中さんと付き合えよと何度も勧めてきていた。
サヨナラの電話の後、ラビット野中さんをかなり好きになっている自分に気づいた。
感情こそが人を突き動かすのだ。
野中さんごめんね・・・
1983〜4年頃の記憶
まだ昭和だったのか・・・
完