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いやらしい目つきのヘビメタ。

20代モテないさえない友人と毎週のように週末
居酒屋に行った。
相席で女子とチャンスになった時は頻繁にあったのに
AVのようにそのままプレイに至る事はできなかった。
手練れな男はここで差をつけるのだろうか。
円型のテーブルに男同志で座った。
両サイドに女性二人連れ。
完全にチャンスだった。
飲み食いが進み両サイドの女子も解放的な雰囲気で
会話できた。
ヒソヒソ話しを友人は聴き取り女子のうち1人は私をタイプだといい、もう1人は友人の方をタイプだと言う。
脈がありそうだった。

円形のテーブル女子の隣りにはメガネをかけたヘビメタが着席して連れと音楽談義していたのも聴き逃さなかった。
「ボーカルが・・」
「イングベィが!」
「泣きのギターか"・・」
そういったフレーズが聴こえてくる。

バンドのボーカルをしていた友人と顔を見合わせて笑った。
長髪で大きめのメガネかサングラスをかけた定番的なスタイル。
伊藤政則氏やみうらじゅん的な風貌。
ニセの政則氏はビールの中ジョッキを口につけテーブルにカタンと下ろすたびに音楽の会話をしていた連れの方向から左隣りの女子2人へと視線を移した。

急に嬉しくなってきてヘビメタを観察していた。
メインは友人との音楽談義、理論なのが認識できた。
話をして酒を口にする。カタンと大きめのグラスを置く。そして女子をチラッチラッ。
リズミカルな動作だった。一定の何秒か何泊か何分かリズムをキープしていたと思う。
元ヘビメタの友人もそのリズミカルな動作に気づいていた。
喋って、ゴックン、そして女子をチラリ。
何度もリピート。
ワンモアタイム♪OK
女子をチラリの度、友人と必死に笑いを堪えていた。

ヘビメタに場を持ってかれた私と友人は隣りの女子を軟派する集中力を無くしていた。
ヘビメタは非常に大きな眼をしていた。
二重瞼だった。ジロリ。
その風貌はあきらかに一流音楽評論家の伊藤政則氏を彷彿させる。 

女子達はヘビメタのいやらしい目つきには
気づいていないようだった。
ヘビメタの視線の切り替えはそれくらい世を忍ぶ巧妙なものに感じられた。

ヘビメタのエロチズムが滲みでた淫した目つきは
肉慾がヘビメタの主題だと言う事を教示してくれたように想える。
宗教的な崇高な音楽談義をカマしても
「ボーカルが」
どうのこうの言っても
唄の侘び寂びの出し方や楽器の音を出したいのでなく普通に精液を出したいのだ。 
ソレは皆んなそうだ笑

人を突き動かすのは「肉慾」なのだ。やがて左隣りの女子二人は明るく席を立っていった。
ほぼ同時にヘビメタも腰を上げながらまだ着席している左隣りの女子二人を観ていた。
タイプなのか。器量の良い女子だったのは確か。

その視線はもう最後だからチラ見からガン見へと明らかにシフトアップしていた。
野生の虎の如くもの凄い目付きに変わっていた。
アイ・オブ・ザ・タイガー♪

だがニセ政則氏の眼は闘う漢の眼とは微妙に違っていた。
ソレは自尊心と虚栄心の違いの関係性を彷彿させる難解なもののように感じた。
その目付きはシンプルな若い音楽家志望者の本能的な「肉慾的視線」だったとそう断定できる!

そしてヘビメタと話の聴き手はどこかに帰っていった。
連れとファッションヘルスに抜きにでも行ったのだろう・・・・

   1988〜1990 のいずれかの夏の記録。


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