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28年ぶりの勝利にも動じなかった 立教大主将、森上衛のハート

アメリカンフットボールの関東学生TOP8第2節、立教大学と慶應大学の試合が、9月15日(土)に東京都調布のアミノバイタルフィールドであり、立教大が17-3で勝利した。立教大が慶應大に秋季リーグ戦で勝利したのは、28年ぶりのことだった。

立教大学○17-3●慶應義塾大学@アミノバイタルフィールド【9月15日(土)】

試合開始前のハドル。関西弁で仲間を鼓舞する立教大主将、森上衛(SF#8=関西学院)の目に、涙が見えた。

普段冷静な森上の感情の高ぶりに、不意をつかれた。いつもはどちらかというと、厳しくもとめるタイプ。そんな森上が、まっすぐ感情に訴えかけたのには、彼なりの考えがあった。

「楽しんで勝とう」

今春のオープン戦、立教大は対慶應大戦に勝利した。しかし、本番の秋には、慶應大に28年間勝ち星がなかった。森上自身、このことについて特別な感情は持っていなかったが、前日の練習後は緊張で表情が硬いメンバーもいた。そんな緊張をほぐしてやっていこうと思い、迎えた初戦だった。


「今日はゲームや。自分たちは楽しんでいる時の方が強い、フットボールを楽しんだほうが最後は勝つ。試合を楽しみ倒したろう!」

家を出た時から、ハドルで何を話すか考えていたという森上は、試合を前に、涙を浮かべながら仲間に語りかけた。

まさか、自分でも泣くとはおもわなかったというが、「最後の初戦」と思うと、感情が溢れた。

試合前日の全体ミーティングでは、中村監督から、昨年は先制したチームが82%の確率で勝利したという話がされた。

「なんとしても先制する」

強い気持ちで結束した立教大は、序盤からランニングゲームを優位にすすめ、一度もリードを許すことなく、危なげない試合運びで慶應大に勝利した。

目標への覚悟

試合後、立教大の選手らは、試合前の高揚とは打って変わり、粛々とロッカーへ引き上げた。28年ぶりの勝利にも関わらず落ち着いた様子に、第1節の盛り上がり(9月2日に行われた明治大vs法政大、明治大が16-14で32年ぶりの勝利)と比べ、肩透かしを食った。このことについて、森上は言う。

「第1節は、まるで優勝したかのような騒ぎだった。自分たちの目標はもっと先にある。舞い上がらず、しっかりと地に足をつけてやっていこうと話をしてきた」

初戦に勝ったからと浮かれていては覚束ない、今年の目標はあくまで日本一。強い覚悟と高い意識の浸透が伺えた。

自分を信じ、仲間を信じる

次節は9月29日(土)、法政大に勝利して勢いに乗る対明治大だ。森上に試合のポイントをきいた。

「(明治大の)フィジカルの強さは、昨年までの経験で十二分に知っている。攻撃はランが強力で、守備はDBが上手い」。そして、「二週間で生まれ変わることはできない。今日までやってきたことを思い出し、目の前の1プレーで自分と仲間を信じることが大事」と続けた。

明治大は例年、シーズンの終盤戦で当たる相手だが、今年は序盤、2戦目での対戦となる。「向こうもまだまだ元気なはず。一層気を引き締めてやっていかなければいけない」とも語った。

チームの仕上がりについては、春よりも着実に「なりたい姿」に近づいているという。

「以前は試合に出ている人間しか発言できない空気があったが、それではだめ。このところ、ASの岩月、DL岡、LB田邊、DB中谷ら3年が、どんどん周りに求めるようになってきた。いい流れだと思う」と、リーダシップの台頭に期待する。

一方で、「自分らはBIG8を経験している分、絶対に落ちてはダメだという強い思いがあったはず。しかし、3年経つとどうしても忘れてしまっている部分もある。ネガティブに考える必要はないが、もっともっと、高いレベルを目指してやっていかなければいけない」と自戒も忘れない。

一流のリーダーシップ

森上は、名門関学高の出身。3年次には主将を務め、高校日本一を達成した。いわば「フットボールエリート」の森上が、関学大ではなく立教大に進学したというトピックスは、これまでも散々取り沙汰され、昨季は3年生ながら、異例の副将にも抜擢された。

古豪復権を期する、ルーツ校の立教大にとって、森上の手腕に期待するものは確かに大きかった。

ーープレッシャーに感じたことはなかったか。

最後に、愚問を承知で尋ねた。

「名門出身だからと期待されることは、入部を決めた時点でわかっていたこと。SFというポジション(守備の最後尾)についても、プレッシャーと感じたことはない」

一流の自覚と胆力をもつリーダー。森上の語ることばの一言は、終始力強かった。

【文・写真/北川直樹】

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