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「解釈の幅」のあるビジュアル開発がしたい
この記事はMIMIGURI Advent Calendar 2022の14日目の記事です。今までの記事は、こちらのページのカレンダーにリンクがまとまっていますので、ぜひご覧ください。
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私は今回「葛藤」と「学習」をテーマにCULTIBASEのビジュアル開発における葛藤ついての話ができればと思っています。
ビジュアル開発する時のジレンマ
改めて、自己紹介です。株式会社MIMIGURIのクリエイティブドメイン所属デザイナーの吉田直記と申します。普段は、アートディレクター/デザイナーとして、プロジェクトに必要なビジュアルの開発などを行ったりしています。ビジュアル開発、特にCIやブランドづくりでは、視覚の統一をVI(ビジュアル・アイデンティティ)というのですが、その取り組みの中でもビジュアルコンセプトを考えることが、視覚の統一のための手がかりになります。
(ビジュアルコンセプトを作る際、ブランドやサービスの最も大切にしたい価値観や姿勢、在り方などを抽出する必要があるのですが、今回はそのプロセスの説明は省きます。)
ビジュアルコンセプトについて
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ビジュアルコンセプトは、ビジュアルの方向性を明瞭に指し示すもので、ブランドやサービスに紐づくあらゆるビジュアル開発の手がかりとなるものです。
よいビジュアルコンセプトがあると、デザイナーは余計な回り道をせずに大手を振ってビジュアルづくりに専念することができるようになります。
一方で、いくらよいビジュアルコンセプトがあったとしても、視覚的な統一を厳格に追求しすぎると、ビジュアル開発がオペレーション化し、関わるデザイナーの創造性や属人性が発揮されない可能性があります。
ビジュアルコンセプトはデザイナーの創造性を阻害する?
厳密にレギュレーションを設定することで正しく機能するVIやビジュアルコンセプトはありますし、結局のところは目的に依存する、という話なのだと思います。
とはいえ、私自身が、ただ再現するだけの作業はしたくない!と思ってしまうので、私がつくるデザインが誰かの創造性や属人性を阻害してしまうのではないかという「とらわれ」に近い感情を常に持っているのだと思います。
CULTIBASEでの視覚の統一の厳格さについて
今現在、特にCULTIBASEのサムネイルはMIMIGURI内製で作成していますが、厳密なVIやレギュレーションは設定されていなく、各々の裁量にまかせてかなり自由にサムネイルを作成しています。今は月に一度の定例で振り返りを行い、「よさ」を感じるサムネイルを運用メンバーで分かち合う取り組みをしています。
視覚の統一を厳密に設定しない理由としては、運用コストの面が強い部分はありますが、上記で触れたデザイナーの創造性や属人性を抑える取り組みを最小限にしたいという部分もあるのかなと思います。
CULTIBASEについて
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CULTIBASEは、「組織ファシリテーションの知を耕す学びの場」です。サービス名も「cultivate(耕す・土壌を育てる)+base(基地・根源・起点)」を組み合わせた造語になっています。
源泉となるイメージとして、「敷居の高くない、オープンでフラット」「主体的に学ぶ人」「学びたい人」「日常」「公共の場」「図書」「知性」「研究・実践」などが当初は挙げられていました。
CULTIBASEのビジュアルコンセプト
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CULTIBASEのビジュアルコンセプトは、「地層」です。
世界には、様々な土壌があり、そこで多様な人がそれぞれの営みの中で、学びや葛藤を繰り返している。そこでの営みが積み重なることで、豊かな土壌になりえる。CULTIBASEにはいろんな場所から人が集まり、知識を蓄えて、それぞれの場所に戻って土壌を耕していく。そんなイメージをひとつのビジュアルにまとめようとしたときに「地層」というワードが浮かびました。
また、地層メタファであることで、石や土、草木、壁面に描かれる壁画や化石など、ビジュアルとしての変化やパターンのバリエーションが展開しやすいものになったかなと思っています。
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開発したものを眺めてみる
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キービジュアルは、ビジュアルコンセプトの「地層」そのものを抽象的にグラフィックに起こしています。トンマナとしては、アースカラーをベースにはしていますが、「多様さ」を印象づけるために色は多めに使用しています。
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「地層」を手がかりにしながら、その土壌で学習や探索を行う人々の営みをビジュアルに起こしています。
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個人的に一番気に入っている404の画像です。404が掘り起こされたイメージです。左右の人も「指示をする人」「考える人」「実行する人」「計画する人」といった学習や探索の営みをイメージした振る舞いを描写しています。
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動画の冒頭にある動画も全て内製で作っています。冒頭のカットは石に見えますが、俯瞰した多様な場のイメージでもあり、それがうねるように混じっていく、地層として折り重なって豊かな土壌になっていくイメージで動画を作っています。
ロンチ初期のサムネイルを眺めてみる
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初期のサムネイルは、元々設定していたカラーパレットがアンバーな色合いで、それに準拠して作成していた流れもあり、かなり落ち着いた配色のものが多い印象です。(もちろん逸脱したサムネイルもたくさんあります)
地層や壁画、動植物といった手がかりでサムネイルを作成していることがわかります。
最近のサムネイル
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最近のサムネイルは、デザイナーの再解釈が進み、色合いも豊かになりつつあります。モチーフも具象的なものもあれば、抽象的な表現もあり、一人のデザイナーでは達成できない多様さがあるなと思います。これはサムネイル作成するにあたり、各デザイナーの解釈に委ねた運用をしていた結果でもあり、運用コストが低く、かつ面白いサムネイルがたくさん作成されているポジティブな側面もあります。一方で、どこまでデザイナーの解釈に委ねるか、というポイントは、今後調整することでよりCULTIBASEらしさを担保しつつ、視覚の統一を図ることができると思っています。
再解釈されていくビジュアルコンセプトとその先
今回改めてビジュアルコンセプトの話をしようとしたのは、CULTIBASEのサムネイル、特に視覚の統一や品質の管理運用についてをメンバーで対話している真っ最中ということもありました。正直、ビジュアルコンセプトを手がかりにサムネイルを作成する機会は少なくなっている部分もあります。これをポジティブと捉えるのか、ネガティブと捉えるのかは、運用の方針、ビジュアル・アイデンティティ次第というところではありますが、メンバーと対話しながら決めていける環境があるのは、実は結構幸せなのかもしれません。
改めて解釈の幅について考える
このCULTIBASEのビジュアルコンセプトの開発から、実際にメディアが運用され、サムネイルが大量に作成された結果、CULTIBASEの「らしさ」は確実に開発初期から変容していると思っています。それがサービスの改善、内部的な変化もありますし、サムネイル作成の積み重ねとユーザーの認知の積み重ねによる「らしさ」の形成の結果でもあると思います。
解釈の幅を広げ、結果生成されたアウトプットについては身を委ねる運用をとることに「よさ」を見出すのか、それともレギュレーションや「どんな認知を生み出したいのか」をサムネイルを担当するデザイナーで擦り合わせた上での共通理解を作り上げた上で、「らしさ」を積み上げていくのか。このあたりはもう少し先に結果が出てきそうな気がしています。
終わりに
なんだかんだでつらつらと書き連ねる形で文章を書いてしまいましたが、楽しんでいただけましたでしょうか。
次は、MIMIGURI Advent Calendar 2022の15日目の記事、ZOOM会議でプロテインのシェイカーで水分補給している湯川さんになります!
(いつも案件でお世話になっております🙏)
お楽しみに。