Vol_21:短所は味わいになる
「お待たせいたしました。オムライスです。」
『え、私が頼んだのはハンバーグですけど?』
「すみません、間違えてしまいました…」
宮沢賢治の小説にある「注文の多い料理店」ではなく、
『注文をまちがえる料理店』が、愛知県岡崎市にある。
店員は認知症の方がほとんど。
注文を間違えたり、
料理を運ぶお客様を間違えたり、
それでも、常連のお客様がさりげなく手助けしたりして、店は繁盛している。
レストランとして致命的と思われる「不完全さ」が素敵なコンセプトによって長所になっている。
塞ぎ込んでいたのが、働くことで明るい表情に変わる。
『注文をまちがえる料理店』には生き生きと働く認知症患者の姿があり、患者も家族も幸せな、介護の新しいカタチを示してる。
ホームページを見てみると、
「注文をまちがえるなんて、変だな」
きっとあなたはそう思うでしょう。
私たちのホールで働く従業員は、
みんな認知症の方々です。
ときどき注文を間違えるかもしれないことを、
どうかご承知ください。
と書かれていた。
ビジネスとは何かを考えさせられる一文だ。
ビジネスの正解とは何か?
とにかくビジネスの世界では
「効率よくなければならない」
「クレームは0にしなければならない」
「サービスは完璧でなければいけない」
というマインドに縛られがちになる。
もちろん、そういう側面も重要ではあるが、
ちょっとしたアイデアで
「効率」や「完璧さ」よりもっと大切なもの、
人が心から幸せを感じられる
「優しさ」や「寛容さ」をビジネスのなかで実現することもできると学んだ気がした。
ホームページの一文はこう続く、
「こっちも美味しそうだし、ま、いっか」
そんなあなたの一言が聞けたら。
そして、そのおおらかな気分が、
日本中に広がることを心から願っています。
自分も誰かの役に立ちたいというキモチこそが、
このレストランの長所となっている。
ビジネスは長所を伸ばせば短所は「味わい」になるんだなと。
コミュニケーションとは?
「桃太郎、話すよ。
昔々、あるところにね、
えっと、なんだっけ…
おじいさんとおばあさんがね、
川で洗濯をしていると、
どんぶらこ、どんぶらこと、
えーと、何が流れてくるんだっけ…」
たどたどしく話すのは、
Talking Bones ロボット。
取り囲む子どもたちは、
ロボットが間違ったりボケたりするのを聞き、
大騒ぎしながら話しかけるそう。
想像できる光景です。笑
開発した岡田氏のコンセプトは、
人間が助けないと完結しない「弱いロボット」であった。
時に言いよどみ、
部分的に話を忘れてしまう。
話すしぐさも愛おしく、
自然に人だかりができてくる。
すきのない言葉で、
ほころびのない論理を戦わせるのも良いです。
ただ、僕たちが会話に求めているものは、それではない。
人が話しあい、
協力しあうためのコツを
この弱いロボットは教えてくれる。
話せばわかる?
おかれた環境や、
所属する集団が異なればその中で、
異なる正義が芽生え、対立し、悲劇が起こる。
論争が僕たちの日常になって久しい。
与党と野党の水掛け論、
テレビ討論会の過激な対立、
SNSでの罵倒と炎上。。。
永遠に交わらない言葉の応酬を目にして、言いようのない虚しさを感じる人も多いのではないでしょうか。
ほんとうに、僕たちは「話せば分かる」のでしょうか。
それとも、わかりあうために、なにかコツでもあるのか。
僕たちは、どうすればわかりあえるだろうか。
『注文をまちがえるレストラン』
『弱いロボット』
この2つにビジネスだけでなく、
コミュニケーションの本質も教わった気がした。