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「平均」の取り扱い方と前提条件の把握の重要性について

 今回が11日目の登場になります、中小企業診断士の山森直樹です。今回は今までと趣向が違いますが、「平均」の取り扱い方と前提条件の把握の重要性についてについてお話したいと思います。

何で平均の話に辿りついたのか?

 今回、「平均」という内容で書こうと思ったのは、いくつか理由があります。1つ目は、中小企業診断士に限らず、会社でも身の回りでも「平均」という言葉を使って色々説明されていますが、間違いや誤解を受ける内容を目の当たりにしたことです。平均って色々あるということをお伝えしたいということです。2つ目は、世の中で騒ぎになっている年金の2,000万円問題でマスコミや国会で大騒ぎをしていることです。どういう条件とどういう計算式で2,000万円を弾き出したかを把握しないで騒いでいることに嫌気がさしたからです。

1 算術平均(相加平均)とは

 算術平均というのは皆さんが普段使っている「平均」です。テストの点数でも構いませんが、全員の点数を合計して人数で割るというものです。皆さんも平均点より高い低いとかで一喜一憂したことがあると思います。もう少し賢くなると正規分布や標準偏差を考えて、自身の位置づけを把握したりもします。他にもいくつか平均があるのでいくつかご紹介します。

幾何平均(相乗平均)とは

 まずは、幾何平均です。公式は省略しますが、これは比率や割合で変化するものに対してその平均を求めるときに使います。例えば、過去3年間で家賃が20%、10%、15%上昇したときに、1年で平均何%上昇したかを算出する際に用いられます。この計算は一般的な電卓ではできませんので関数電卓もしくはExcel等で行いますが、14.9%くらいになります。

 算術平均で考えると15%((20+10+15) /3 =15%)なのであまり違いませんが、次の例だとちょっと怪しくなってきます。10,000 円の株価が 40% 低下し、翌年には 50% 上昇した。これをうっかり算術平均で計算してしまいますと (-40 + 50) / 2 = 5% 上昇したことになってしまいますが、実際には 10,000 → 6,000 → 9,000 円と変動するので 10 % 低下します。

調和平均とは

 次に、調和平均です。公式は省略しますが、これは時速の平均などを求めるときに使います。例えば、240kmの道のり(往復480㎞)を、行き時速60km、帰り時速80kmでドライブをした時の平均時速を算出する際に用いられます。この例を算術平均で計算してしまいますと時速が (60+80) / 2 = 70km となってしまいますがこれは正しいでしょうか。これだと往復7時間、490㎞ですので少し違いますよね。

 だんだん横道にそれていますが、この3つには、「調和平均≦幾何平均≦算術平均」や「算術平均×幾何平均=調和平均²」という関係もあります(証明などは省略)。

4 トリム平均とは

 最後に、トリム平均です。刈込み平均ともいいます。これは、データを小さい順に並べたとき、小さい側と大きい側からそれぞれ指定した個数の値を除き、残ったデータのみから求める平均のことです。ただし、外れ値の程度がどれくらいだから取り除くのかといった根拠に論理的な説明ができない、あるいは外れ値自体に意味があるといったケースでは実態にあわない、といった欠点もあります。スポーツだとスキーのジャンプとか採点競技で利用されたり、中小企業診断士だと外れ値としておかしいデータを省いたりしていると思います。

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  前提条件の把握の重要性について

    年金制度への不安を出してしまった2,000万円騒動。確かに、以下にリンクしている報告書では、夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職世帯が年金に頼って暮らす場合、毎月約5万円の赤字が出るとの試算を掲載している。その後30年間生きると仮定すると、約2000万円が不足するという計算である。

 そもそも、このデータ自体は2017年の総務省の「家計調査」に掲載されたもので、とりわけ新しいデータではないとかはどうでもよく、これはあくまで前提となる条件があるわけで、すべての方を対象にしているわけでもない。そのあたりを理解して議論して頂けると良いと思います。

 今回も長くなりましたのでここで終わりにします。ここまで、お読み頂きありがとうございました。
#中小企業診断士 #企業内診断士 #平均 #年金問題
 


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