情報を編集&統合させる時代
2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんは、日経新聞の取材にこうおっしゃっています。
『今のイノベーションの定義は、皆あまりにも狭く考えすぎていて、0→1の発明だと考えている。でも、もともとのイノベーションの定義とは、新結合・新しい捉え方&解釈である。
例えば、色々な分野の人々が集まって、新しい結合をする。新しい解釈をする。失敗と思われることも、別の分野ではすごい発見になるかもしれない。そうやって、もう少し柔軟に、広く解釈すれば、イノベーションはもっと容易くできる。
「イノベーション」と聞いただけで、私には関係ない。と思われるかもしれないけど、もっと気楽に考えよう。イノベーションを実際にやっている人も、「単にくっつけただけ」だと自分自身を低く評価しているのではないか。「イノベーションは、意外に簡単にできるよ」と。』
新しいサービス(イノベーション)を考える時、
「新しい概念で、どこもやっていないようなサービスを!」と考えた時点で、顧客にとって価値のあるサービスにはならないのだろう。
・あれとあれ同じ課題への対応だよね。とか、
・これとこれは同じ仕組みなのではないか?とか、
似ている情報を合わせて、それらをどう応用し&組み合わせるか?が問われている。
まさに、「情報を編集&統合させる」ことが、「新しいサービス提供の本質」ではないか?決して、新しい概念や、すごい発明でなくても、「顧客にとっては価値のあるサービス」になる。
例えば、最近の渋谷駅周辺の再開発の話。
※防災とか、国際都市といった視点は一旦横に置いといて。
渋谷スクランブルスクエアの所有者は、 鉄道会社(東急電鉄、JR東日本、東京地下鉄)である。
なぜ、鉄道会社が高層ビルを?とも思いますが、あらゆる鉄道会社が考えるサービス提供の目的は「顧客にどんな移動体験を提供できるか?」である。鉄道会社は顧客に移動してもらわないとお金にならない。なので、渋谷スクランブルスクエアで不動産収益を上げたいだけではなく、渋谷スクランブルスクエアに行ってもらうことに意味があって。
鉄道会社のこういった考え方は、もちろん昔からあります。阪急電鉄も始発駅の百貨店&終着駅の観光地&沿線での宅地開発という、顧客への移動体験の提供というコンセプトの下、オリジナリティの高いブランドを築いています。このサービス提供は、情報の編集&統合によるイノベーションと言える。
最近、それが表現されている言葉として、MaaS(Mobility as a Service)というものがあります。Mobility自体が価値を持つというよりは、Mobilityを含めたサービスが価値を持つという表現です。必ずしも、ITサービスを組み合わせる必要はないと、私は思っています。。
情報を編集&統合させる時代には、編集&統合するスキルが求められます。日々の情報収集からまずは意識し、情報を一方的にみるのではなく、他の情報を結合させるとどうなるか?と応用しながら見る必要がありそうです。