勝負の赤い服
結論から言うと、彼女と別れた。
大好きだった彼女と別れた。別れは予測していた。付き合って3ヶ月くらいした時からいずれフラれるとしたら自分だろうと。そう思って生活していた。僕は彼女が大好きだった。いままでの恋愛が嘘だったかのように彼女を好きで居続けた。
しかし残酷なことにフラれた原因にもなった。
彼女から言われたのは、好きの差があると感じてしまって私も好きにならなきゃと好きになろうと努力してしんどくなったとのことだった。
「もっと好きになりたかった」彼女が電話で僕に言った言葉はボディーブローなみにじわじわと僕の心をえぐった。
そんなことを言われてもまだ彼女を好きだった僕は 会って話したい と伝えた。
これは会わないと納得しないとかではなく、ただ好きな人にもう1回会いたい そんな気持ちだった。
その連絡が来て2週間後に元々会う予定だった日に会うことになった。それまで忙しくてもLINEをしなかった日はなかった彼女と僕の関係ではじめて連絡が途絶えた時に別れ話をされたことを実感した僕は枕を濡らした。
別れたくない。でもこのまま付き合い続けても上手くいかないことは目に見えていた。だから僕も覚悟を決めて会いに行った。
集合はどこにする? 南海難波のいつもの場所で
彼女とのいつもの場所はその日で最後になった。
会うと相変わらず可愛い彼女、珍しく赤い服を来ていた。珍しいね赤い服。と言うと彼女なりにケジメをつけるという意味で赤で来たらしい。
いつも通りの会話のようでどこかもどかしい。そんな空気のまま2人はどこのお店に入ることもなくブラブラと歩いた。歩いている時に2人の思い出のホテルの道にたまたま通った。思わず笑ってしまった。彼女いわく全くのたまたまらしいが僕には全て必然に思えた。
歩くのを疲れたというので近くの大阪のビルが見渡せるところで座って色んなことを話した。後悔や楽しかったことも全て。
彼女は和歌山に住んでいるので、高速バスの時間が決まっていてそれまで1時間半といったところだった。彼女は保健室の先生なのにマスクが嫌いでいつもは外で外せる状況になるとすぐマスクを外す人だった。でもその日だけは合流してから最後まで1度もマスクを外すことがなかった。
色んなことを考える彼女だからこその線引きをそういう所でしているのだろう。最初はまだまだあった時間もあっというまに過ぎていった。別れたら二度と会わないのが彼女のスタイル。段々と別れの時間に近づいていくのが苦しくなってきて、バスの出発の20分前に我慢していた涙がこぼれた。
涙ながら大好きだった。そう伝えた
僕の最近のお気に入りの写真アルバムは9割彼女で埋め尽くされていた。別れて1週間ほど経った今日やっとお気に入りからは外せた。
でも僕はまだ写真を消すことはできない。
バス出発の時間になり、いつもならバス停まで行く僕に今日は来なくていいよ。そう彼女は僕に行った。僕もそうすべきだと思いエスカレーターを降りたところで見送った。
振り返らんから! じゃあね、バイバイ と伝えた僕はいつも通り彼女のさる姿を最後まで見つめていた。振り返ってくれないかと淡い期待をよせながらも早足で颯爽と歩く彼女をみて いつも通りだな と悲しくもあるがなぜかほっとした。
付き合った期間は5ヶ月と長くはなかったし、距離も遠く会う回数もそんなに多くない。連絡もそんなにとっていないが、濃い5ヶ月だった。それは彼女のことを考え続け、好きで居続けたからそう感じるのだろう。
今でもふと彼女に連絡しそうになる気持ちを抑えながら僕は前に進む。
写真はやっぱりまだ消さないことにする。