見出し画像

企業価値評価(中小企業M&Aで用いられる年買法について)

こんにちは。公認会計士としてM&A業界に約10年携わってきました。今回は、企業価値評価の中で、中小企業M&Aにおいて定着した評価手法である年買法について、考え方や計算方法などを簡単にお伝えします。
年買法はわかりやすさ・公平性を重視した方法である一方、企業価値を理論的に正しく表すものとはいえないため、あくまで参考程度にとどめておくとよいでしょう。

1. 中小企業のM&Aで用いられる手法

中小企業のM&Aにおいては、年買法という評価手法が用いられることが一般的です。年買法は、会社の純資産額に営業権(のれん)を加算して価値を計算する方法です。
【計算式:修正後の純資産額+営業権(修正後の利益×X年)】

※営業権の計算で利益の何年分を乗せるかどうかについては、会社の収益性や将来性、売手と買手との交渉により決まります。

2. 年買法のメリット・デメリット

(メリット)
・とにかく計算が簡単で公平性が高い
・中小企業M&Aの実務に定着している
・他の評価手法と比べ、低い評価額となりやすい(買手目線)

(デメリット)
・業種の違いや会社の成長性の高さが評価に十分に反映されない
・他の評価手法と比べ、低い評価額となりやすい(売手目線)

3. 注意すべき点

M&A仲介会社に自社の企業価値評価を依頼した場合、年買法に基づいた評価が行われることが一般的です。理由としては、他の評価手法は前提条件や計算過程が複雑であり、仲介会社が売手と買手の双方に対して理解できるように説明することが難しいためです。
ここで、注意しなければならない点は、年買法は本来の会社の価値よりも低く計算される可能性が高いということです。他の評価手法については別の記事で触れたいと思いますが、仲介会社から提示される評価結果を鵜呑みにせず、たとえ簡易的な計算であっても、一度ご自身または信頼できる専門家に相談し、他の評価手法でも計算されることをお勧めします。特に、成長産業の業種や収益性が高い会社であれば、評価結果に数倍の差がつくこともあり得ます。

(関連記事)
企業価値評価(類似会社比較法について)
企業価値評価(DCF法による評価の概算額を知る方法)


いいなと思ったら応援しよう!