温かい街
○はじめに
旅行はいつも非日常だ。
普段訪れない土地に降り立つと気持ちが高揚する。
都内の喧騒に囲まれながら過ごし
忙しなく動いていると時間がゆったりとした所へ行き日常から離れたくなる。
そんな今回の旅行は岡山県と香川県。
香川県は直島、瀬戸内芸術祭のタイミングで訪れた。岡山の宇野からフェリーが出ていた為拠点は岡山。
アートな島と温厚な人々が住む街の旅記のはじまり。
・はじめに
・朝6時の駅弁
・アートアイランド
・モノづくり、育てる楽しさ
・モーニンを奏でる街
・人の温かさに触れる
○朝6時の駅弁
朝5時に家を出発し
東京駅の駅弁売り場は5時半にならないのを知らず。
5時半の東京駅は様々な用途で
普段朝ごはんは軽く済ませるし、なんなら食べないで出てしまうこともあるし
食べた方が良いんだろうな〜とも思ってない…。
普段はそんな考えを持っているのに、
駅弁となると食欲全開になる。
これもまた非日常。
名古屋、京都、大阪を横目に
焼き鯖寿司とたまごサンドを食べる。
友人と収録したラジオの編集しようとしたら
見事に友人の声だけ録音されておらずに一人話…
お蔵入りから始まった旅の始まり。
○アートアイランド
瀬戸内芸術祭という3年に一度行われる企画があり、
瀬戸内に点在する島々で作品が展示されている。
本当は夏の時に行くはずが感染症により断念となったため、リベンジで秋に滑り込み。
宇野港から出るフェリーに乗り込み、目指すは直島。
到着するとすぐに草間彌生の有名なカボチャがお出迎え。
島の各所に作品が展示されており
自転車で澄んだ空気を味わいながら回遊するだけでも気分転換になる。
古民家を利用したり、自然の中にある神社にもアート要素を持たせたり、
島中丸々アートになっているので、進んでは止まりを繰り返す。
一つ忘れていた。
進んで止まるのはアートが沢山あるだけでなく
美味しそうなご飯に目移りして、食べて飲んでを繰り返していたから止まっていた。
結局のところ花より団子。
○モノづくり、育てる楽しさ
1泊2日の1日目は美と食を満喫。
2日目はモノを探しに繰り出す。
岡山の児島はジーンズの街として栄えており
ジーンズストリートという商店街があるほど
沢山のデニムのお店が立ち並ぶ。
その中で外観の雰囲気がモダンなお店に入り
感じの良い女性が話しかけてくれて、奥に置いてある古いバブアーを紹介してくれた。
着ている洋服から、我々が洋服好きなのを察してか
年に数点しか入らないというオールドバブアーを試着する。
バブアーは過去に持っていて、ある程度着古して手放してそれ以来だ。
ジーンズの街に来てバブアーという関連性のないアイテムを買うのには
なんだか抵抗があったが、好みのスタイルにマッチしているということで購入を決断。
よく調べるとそのバブアーは自分よりも2歳年上の91年生まれ。
生地の傷みが見られる部分にはツギハギで縫われていたり、ワックスを再度塗り込まれていて
まだまだ現役。
しかし、完全に腑に落ちたわけではない。
何故なら、ここはジーンズの街。
その土地に根付いていないアイテムを買ってしまったことで心の底から喜べてはいなかった。
次のお店に行くまでは……
何軒か先のお店に入って物色していたところ、先に入っていたカップルが接客を受けていた。
どうやら知識量に圧倒されてなのかすぐさま退店をし、我々のターンがやってくる。
一方的に話をしてくる少し苦手なタイプかと思い、退店しようとしていたところデニムの説明を受ける。
とにかく知識がすごい。
デニムを探していた相方は知識豊富な男性スタッフに相談をする。答えが的確かつ明確でどんどん引き込まれていく。
試着する前からサイズを当て、経年の変化もさりげなく伝えてくれるので、安心して購入に繋がる。
驚いたのはこのあとだ。
バブアーが入った袋を見て、
「何買われたんですか?」と聞いてくれて、
「バブアー買いました!ジーンズの街なのに関係ないの買っちゃいました」と伝えると、
穏やかに話していた目の色が変わる。
「この児島という街はモノを大切にするという考えから成り立っています。
ジーンズが有名ですが、その根底にはモノを大事に長く愛着持って使ってもらいたいという想い
経年による傷みは味と捉えて、そのバブアーも児島で直しているので、関係ないことないですよ」と言ってくれた。
面食らった。
ジーンズという普遍的なアイテムを販売しているからこそ
そのアイテムに対する愛着、モノを大切にする考えが明確になっていて
それを我々へ嘘なく伝えてくれる姿勢には脱帽した。
店主のパワーワードを引きずりながらお店を後にし
他のお店へ向かうものの、喰らってしまったワードのせいで購買意欲が湧かずに家族へのお土産を探し始める。
○モーニンが鳴る街
予想以上に児島で過ごしてしまい、
猛ダッシュで次の目的地の倉敷へ。
倉敷の美観地区をゆっくり観光したかったが
あたりは真っ暗でお店も疎ら。
早歩きで閉店していくお店を横目に、路地に入ると
長い階段を発見。
上り切ると美観地区の夜景が一望できる
高台に辿り着き美観地区の灯を眺める。
耳を澄ますと聴き馴染みのある音楽が流れてきて
よく聴くと大好きなモーニン。
ジャズにハマっていた時に一番聴いていて今でもよく聴く。
美観地区を観光できなかったこと悔やみを浄化してくれるような
優しいジャズの音色が我々を包み込み、倉敷の街を音で染めた。
○人の温かさに触れる
今回の旅行では自然を感じ、歴史を感じ
人が作り出す芸術や製品に感動することが多かった。
しかし、それ以上に感動したのは現地の人の温かさだ。
入るお店では皆さん感じがよく、柔らかい笑顔で出迎えてくれる。
時間や心にもゆとりがあって、忙しなく動いていない。
日頃忙しなく動いてしまっていると
つい、この余白がないことに対して何も感じず生きてしまう。
この余白こそが相手への気遣いや、自分を見つめ直す機会になることを改めて実感し、
東京へ戻ってもこの余白を忘れないように過ごしていきたい。
旅に出ると、普段経験できないことや
見たことないモノ、触れたことないモノを
知ることができて、自分の中で蓄積されていく。
このインプットできる感覚こそが旅の楽しみでもある。
さて、次はどの街を訪れようか。
end
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