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【詩】 才能の花


ある日 見知らぬおじさんが
見知らぬ花の種をくれた


たったひとつの花を咲かせる
ぼくのために咲く花だ


レンガ組の花壇を作って
質のいい土を敷いて
咲くまで何年もかかるから
幼いうちから育てていた


毎日 水をやった
毎日 草を取った
自分のための花だけに 
きちんと水がいくように


種はついに芽を出した
朝陽に輝く芽を出した
だけど嵐がやってきた
「あの花を抜こう」と吹いてくる
強い風から守るため
ぼくは傘で花を守った


種は地面に根を張って
ぐんぐん ぐんぐん 茎をのばし
茎の端から葉が伸びた

ふにゃふにゃ 新緑 柔らかい
けれどいつか 硬くてキレイな葉になりそう

今度は吹雪がやってきた
「あの花を凍らそう」と吹いてくる
冷たい雪はナイフみたい
ぼくの花に吹き続けた
ぼくは腕を大きく広げ
雪と風から花を守った


花はついにつぼみを見せた
けれど自然は猛威をふるう
雨 風 雪 
ときには優しい太陽まで
ぼくの花に牙をむいた

毎日 毎日
自然は花を咲かせまいとする

だから ぼくは花を守った

咲いてほしかった
咲かせてみたかった

ぼくだけの宝物
誰にも傷つけて欲しくない

ぼくの身体は傷つくけれど
誰にも傷つけて欲しくない



毎日毎日 水をやる
今日もぼくは 水をやる
じょうろをもって 花壇に行く

いつもと景色が違っていた

穏やかな日差しに照らされて
つぼみのしずくが光ってる

ぼくが花壇に近づくと
ぽたりとしずくが落ちていく
つぼみが ぼくにお辞儀する


ありがとう ありがとう


つぼみはぷっくり膨らんで
真っ赤でキレイな花が咲く


咲いた 咲いた
ぼくだけの花だ


ぼくは花にひざまずく


花の中に種が見えた
ひまわりにも負けないくらい
たくさん たくさん 種がある


そうだ そうだと思いつく


この種を 他の人にも分けてみよう
独り占めは もったいない

みんなにわけて
みんなの花にしてみよう


そして、いつか


この花壇を みんなの花で広げよう


花の種はひとつじゃない


みんなで分けて


みんなで咲かせて


みんなの花壇を楽しもう



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見出し画像には、『zaki gemini6rabbit』様の写真をお借りしました!

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