アイダホ生まれのじゃがバタコーンさん|日々のなぐさめ方
友人をあまり作らないわたしにも、気の合うやつはそれなりにいた。
授業も食堂でも、基本構内は一人で行動していたわたしにもゼミで出会った彼女とは、何故かウマが合い、一緒にいることが多かった。
私は近県からの上京組だから、一人暮らしもどこか気が楽だったけど、この、アイダホ生まれのジャガバタコーンさんにはなかなか大変な学生生活だったようだ。
わたしとじゃがバタコーンさんは例えるなら大人と子供の組み合わせだった。
ゼミの中でわたしが無邪気な視点で軽やかにテーマを掲げ研究を始めるが、簡単に道に詰まり投げ出しそうになる。
するとすかさずじゃがバタコーンさんは思ってもみない角度から仮設を立て、また研究が進むといった仕組みだった。
研究室でもうまくやっていたが、私達の本番はいつだってその後のファミレスだった。
お酒が飲めない私達にとって、ピンクのストライプのマークのあの店は世界中のどんな娯楽よりも愉快なエンターテイメントの世界だったのだ。
「ねえ、だるまさんがころんだって知ってる?」
「なにそれ、アイダホにあるわけ無いじゃん。だるまがナイヨ」
「だるまが無くたって、なんか自由の女神が笑った!!とかなんかあるかなって思ったんだよ」
「自由の女神は見る人によっては笑ってるように見えるのが醍醐味だから、笑った!って確定することはシナイネ」
「何喋っても笑ってるふうに見えるアナウンサーいない?」
「いますね!人が死んだのに微笑んでるみたいな顔の人見たことある。このひとはかわいそうね」
いつまでもどうでもいい会話をドリンクバーのおかわりを挟みながら朝までしている日々だった。
あるときじゃがバタコーンさんが独り言のように言ったことがある。
「私の親がサ、最近ついに芽が出てきちゃったんだよね・・・。まぁ、今の医学なら大したことないことだけど・・・」
「たいへんなの?」
「う~ん・・・、向こうは医療費が高いし・・・、私はバターコーンだからなかなか辛さをわかってあげられなくて。喧嘩になったりするんだ・・・」
そうつぶやくと、二人の間に沈黙が漂ってしまった。
子供のようなわたしにはなんて返事をすればいいのか思いつかなかった。
それを察したじゃがバタコーンさんがフッと息を漏らしわたしを見て笑った。
「ねえ、じゃがいもってジュースにならないの?」
じゃがバタコーンさんの微笑みを合図にわたしは、またどうでもいい話を始めた。
「それっておいしいとおもうの?」
「だって人参はジュースになるよ!」
みんなそれぞれ問題を抱える顔があって、でも別の瞬間には別の穏やかな顔もある。
わたしはまだ子供だから、アイダホ生まれのじゃがバタコーンさんみたいに色んな顔を一緒に並べたりは出来ないけど。
おしまい
※毎日失敗ばかりでくよくよしがちなので、失敗を慰める自己肯定感向上対策に生活の中の本当の失敗を物語で消化する取り組みです。「日々の慰め方」という名前の取り組みにしました。あまりに長文になったので引いてます。おはなしは一部フィクションです。登場する団体や場所は少し本当です。
※大学に行ったことがないので、「大学のゼミ」って言いたかったのと、noteの下書きに『アイダホ生まれのじゃがバタコーンさん』て一文が残っていたためこの様になりました!今回は殆どフィクションです。へんなおはなし!