コロナ”なんかより”健康イデオロギー”の増殖のほうがよほど怖ろしいんです
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第2回❐2023年3月16日記
今回は,コロナウイルスそのものの話から始めてみることにしよう。
遺伝子解析サービスを提供する㈱ジーンクエスト社長兼㈱ユーグレナ執行役員で,自身生命科学者でもある高橋祥子氏によれば
そうだが,コロナウイルスの場合は,「増殖できずに消滅する」というわけにはいかないようだ。
新型コロナウイルスの一番の特徴は無症状率の高さだという。つまり,感染の自覚のない者が通常の社会生活を営むなかで,知らず知らずのうちに多くの人々に感染させている可能性が高く,その意味ではじつに厄介な相手ということになる。
仮にコロナ禍がこの先下火になったとしても,いずれまた新しい感染症は出現するであろうし,新たに出現する感染症がたとえどのような形になるにせよ人間を脅かし続けるのだけは間違いない。
ただ,そうであったとしても,人類は,誕生の時から「withウイルス」の時代を生き続けたわけで,とすれば,生命とウイルスの共進化はこれからもずっと続いていくのだから,「人間が絶滅してしまう」レベルのウイルスの出現は勘弁願うにしても,人間皆いつかは”お迎え”が来てしまうのだと鷹揚に構えつつ,必要以上にジタバタしないほうがよろしいのではないか,というのが筆者の言い分なのである。
コロナも怖いだろうけれども,それ以上に”健康”(安全・安心)という謳い文句に踊らされて,「権力」に統治されている,管理されているという認識が抜け落ちてしまうことのほうが怖いのだ。
山本七平氏が『「空気」の研究』で喝破したように,此の国の民は事あるごとに「空気」に汲々とし,忖度をし,なびき流されていくのが常であるが,コロナ禍に振り舞わされている間に,政府が進める公衆衛生対策をチェックすることもないままただ従順に受け容れ続けた結果,”健康”イデオロギーなるものがすっかり国民個々に浸潤してしまっている現実が,「コロナ」などよりもよほど怖ろしいということを強調したいのである。
”健康”ブームは今に始まったことではないが,近頃はあまりに異様な高揚ぶりである。
テレビや雑誌,ネット上では,多種多様な健康グッズをはじめ,特定保健用食品(略称:トクホ,生理学的機能などに影響を与える成分を含む食品)や機能性表示食品(事業者が自らの責任で食品の安全性・機能性の科学的根拠を示した食品),睡眠改善薬等の宣伝広告が氾濫している。
平均寿命の伸びが殊更話題化されるなかで,「とにかく長生きすること」だけを「生きる」最大の目的としながら,「生きるために生きるべく」ひたすら”健康”を追い求める人間たちは,そのようにして目前に提供される「資本」の”延命薬”に縋るばかりだ。