『MIZZ先生がイラストたっぷりで教える〈便秘〉からの脱出』の著者 MIZZ先生こと”みずかみよしのり”が 渋谷道玄坂百軒店伝説のロック喫茶『ブラックホーク』を語り尽くします
Episode9 ヒッピームーブメントと『ブラックホーク』界隈の想い出
ヒッピームーブメントというのは,1960年代後半にアメリカ西海岸サンフランシスコを中心に拡がりを見せた,ヒッピーと呼ばれた若者たちによる社会変革運動のことを言いますね。
そんなヒッピームーブメントですけど,当時の世界情勢を色濃く反映していて,ある人はベトナム戦争反対を叫び,またある人は公民権運動や女性解放運動への参加を訴えるなど,政治的な主張を伴うケースも多かったのですが,総じて“LOVE! PEACE! FREE!”を謳い文句に,旧来の価値観に対抗するカウンターカルチャー の一翼を担った10代から20代の若者を中心に普及していきます。
当時のサンフランシスコは,音楽,ドラッグ,フリーセックス,芸術表現等々サイケデリックな文化現象の中心地でしたが,1967年夏にアメリカを中心に巻き起こった一大ムーブメント「サマー・オブ・ラブ(Summer of Love)」を契機に,ヒッピー文化はサンフランシスコから,ニューヨーク,ロサンゼルス,シカゴ,フィラデルフィアなどのアメリカ国内の大都市をはじめ,カナダ,ヨーロッパの各都市へと急速に拡がっていくことになります。
ブームは,当然のようにまたたく間に日本へも到来。『ブラックホーク』がジャズ喫茶としてスタートした1966年頃には,新宿のジャズ喫茶に早くも伝わっていたようで,以来,長髪に髭ヅラ,よれよれのベルボトムジーンズにサンダル履き,あるいはエスニック風のゆったりワンピースに花飾りヘアバンドといった一風珍妙ないでたちの若者が街中に出没するようになるのです。
今日のような若者文化最前線といった様相はゼロに近かった渋谷にその波が訪れるのはしばらく経ってからの話になりますが,ヒッピームーブメント前夜の『ブラックホーク』界隈はどうだったかと言うと,とりわけ百軒店の裏手から井の頭線の神泉駅へと抜ける道筋などは,現在世界一とも称される「ラブホ街」へ変貌していく下地が出来つつある光景ばかりが際立っていたようでした。