『MIZZ鍼灸治療院物語』の著者 MIZZ先生こと”みずかみよしのり”が 渋谷道玄坂百軒店伝説のロック喫茶『ブラックホーク』を語り尽くします
◆第2シリーズ
ザ・インタビュー:MIZZマスターの『ブラックホーク』懐古談
(聞き手:編集人ひめちゃん)
第11話 松平さんとの思い出❐その7
《松平ファンの女性客》
「今 ジャクソン・ブラウンの“Late for the Sky”をCISCO(シスコレコード店)で買ってきたんですが,かけてもらえませんか?!」
《松平氏》
「それはさっきかけたばかりです」(本当は世間的人気のLPはあまりかけたくない?!)
「レナード・コーエン(1936~2016)のベスト盤がSONYから届いたのでそれを聴きませんか? “スザンヌ”!名曲ですよ」
というとても珍しい場面に遭遇したことがあります。
数日後,彼女はレナード・コーエンをリクエストすることになります
《MIZZマスター》イラストで松平氏が手に持っているアルバムは,ジャクソン・ブラウンの“Late for the Sky”です。
CSNYやイーグルスと並びウェストコーストを代表するシンガーソングライターで『ブラックホーク』でも70年代最も人気のあった(リクエストが多かった)一人です。
“Late for the Sky”は幻想的なジャケ写真でも話題となったが,CD写真ではその雰囲気を味わえないのが残念。「なんたって30cmLPレコードのあの写真とイラストがイイんだよ」と収集家は口を揃えて言いますね。
●ジャクソン・ブラウン(1948~ )
すでに大人気を博してしまって,リポートの要はないくらいです。著名音楽雑誌,レコードショップの店頭を飾り,深夜放送でも聴かせてくれるほど,『ブラックホーク』においても,リリースされた彼のアルバム全てが“またまた毎度お馴染みのリクエスト”といった状況でした。
71年初めに設立されたアサイラム・レコードは,当代人気のカリフォルニアサウンドを独り占めして,USAヒットチャートはアサイラムからとの勢い。それも当然のこと,イーグルスをはじめ,ジョン・D・サウザー,トム・ウェイツ,ネッド・ドヒニー,ダン・フォーゲルバーグといった当代人気ミュージシャンを全て抱え込んでいましたから。
(「ブラックホークニュースより」)
《MIZZマスター》松平氏は言いました。「『1stアルバム』,2枚目『フォーエブリマン』,そしてこの3枚目『レイト・フォー・ザ・スカイ』,以上はすべてお見事! でもこのままだと世間は,彼はただのヒットソングシンガーとしてしか見なくなるのでは」
(「ブラックホークソングノート」より抜粋)
●レナード・コーエン(1934~2016)
彼の最初のレコードアルバムは33歳のときの『Songs of Leonard Cohen』(1967年発表)でした。レナード・コーエンの歌の世界,それは当時多くのフォークファン,そしてフォークシンガー仲間にとって驚くほどユニークで魅力的なものでした。
職業的なシンガーでもギタリストでもなかった彼の歌には,詩人で小説家でもあった彼の言葉が,そして声が,自己流のギターの音色を伴って閉じこもっていたと言えましょう。
1960年代後半から70年代初めにかけてプロテストする外向きの歌が全盛だったその頃,レナード・コーエンの出現はフォーク・シーンに美意識の復権と言う 一石を投じたといえます。達人とは言えない,低く,ボソボソとした歌唱は,ヒットチャートを賑わす曲のように単純ではなく,寓話的,宗教的であり,そしてエロティックでもあります。
(松平氏による「ブラックホークソングノート」より抜粋)