ベストアルバム2021
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《ベストアルバム2021≫
2021年も色々な音楽に出会えて楽しく過ごさせてもらった。
古いロック、ジャズ、ソウルは中古のレコードやCDで、新譜はサブスクで、というスタンスは変わらずだが、2022年は何となく新譜のレコードにも手を出してしまいそうな予感。
それではリストの解説を。アルバムは2021年に最も良く聴いた新譜から9枚選出。
2022年もまた素晴らしい音楽に出会えますように。
★Arlo Parks『Collapsed In Sunbeams』
YouTubeで何気なく流れてきた『Black Dog』のイントロ10秒、そして歌が始まってわずか3秒で完全に心を掴まれてしまった。詩人でもあるという出目から、文学的な側面で語られることも多い彼女だが、やはり一番の魅力はその圧倒的に可憐で美しい『歌声』にあると思う。声だけでここまで持っていかれたのはノラ・ジョーンズやコリーヌ・ベイリー・レイ以来かもしれない。アルバムの発売は2021年の1月だが、春先くらいまで、ほぼ毎日のように聴いていたような気がする。
★Kings Of Convenience『Peace Or Love』
良く晴れた休みの日の午後、街に向かって走る電車の中で聴くのにこれほどピッタリな音楽があるだろうか。街に着けばきっと探していた古本やレコードが見つかりそうな、そんな幸せな予感しかしない素敵な散歩向けアルバム。聴いてると何故かとても善い人になったような気がしてくるのも不思議。ミニマリストっぽいというかお洒落というかなんというか。
★Jungle『Loving in Stereo』
媒体には『ディスコ番長』だとか何とか書いてあるが、ゴリゴリのブギーディスコ一辺倒というわけではなく、どことなく80年代ニューウェイヴっぽい、適度にスカした歌声とサウンドにこそ圧倒的なセンスの良さを感じる。この絶妙ないかがわしさと色気。『Truth』『Talk About It』『All Of The Time』の3曲だけでも何度聴いたかわからない。
★Silk Sonic『An Evening With Silk Sonic』
ヴィンテージソウルの美味しいところを再現した、いわゆる『懐古趣味』物だが、ここまで見事に仕上げられたらもはや美味しくいただくしかこちらに術はない。70'sスウイートソウルから80’sファンクまで網羅した楽曲のクオリティの高さはもちろん、ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークの2人が放つ歌声の気持ち良さときたら。唯一の不満は、曲が少なすぎること。
★Little Simz『Sometimes I Might Be Introvert』
普段、ヒップホップのアルバムを通して聴くことはほとんどないが、この人は別。ソリッドでタイトな前作『GREY Area』も良かったが、シアトリカルでドラマティック、そしてスケール感が増した今作もまた破格の素晴らしさで、アルバムを通して聴くと、まるで一本の映画を観ているかのよう。圧倒的な存在感を見せつけるTiny Desk Concertの動画も必見。
★Billie Eilish『Happier Than Ever』
最初ざっと聴いた時はなんか地味だなあと思ったのだが、ある時ふと思い立って、部屋でアルバムを通してじっくり聴いてみたら思いのほか良くてビックリした。ある種奇天烈だった前作と違って、今作はメロディーの美しいものも多く、もはやこれは普遍的なポップスとして聴くべきだったのだ。もちろん、随所で切り込んでくる『Oxytocin』や『Therefore I Am』のような最新鋭のエッジーなナンバーもスリリングでカッコいい。いや、やっぱり凄いなこの人。
★The Marías『Cinema』
ベッドルームラウンジポップの決定盤。この妖艶さ、この官能。聴いていると、どこかの高級リゾート地のホテルにお忍びで来ているような錯覚に陥ってしまいそうになる。冷ややかなゴージャスさというかなんというか。もちろんそんな機会などないのであくまで想像上のことであるが。
★Raquel Rodriguez『Sweet Side』
もはやどこで見つけたのか忘れてしまったが、アルバム表題曲の『Sweet Side』と『Undone』を聴いた瞬間、そのあまりの丁度良い具合のアーバンメロウなR&Bぶりが一発で気に入ってしまい、以来ずっと愛聴している。この人のことは今まで全く知らなかったが、アンダーソンパークのバックコーラスや、Lizzoのオープニングアクトなどを務めていた才媛らしい。郷愁を誘うローランドTR808の音色などもフィーチャーされた、ちょっと懐かしい香りのするサウンドも心地よい。
★black midi『Cavalcade』
2021年は英国ポストロック・パンクシーンにもハマって良く聴いていたが、やっぱり決定盤はコレだろう。『絶対にありきたりな感じにはならないぞ』という強固な意志を感じさせるアヴァンギャルドなメロディー展開と曲構成は慣れたら凄まじく気持ちイイ。キングクリムゾンからの影響は巷で良く言われていることだが、確かに『何故か1980年頃のテンションに戻ったロバートフリップが急にやる気を出して若手を集めて作った新作』という体で聴くと妙にハマる。いかにも『前衛』なビデオクリップも楽しい。
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