真実は、いつもひとつ!なの?
超人気マンガでありアニメである「名探偵コナン」。
我が子がアニメを観ている脇で、小学1年にしちゃあみんなしっかりしてるなとか、身体のサイズ感狂ってるなとか、コナンと一緒に旅に出たくないなとか、そんな目でしか見れないくらいなので全然ハマってないんだけど、いつも引っかかる台詞がある。
主人公・江戸川コナンの決め台詞だ。
「真実は、いつもひとつ!」
うーん、引っかかる。
いつも一つなのは「事実」であって、その背景にある「真実」は必ずしも一つとは限らない。
事実として起きたことはもう揺るがない。
ある種の客観性を持ち得る。
一方で、その背景にある真実は主観性が強い。
揺るがないこともあるが、突き付けられる事実や矛盾する他者の真実によって揺るがされることもある。
「真実はいつもひとつ!」という台詞のせいで、正しい真実と間違った真実が生まれてしまうことは避けなければならない。
併せて、真実とされるものがあまりに事実に反するものであれば、それを真実と判断していいかを精査することも重要だ。
ある真実が別の真実と矛盾することはあっても、真実が事実と矛盾することはない。
この話を考える上で読んでおきたいのは、芥川龍之介の「藪の中」である。
藪の中で起こった殺人事件を巡る、目撃者4人と当事者3人の証言。
事実は一つであるはずなのに、語り手によってその真実が異なる。
どれが正しいか、間違っているか、という見方もできるが、一つの事実でも見る目や立場、心境によって語られる真実に差異が生まれることもあるという見方もできるだろう。
そして、私はその後者の見方を支持したい。
真実は、一人につきひとつ!である。
自分が捉えた真実を信じ抜くこと。
他者が捉えた真実を尊重すること。
そのいずれをも大切にしたい。