生クリーム好き垂涎の…
私は生クリーム好きである。
洋菓子に興味のない戦中生まれの両親をもつ一人っ子の私にとって、誕生日とクリスマスに食べるイチゴのショートケーキは絶品のごちそうだった。
地元に店を構える小さな洋菓子店のケーキは特にお気に入りで、その店のショートケーキを食べることで一つ歳を重ねることを実感できたと言っても過言ではないかもしれないけど、ちょっと過言かもしれない。
今では6人家族でホールケーキを切り分けて食べる。
生クリームが苦手な長女(信じられない感覚だ)の時以外の5回と、結婚記念日と母の日とクリスマス、実に年間最低8回は生クリーム系のホールケーキに巡り合う。
ホールケーキを夢見ていた幼少期の欲望が爆発しているのかもしれない。
(ちなみに、長女の誕生日はガトーショコラのホールケーキで祝う。チョコレートは大好物なので、それはそれでいい)
そんな生クリーム好きの私の前に、とんでもない商品が現れた。
(ヘッダーでネタバレしているが見て見ぬふりをしてほしい。大人なら)
なんだ、これは。
夢のような生クリーム商品。
ただでさえ美味しい生クリーム、その生クリームをそれだけで堪能したいという子ども心をコチョコチョにくすぐる三角形。
セブンイレブン、その勇気に敬意を表したい。
甘党党員として手を伸ばさずにいらいでか。
というわけで、職場のお昼にと迎え入れた。
みなさんに心配をかけてはいけないので言っておくと、ちゃんとメインにロースカツサンドを食べた後に食べている。実にバランスの取れたランチである。
さて、実食。
噛むと口の中いっぱいに広がる生クリーム。
食パンの存在感は微塵もなく、添えられるフルーツの酸味もなく、純粋に、まっすぐに、徹底的に生クリームが押し寄せてくる。
ホイップだけで成り立つように甘さを抑えてあるとみた。
甘すぎず、ちゃんと甘い生クリーム。
見た目と印象はすごく重そうだけど、食べてみると全然重い。
いや、重いよ。
生クリーム好きとしてハッキリしておくけど、生クリームだけで作ったサンドイッチは重い。
とはいえ、一切れ食べるとクセになって二切れ目に手が延びるとは言い難い。
美味しいことは美味しいし、残すわけにはいかないから二切れ目も食べるけど、もうすっかり重い。
ヘタしたらメインのロースカツサンドより重い。
ここまできて、メインにロースカツサンドを選んだ自分を責めた。ホイップだけサンドを食べるならもっとフレッシュにベジタブルなサンドイッチにするんだった。
かくして、ホイップだけサンド完食。
ロースカツサンドでの肉と衣とソースと辛子のハーモニーとささやかなキャベツのマリアージュを忘れさせる油膜だけが口いっぱいに広がっている。
食後のコーヒーが美味い。
やはり生クリームは存在感抜群ながら最高の脇役なのだ。
主役であるフルーツとステージであるスポンジケーキを一つに繋ぐための脇役。
主張が強いようでいて、それでも主役を引き立てる。
ホイップだけサンドは主役のいない演劇だった。
発着点がぼやけている感じ。
それでも、セブンイレブンの勇気は揺るがない。
商品開発どうなってんねんと思わないではないが、生クリームのもつ役割と偉大さを、やや逆説的ではあるがハッキリと示してくれたと言えよう。
たまにはこういう尖った商品に手を出すのも悪くない。
言っておくが、誰も聞いてないと思うけど、これで生クリームが嫌いになったなどという“やわ”な生クリーム好きではない。
むしろ美味しいショートケーキが食べたい。
ホイップだけサンドに対する感想はあくまで個人の意見である。みなさんもぜひ食べて感想を寄せていただきたい。
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