旅の入口
ゆっくりと開く扉の向こうに心躍る景色が見える。知らず知らずのうちに近づいて見ていると、いつの間にか自分自身がその景色の中にいる。行ったことのない土地で、会ったことのない人に会う。
そんな読後感を、あなたは知っているだろうか?
明日の発売日を待たずに届いた本がある。
田所敦嗣・著「スローシャッター」
noteに編まれた紀行文をまとめた一冊だ。
初めて田所さんの文章を見た時から、ずっとファンだ。
てっきり本も出しているものだと思っていた。
だから、あの“ひろのぶと株式会社”が田所さんの紀行エッセイを本として出版すると聞いた時、喜びと同時に納得感もあった。
田所さんの文章は、穏やかで無駄な抑揚がなく、ストーリーがスッと脳やら心やらに染み込んでくるがある。
そして秀逸なのは書き出しである。
書き出しだけでワクワクしてしまい、そのまま物語へと引き込まれる。
そして、行ったこともない土地の会ったこともない人と、田所さんの視界を通して出会うのだ。
タイトルの「スローシャッター」もいい。
シャッターを切ることは、目の前の風景を切り取ること。
スローシャッターだと、これと捉えた被写体以外はぶれてしまう。
逆に言えば、記したい被写体を際立たせるために、スローシャッターにするのだ。
田所さんの文章では流された背景を、読者がそれぞれの思いで切り取り直す。
読む人それぞれに捉え方がある作品になっているのに違いない。
カバーには秘密があるらしく、なんとなくその秘密を見つけた気もするが、それはまさにスローシャッターをそれぞれがどう切るかを問うかのような仕掛けだった。
今日受け取ったこの一冊を、早速明日から読もうと思う。
そして読んだらまたここに感想を寄せたい。
さあ、旅に出ようか。
12月23日は、また下北沢へ。
ご出演のお三方、そして田所敦嗣ファンの皆様、どうぞよろしくお願いします。