【レビュー】米米CLUB
曲名に付いているマークの説明
☆:抑えておくべき代表曲
★:抑えておくべきジェームス小野田の代表曲
◯:隠れたいい曲
●:クセがすごい
【概要】
1991年4月25日発売の7thアルバム。
米米メンバーが「ソーリー曲」と呼ぶ、ふざけていたりはっちゃけていたりする曲を集めた意欲作。
ライブテイクも多く、臨場感がある一方、視覚的な情報がない中ではピンとこない演出もかまわず収録するあたり、かなりチャレンジングな一枚となっている。
6thアルバム「K2C」が、セルフアレンジやライブテイクの比較的まともな曲で構成されたのとは対照的であり、「K2C」が米米CLUBの上半身、「米米CLUB」が下半身という評価もある。
しかし、下半身あっての上半身ということでいえば、こちらこそが米米CLUBの神髄であることも疑いないわけで、そんな下半身のたくましさを際立たせるために上半身をきれいにまとめたということならば、それはそれでおおいに納得できる。
このCD、初回盤の予約特典が歌詞カードである。
世の中に数多いるアーティストにおいて、歌詞カードを初回盤予約特典にする、言い換えれば通常盤には歌詞カードを付けないという売り出し方をするアーティストなど、米米CLUBのほかにいるだろうか?
かくして、個人的な話ではあるが、本作は私が人生で初めて予約購入したCDなのである。
Disk1(12㎝CD)
1 愛の歯ブラシセット
ジェームス小野田とカールスモーキー石井との歌声が艶めかしくも美しく絡み合う名曲。
アカペラであるがゆえに、二人の呼吸から見つめ合う情景と愛深き世界観までがストレートに伝わってくる。
豚毛バサバサよ。
2 We are 米米CLUB
前曲から一転、アップテンポのナンバー。このメリハリも米米CLUBの持ち味であり、ライブ感を際立たせる。
惜しくも全編ではないが、9割がた英語の歌詞で語られた本曲を引っ提げれば、その深みのあるlylicとノリノリのrythmで、我らが米米CLUBが世界のKOME KOME CLUBとして国際的に広く受け入れられること請け合いである。
3 あたいのレディーキラー
ジェームス小野田のソウルフルな歌声が響くロックナンバー。
自慢するほどのデカいコカンを歌にするなど、米米CLUBにしか完成させられない世界観であろう。とにかく、天使のフリした太いニシキヘビに身震ってほしい。
カールスモーキー石井のコーラスも美しい。
4 東京Bay Side Club
ロックが続く。
本来であれば米米CLUBエンターテイメントの真骨頂であるカールスモーキー石井劇場が繰り広げられるところであるが、おそらく収録時間の問題で割愛されている。大変残念である。
愛しているなら愛していると言うべきだった。後悔した時には遅い。それでも前を向き、新たな自分を手に入れるために通うのは……
続きはぜひ、ご自身の耳で確かめていただきたい。
5 東京ドンピカ
一転して、ムード歌謡の世界へ。
フランク○井のイメージなのかな。
この変幻自在の世界観も米米CLUBの醍醐味であり、カールスモーキー石井の魅力である。
大都会・東京の夜景には、愛に迷い苦しむ姿がよく似合う。夕べは銀座へ、今夜は日比谷へ。
ああ、愛してムーチョ、恋の炎をあなたへ。
6 二人のアンブレラ
歌謡曲といえばいいのか。ジャンルとしてはなんだろう?
可愛らしいオッちゃん傘とはなんなのか、そんな疑問には構わず進む。
恋に狂う二人にとって、周りの目など関係ない。
隠して繋がって最後までヤッちゃう。
まさに恋の火遊び。
アンガアンガ。
7 オイオイオイ マドロスさん
往年の歌謡曲よろしく、朗々と歌い上げる。
バ○やんのイメージなのかな。
こちらもカールスモーキー石井劇場の定番。ライブで展開されるストーリーの最後の最後しか入っていないのは、収録時間の関係とはいえ残念だ。
波止場でキメるマドロスさんがハマっている。
世界を股にかけたマドロスさんは、世界中で罪深きマドロスさんでもあるのだろう。でもそれは、海に生きる男の悲哀でもあるのかもしれない。
そんな多面的な深いストーリーを感じることができるなら、きっとあなたは変態的に米米のファンである。
ちなみにこの曲、ライブでは歌が終わった後もだいぶしつこい曲だが、そこは割愛されている。残念だ。
8 I LOVE YOU
「ソーリー曲」ばかりで構成されているはずの本作において、唯一まともな曲、だと思ったらきちんと裏切られる。むしろ一番ふざけている(誉め言葉)。
恋とは、愛とは。本当の愛を知るカールスモーキー石井と、そんな彼をスケコマシと笑う民衆との温度差をぎゅっとまとめた一曲。
心に燃える炎を受け取ってほしい。
9 パリジェンヌ ホレジェンヌ
舞台はフランス・パリ。
曲調もシャンソンをポップにした感じと言えなくはない。
目を閉じて聴けばパリの街並みを歩く人々の姿が浮かぶなんてことは期待できない名曲。
君は浜美枝。意味が分かんない(誉め言葉)。
10 スーダラ節〜赤いシュプール
スーダラ節と言えば、植木等の名曲。なぜかは判然としないが、リスペクトを込めて取り入れたらしい。
それに続く「赤いシュプール」は、見事なまでにセックスを歌った曲。
ヤリたい男のヤリたい思いがこれほどまでにまっすぐ歌われている曲があっただろうか。
そもそも「セックスしたい」を歌うなんて曲、他にないんじゃないか。
これを初めて聞いた時、私はまだサクランボだった。この曲でモワンモワンと妄想が広がってしまった自分が、まだ青かったとはいえ今となっては恥ずかしい。
それから考えても、なぜスーダラ節にこの曲なのか。それは本当にリスペクトなのか。わからん。
11 インサートデザート
重厚なサウンドにジェームス小野田とカールスモーキー石井のボーカルがカッコいい一曲。カッコいいサウンドにほとんど意味というか、中身がない歌詞の組み合わせが米米CLUBのカッコよさ……なんだよな。そうだよな。
あまりのカッコよさに、ソニーのMDP(マルチ・ディスク・プレーヤー)のCMソングに起用された。控えめに言ってそんなソニーは狂っていると思う(誉め言葉)。
ホーンセッション・BIG HONES BEEのサウンドはすごく心地よい。
12 ホテルくちびる ☆
カールスモーキー石井劇場がほぼ完全に収められている、CD収録曲としては貴重な一曲。
ひろしとはとこの出会いから結ばれるまでを演じて歌う。カールスモーキー石井のマルチな才能が垣間見えること請け合いだ。
ライブではこの手のネタがこれでもかと繰り出され、会場全体が一体となって一大エンターテイメントショーが完成していく。
思わずはとこちゃんもポッポポッポしちゃうのだ。
13 AWA
BIG HONES BEEのカッコいいサウンドとジェームス小野田のソウルフルなボーカルのマリアージュ。
カッコいいけど意味はわからない。
そのあまりの混乱でアワアワしてしまう。
14 私こしひかり ★
スローなメロディーラインのバラード。それを我らがソウルブラザー・ジェームス小野田が歌い上げる。JOはバラードもいける。そう確信するに十分な一曲。
ライブツアー中に天国に旅立った実父にこの歌を贈ったジェームス小野田の姿は感動なくして語れない。
「ソーリー曲」の集成である本作にとって、この曲は例外的にいい曲。
いい曲なのに、歌詞で遊んでいるんだが、それがいい具合に仕上がっている。デビューなんて全く頭にない、ただのおふざけの会話としての米米CLUBのオリジナルとして作られた曲の一つであるらしく、「ソーリー曲」としてというより、米米のルーツの一つとしてそっと加えられた曲としてとらえた方が正しいかもしれない。
15 ポイのポイのポイ
軽い男シリーズ。カールスモーキー石井劇場も開演する。
ただただ軽くて悪いチンピラの歌。
ここまで聴いて騙された気分になろうが、金払ったことを後悔していようが、あたしらにゃ関係ないやい、という開き直りをしているかのようでもある。
この曲をこのアルバムの締めにもってくるというのが、このCDで表現したいことを全て表しているのではないだろうか。知らんけど。
Disk2(8㎝CD)
Disc2はすべてダンサーチーム・シュークリームシュがボーカルの曲である。
キュートな歌声にちょっとエロティックなのがシュークソングの魅力である。
1 踊れシュークよ!踊り子よ!
シュークリームシュはMINAKOとMARIによるダンサーチームだが、米米のダンサーが躍るだけなわけはなく、ちゃんと小芝居やMCもこなす。「ちゃんと」ってなんだ。
芝居が安く感じるが、それがいいのだ。こんなところで完璧な演技をしたらオーバースペックではないか。ちゃんと小ネタも挟んでいる。
さすがは米米のダンスチームである。
2 東京イェイイェイ娘
いにしえのアイドルをほうふつとさせる軽妙なサウンド。
そして行き過ぎなほどの熱量で合いの手を入れまくる親衛隊。
ライブでは会場全体が親衛隊となってアイドル・シュークを盛大に後押しする。その一体感こそが米米CLUBのエンターテインメントショーの醍醐味である。
ちなみに、私はMARIちゃん派である。
3 チョビットダンス
軽妙なサウンドとヘタうまなボーカル、美しいかどうかの判断に迷う男声コーラスのバランスが秀逸な一曲。
秀逸か?恥ずかしいのよ。
4 プラムジュース
締めにふさわしいバラード。
愛するあなたのためなら何でもするという献身的な愛の歌。文字通り献「身」的な愛。飲み干したいほど愛してるなんて、当時サクランボだったボクには刺激が強すぎた。いや、あの、そういう意味だよね?
【まとめ】
かんたんにまとめると、ひどい(誉め言葉)。
浪漫飛行のヒットを受けて発売されたと勘違いされたのか飛ぶように売れ、勘違いして買った人が手放した予約特典付き初回盤がまとまって中古CDショップの棚に並んでいたのも懐かしい思い出である。
聴けばわかるが、オリコンで1位を取るようなCDではない。でも、米米CLUBのファンにとっては燦然と輝く記念碑的作品と言っても、きっと過言ではない。
むしろ、初中級者から上級者へと脱皮する関門としての機能をも併せ持つ作品ともいえる。
そして、ライブで本作の収録曲が流れると、イントロの時点でかなり盛り上がる。どの曲もだ。
それが信じられる人だけが、米米CLUBのライブに来なさい、なんて偉そうに言いたくもなってしまう。
「米米CLUB」は、米米CLUBの下半身にして根幹であり、「米米CLUB」を名乗るにふさわしい一枚である。
〈ジャケット〉
概要で紹介した通り、本作は初回盤予約特典が歌詞カードだった。
なので、通常盤となると…
これは嘘ではない。本当だ。
そして特定の歌詞カードはこちら。
CDケースの横の厚紙は、金色の表紙?を開いた内側。その中にポスタータイプの歌詞カードが収まっている。
改めてお伝えしよう。初回盤の予約特典である。
そしてその裏は…
この写真だとわかりづらいが、裏は収録曲の解説になっている。当然、何度となく解説を読み、当時まだ知らなかったライブの様子を思い浮かべ、憧れながら聴き込んだ。
今回のレビューを書くにあたり、この解説に引っ張られないように気をつけたつもりだが、やりきれたか自信がない。
これから「米米CLUB」を聴く人には、ぜひこの解説も読んでほしい。それも併せてこのCDが完成する。それなのに予約特典にしちゃうところが米米CLUBのすごみなのである。