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ゴホンと言えば(いや、言ってない)

先日、街中をブラブラ一人で歩いていたら、後ろから声をかけられた。

「あの〜、すみません」

振り返ると、そこには見知らぬ女性。
同世代あたりだろうか。

表情からは用件が読み取れない。

道を聞かれるには違和感のある雰囲気。

セールスか、宗教か。

そんな発送を巡らせているうちに、女性は続けてこう言った。

「今、私とすれ違う時に“咳払い”しましたよね?」

嘲笑のように歪む口元に、射抜くような眼差し。

しかし、どんな眼で射抜こうと、咳払いなど記憶にない。

そもそも、この女性とすれ違った記憶もない。

こういう時はあやふやなことを言ってはならない。

「私は咳払いなどしていません」

なるべく無表情に私は返す。

すると、その女性は「じゃあ、違う方だったのですかね、すみません」と、それほど謝罪する気もなさげに言うと足早に離れて行った。

なんなんだ、あれは。

ついさっきまで飲んでいたバナナナバナナフラペチーノの幸せが薄れてしまったではないか。

しかも、してもいない咳払いを責められかけて喉がイガイガしてきた。

あまりの衝撃に、身体はチョコバナナナバナナフラペチーノを求めたのであった(ってわけじゃないけど)。

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