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第10号(2023年10月6日)潜水艦戦は無人艦により喧騒の集団戦へ移行するのか?(8月期)

皆様のお志と協力により第10号を迎えることができ、心より御礼申し上げます。ドローン関連ニュースは拡大の一途をたどっており、今号も象徴的な情報をたくさん分析してまいります。今号は8月期の話題と論考についてご紹介します。



米海兵隊は史上初めて有人ヘリコプターから無人ヘリコプターへ給油を行った

概要
Defence News に8月21日掲載(記事本文
原題 ”Manned Marine helicopter refuels unmanned helo for 1st time”

要旨
 
米海兵隊は、史上初めて有人ヘリコプターから無人ヘリコプターへの給油が行われたと発表した。7月にカリフォルニア州行われた演習において、CH-53EスーパースタリオンからMQ-8Cファイヤースカウトに対して地上において約700ポンド(約317.5kg)分の燃料が補給された。
 このように燃料搭載量の多いスーパースタリオンからファイヤースカウトに給油を行うことができれば、ファイヤースカウトの飛行可能距離を飛躍的に向上されることができると指摘されている。海兵隊が想定しているインド太平洋地域での戦闘では兵站が問題となるため、このような取り組みの重要性が増している。

コメント
 
一見地味に見えるニュースだが非常に大きなニュースバリューを持つ。まず、有人機と無人アセットの組み合わせにより無人アセットや有人アセットの能力を向上させることができることをこの実験は示している。また米海兵隊は無人アセットの運用について本演習に用に実験を重ね、無人アセットの運用ノウハウの蓄積を得ていることもわかる。こうした運用ノウハウの蓄積はすぐにできるものではない。こうした姿勢は見習うべきだろう。(以上NK)

 作戦の柔軟性を高める点で、空中給油能力は非常に重要です。特に航続距離の大きく異なる航空アセットを組み合わせて任務を遂行する場合、ボトルネックとなる航続距離の短いアセットをどのように使用するか、またはその弱点をどう克服するかが課題となりますから、このニュースは一つのブレイクスルーと言えるでしょう。更にこのブレイクスルーによって、新たな運用のアイデアも出てくると思います。こうした積み重ねが人的戦力を鍛え、技術の有効な活用に繋がっていくものと考えます。(以上S)

オランダがリーパーの導入機数を倍増させると発表

概要
C4ISRNET に8月29日掲載(記事本文
原題 ”Netherlands doubles order of MQ-9 Reaper drones, plans to arm them”

要旨
 
オランダは、導入予定のMQ-9リーパーの導入機数を当初の4機から8機へと倍増させ、攻撃任務も担えるように武装させると発表した。
 オランダは2011年からリーパーの導入計画を進め、2018年にゼネラル・アトミクスから、情報収集と偵察任務のみを目的とした非武装のMQ-9Aリーパー・ブロック5を計4機を購入する契約を結んだ。今回はその導入機数を8機に増やすだけでなく、GBU-12レーザー誘導爆弾とAGM-114ヘルファイアII空対地ミサイルを搭載できるようにアップグレードするとの計画が発表された。リーパーとその運用システムはレーワルデン空軍基地に配備される予定で、オランダ海軍の作戦を支援するためにオランダ海軍の要員も参加するとのことである。
 ドローンの武装化はロシアによるウクライナ侵攻以降、ドイツ、イタリア、ギリシャなどのヨーロッパ諸国で承認されつつあることが指摘されている。

コメント
 
ドローンの武装化がヨーロッパ各国で進んでいるとの指摘は、ドローンがただのセンサーとしてだけでなくシューターとしての役割を担うことでバトルリズムを高速化させることを意図しているのではなかろうか。
 気になる点としては今なぜリーパーの導入を進めるのだろうかということだ。現在の戦場におけるリーパーのような大型無人機の生存性には疑問が呈されており、アメリカの運用するリーパーがロシアの戦闘機と接触する事件も発生している。もちろんそうした生存性の低さを補うように、ドローンの母艦としての役割を付与しようという動きもある。オランダはこの現在の戦場における大型無人機の抱える問題にどう対処するのだろうか。(以上NK)

 オランダでリーパーが導入されている背景は地理的関係から脚の長い大型ドローンによる偵察が効力を発揮すると見込んでのことではないかと考えましたが、皆さんはどのように考えましたか。彼らは武装ドローンを調達しているからといって、直ちに攻撃する必要はありません。とはいえ無防備な機体を導入するのは残存性に大きなリスクとなるため、リーパーの導入に踏み切ったのではないかと重ねて考えました。
 平和な土地と戦場は明確に区切られているものではなく、グラデーション的だとすると(常在戦場ではありませんが)、ある程度距離があったとしても目を光らせておくべき地域があるということでしょう。ただ、NATO加盟国間で情報を共有のレベルを上げる等、地勢と各国のつながりを活かしてよりコスパの良い戦略を取った方が有益なのではないかとも思います。
(以上S)

「段ボール」無人機の能力は?

概要
NOELREPORTSが8月31日投稿(記事本文

要旨
 
ウクライナは、オーストラリアのSYPAQ社が開発した、主要部分が「段ボール」で製作されたドローンを戦場に投入した。
この「段ボール」ドローンは8月27日に発生したロシア・クルスクの飛行場攻撃にも使用され、その際4機のSU-30と1機のMIG-29及び防空システムに損害を与えたと報じられている。
 本件は世界中のメディアで取り上げられており、 INSIDER が報じているところによれば3500ドル(50万円)ほどで約3キロのペイロードがある。 3月に報じられたオーストラリアメディアの動画では段ボールのように見え、実際にcardboard droneと報じているが、実際の機体は段ボールよりやや硬質なフォームボード(工作等で使う高密度紙を積層した素材)で出来ているようだ。

コメント
 
3月に報じられた際はほとんど世界的な話題になっていなかったこのドローンですが、この攻撃で大きなインパクトを与えることになりました。木や紙といった素材はレーダーをほとんど反射しないため、脆さを度外視すれば非常に効果が大きいものとなります。供与から半年弱が経過した今になって報じられているということは、恐らくそれまでは偵察や軽量の物資輸送に用いられていたものを戦闘に使用し始めたのではないかと推測します。
 形状は航空力学の基礎を踏襲したものになっていますが、飛行機としては粗雑で恐らくゴム動力等ではきちんと飛ばない気もします。更に人によって組み立てに差が出るであろうこのドローンがきちんと飛行できるのは、最新のセンサーやフライトコントローラー、演算装置などのおかげだと考えられます。50万円の内訳も、ほとんどがこうした搭載装備品のコストでしょう(フォームボードは、ホームセンターや画材屋さんで購入できますから…)。
 現代の戦争において重要なのは、最新鋭の超ハイテク装備品を投入するだけではなく、それらの量を補う「使用要領が簡単」で「目的を高確度で達成し得る装備品」を「できるだけローコストで沢山投入」し「ある程度の失敗は許容できる」環境を作ったうえで「兵士に敵の追随を許さぬ創意工夫を思考させる」ことなのではないかと考えました。無論既存のアセットが雌雄を決する戦いにおいて重要な地位を占めるということは否定しませんが、資本主義が続き、世界の資源が枯渇していく限り装備品の開発コストは増大していくことは確実です。アフォーダブルな防衛のためには、多少品質や能力を削ってでも、量を確保することがポイントになってきていると思います。この量≒質論については、次回取り上げたいと思います。
(以上S)

南米の過酷な自然環境においてUGVはどこまで活躍できるのか?

概要
Breaking defense に8月23日掲載(記事本文
原題 ”Unmanned ground vehicles face a rare market challenge in South America: Horses”

要旨
 
世界中の軍隊と同様に、南米の軍隊もUGVの持つ多用途性に注目している。しかしアンデス山脈やアマゾンの熱帯雨林といった過酷な自然環境が存在する環境ではUGVよりも、より伝統的なアプローチである馬が未だ活躍するのかもしれない。アルゼンチン、チリ、エクアドルといった南米各国の陸軍では馬、ロバ、ラバが訓練・実任務でも使用されている。加えてアンデス山脈の地形や天候下ではUGVの作動に難があると指摘されている。UGVが作動しないような環境下においても馬やラバは活動できる。
 ラテンアメリカ軍事史アカデミーのガルグレビッチ会長は「アンデス山脈の地形と極端な天候パターンは、南米のアンデス諸国がUGVの使用を検討することを困難にする」ことを意味すると述べた。そうとはいえ、南米におけるUGV開発・採用の動きは存在する。アルゼンチンにおいては、アルゼンチン企業アメリカン・ロボティクス社が陸軍の支援を受けて、ドンキーと呼ばれる運搬用UGVを開発している。

コメント
 
南米大陸の過酷な自然環境ではUGVに限界があるという今回の指摘は、日本においてもあてはまるのではないだろうか。例えば今年の夏は異常なまでに暑かったが、この酷暑の中でドローンのバッテリーや内蔵機器が何の問題もなく作動するとは考えにくい。実地で試験を繰り返して対策を考えていく必要があるだろう。
 UGVより馬やロバのほうが運用に向いているとあったが、こうしたローテクに自動運転技術といったハイテクを組み合わせてより効率的に、多用途性を産んだりはできないのだろうか。昔からのアセットを今の技術を組み合わせることがウクライナでも盛んに行われているイノベーションだが、生物相手にも応用できないのだろうか(以上KN)

 機械にとって過酷な環境は、生物にとっても過酷でしょう。我々が酷暑に悩まされた今年、観光で行った先で熱中症になっている馬を目撃しました。福島の伝統行事である相馬野馬追では今年2頭の馬が亡くなり、来年度の日程を大幅に前倒しするそうです。アンデスやアマゾンの気候も、今後より過酷になるものと考えられます。そんな中での一つのアイデアですが、例えば車両の耐候性はUGVに活かせるのではないかと考えます。また、水陸両用を前提としたアセットを用意するなどして、現在存在する乗り物の技術を応用することも一案だと考えます。無人アセットはソフトウェアや制御技術の方に話が進みがちですが、基本に立ち返ってハードウェアやマテリアルについて考えるタイミングなのではないかと思いました。
 一方、UGVの自律制御で課題となっているのが地形把握です。以前ある勉強会で山道は不規則で、どのように学習させるかが難しいという話を聞いたことがありますが、洪水やがけ崩れ等により、地形が急激かつ大幅に変化した場合に対応させるべきか。また、どう対応させるのかといったことも、今後重要な検討課題になるでしょう。場合によってはUGVにこだわり過ぎず、UAVなどと上手く組み合わせて課題を解決することも必要かもしれません。 (以上S)

沈黙の艦隊はもう時代遅れ?次世代のあるべき米潜水艦艦隊の姿と無人アセットの活用について

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