ホテル コープスイン
高橋は、デスクに積まれた書類を横目にパソコンの画面を見つめていた。
中年の営業マンとして多忙な日々を送る彼は、今回は急な出張で地方都市に向かうことになった。
長年の仕事の疲れがたまっており、せめて一晩だけでも安らげる場所が欲しかった。
トラベルサイトでいくつかのホテルを比較していると、あるホテルのレビューが目に留まった。「快適な滞在」を約束する文句に、彼は心惹かれた。
高橋「ここなら大丈夫そうだな」
高橋は何か普段とは違うような気もしたが、まあ大丈夫だと自分に言い聞かせ、予約ボタンをクリックした。
…
地方都市の駅に到着した高橋は、タクシーでホテルに向かった。
タクシーの中で彼は、過去の出張での失敗やトラブルを思い出していた。
今回の出張で自分の立場を立て直すためにも、絶対に成功させなければならないと決意していた。
ホテルに到着すると、フロントには若くて親切そうな女性がいた。
彼女の笑顔には、どこか哀しみが混じっているように感じた。
フロント「ようこそお越しくださいました」
高橋「ありがとう、今日は移動で疲れてしまって…」
フロント「お疲れ様です。こちらがルームキーでございます。お部屋の準備をいたしますので、10分後にお部屋へお入りください。何かご不明な点がありましたら、どうぞお知らせください」
高橋「親切にありがとう。それじゃ、そうさせてもらうよ」
高橋は、彼女に軽く頭を下げて部屋へ向かった。
…
10分後、部屋のドアを開けた途端、高橋はその場に立ち尽くした。
目の前のベッドには、人間のようなものが横たわっていた。
高橋「うわっ!なんだこれは…?」
部屋には不気味な静けさが漂っていた。
遠くから時計の秒針が時を刻む音が微かに聞こえる中、高橋はフロントに電話をかけた。
受話器の向こうでベルが鳴り、やがて支配人が応答した。
支配人「高橋様、どうされましたか?」
支配人の落ち着いた声が受話器から響く。
高橋「いやいや、どうされましたかって…部屋に、部屋に死体があるんです!」
高橋は声を荒げた。
支配人「少々お待ちください。お部屋に向かいます」
…
数分後、部屋のドアをノックする音がし、支配人が現れた。
彼は中年の男性で、どこか冷たい微笑を浮かべていた。
支配人「何か問題でもございましたか?」
支配人は穏やかな口調で尋ねた。
高橋「問題って…ここに死体があるんですよ!どうなっているんですか?」
支配人は微笑を浮かべた。
支配人「当ホテルでは特別なサービスとして、死体をお付けしています」
高橋「え?それって冗談ですよね?一体どういうことなんです?」
支配人「いやいや、ご予約の際にご覧になっているはずでしょう」
高橋「そんな…」
支配人「それでは、ご自由にお使いくださいませ」
支配人はそう言い残し、部屋を去った。
※公開している画像/テキストはすべて趣味制作のオリジナルでフィクションです。
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