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障害を持っている人の海外生活についてスペインの地方に3年半住んで思ったこと

夫の仕事の都合で、2021年の11月末からスペイン北部のサンタンデールという街に住んでいる。

夫は筋肉に関する持病を持っており、階段・坂道の上り下りや走ること、重いものを持つことが自力では難しい場合がある。

それでも、3年半住んでみて、街のおかげ、人のおかげ、自分たちの工夫によって、思っていた以上に快適に過ごせているので、備忘としてまとめておきたい。

街のおかげ

気候が穏やかで、特に冬は雪が降らない。路面が凍結したり、雪が積もると移動に危険が生じるが、それがないのが非常に大きい。
災害の危険性(地震と津波)が日本と比べて低い場所なのもありがたい。

また、街の規模がそこまで大きくない。
中心地(セントロ)に住んでいるが、日常生活に必要なスーパーや薬局、カフェなどは大体徒歩圏内にある。メインストリートがフラットで、車椅子で移動している人もよく見かける。
坂道になっている通りもあるが、動く歩道(時々壊れているが)が設置されている。
旅行の時などで都会に行くと、移動手段に地下鉄を使う必要が出てくるが、かえってエレベーターやエスカレーターの位置を探すのに時間がかかった。駅によっては「ない」場合もあり、車椅子マークのついている駅(バリアフリー施設が整備されている駅)をあらかじめ探して移動経路を考えないといけない時がある。

人のおかげ

見知らぬアジア人でも、助けてくれる人が非常に多い。
夫の仕事場が郊外なので、通勤はバスを使っているが、朝のラッシュの時間でもバスの運転手は車体を縁石に寄せてくれたり、車高を下げてくれる。夫の様に乗り降りに時間がかかる場合でも普通に待ってくれる。周りの人も、ナチュラルに席を譲ってくれる。何をしたらよいかわからない時も、何か助けが必要か?を聞いてくれる。

地方なので混んでいないだけだったり、そもそも正確な時刻表の概念がないということもあるかもしれないが、とにかく住んでいる人達に心の余裕が感じられる。人を助けることにカジュアルというか、ハードルが低い様に思う。
障害を持っている人だけでなく、ベビーカーを押している人や高齢者に対しても同様だった。

日本にいたときはぎすぎすした空気を感じることもあったし、遅れるから次の便に乗る様言われた事もあった。これ自体が良い悪いは別として、日本人はタイパを求めすぎている、疲れすぎているのだと思う。
そして、日本に一時帰国して初めて感じたが、日本ではずっと各々携帯を見ていて、そもそも周りが見えていない、気づいていない場合も多かった。(目も合わない)スペインは一緒にいる人と喋っているので、周りの状況に気づきやすいのもあるのかもしれない。

一方で、普段街を歩いているときには、皆普通に「無視」してくれる。国や都市によっては二度見三度見されたり、あからさまに笑われたり、動きを真似されることもある。どんな場所にも「いい人」「悪い人」はいるものの、やはりある程度傾向はある気がする。
ここサンタンデールでは(スペインでは?)、少年少女含めて、ものすごく普通である。なぜなんだろう…。

自分たちの工夫

障害がある事が伝わりやすい様にする

夫は車椅子利用者ではないので、ぱっと見わかりづらい。言葉で説明しても聞き取ってもらえない場合があるので、普段から杖を持っている。杖をつくことで、遠くから来るバスの運転手にもすぐわかってもらえる。

助けてもらったときのお礼の気持ちは全力で表現

工夫というほどのことでもないが、普通に感謝の気持ちを表現するのは大切だ。助けてくれた人にも良い気持ちになってほしいし、良いことをしたと思ってくれたら、次の誰かを助けることにもつながるからだ。

難しいのが、夫の障害の特性上、立ち上がりが難しいため、短時間の移動の時などはバスの中で立っていた方が良い場合である。そのため、席を譲ろうとしてくれた時でも「大丈夫です!」と言う時があるが、それもできるだけあなたのその気持ちがありがたい!!!を表現する様に努めている。

言葉と表情だけでなく、ジェスチャーも加えるときもある。特に英語もスペイン語も通じない時は、自分の胸に手を当てて会釈をしたり、ステレオタイプだが手を合わせたりもする。

結局は人同士のコミュニケーション

街の構造やインフラももちろん大切だが、完璧なバリアフリーを目指すのは現実には難しい。
どこの街へ行っても、大なり小なり人の助けを求める場面は絶対に出てくるので、やはりコミュニケーションが大切になる。

助ける側・助けられる側に上下関係があるわけでは勿論なく、普通にお互いが気持ちよくコミュニケーションを取るにはどうしたらよいかを考えて動けたら良いと思う。
普段助けられる側が多いが、私も気づいたときには、カジュアルに、自分のできる範囲で助けられるようになりたい。


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