山から降りて広がっていた風景
娘の中学受験の塾通いがはじまり、家族の暮らしが一変した2019年の夏、「山から降りる準備」というエッセイを書いてnoteに公開した。
この文章は、2021年11月に出版したエッセイ集『ただいま見直し中』に改稿して収録し、note上では、『ただいま見直し中 下書き集』という有料マガジンに改稿前のものを収めている。
これを書いたのは、20代30代と仕事に没頭した日々とは正反対の、子育て中心の暮らしを送るようになってから11年が経ったタイミングだった。
まだ中学入試までは1年半という時間があり、でも、そのトンネルを抜ければ、つまり子どもが中学生になったら、母親役最優先で生きてきた期間に一旦区切りをつけよう、そのとき自分は何ができるのかを楽しみにしながら、この日々を生きていこう、という当時の思いを綴った。
今読み返すと、娘の勉強に伴走する日々で、つねに晴れることのない精神状態から肩と背がつい丸まってしまう自分にむかって、「さぁ顎を上げて、胸を張って、遠くを見て!」と発破をかけているみたいだな、と感じる。
このエッセイにはこれまで、「現在この文章のなかの小川さんと同じような状況で、不安だったけれど、読んだ後は遠くに光が見えた気がした」といった熱のこもった感想のメールがいくつも届いた。そして最近も、voicyのリスナーさんから届いたコメントに、そうした内容のものがあった。
最近盛り上がりをみせている音声配信メディアのユーザーは、現時点では20代や30代という若い層が中心を占めている印象で、わたしのフォロワーさんも、子どもは乳幼児、さらに次の出産を間近に控えているという方からもコメントが届く。
これまで、わたしの本や文章の読者になってくださる方は、同世代が多い感触を持っていたのだけど、voicyをきっかけにフォロワーになってくださるのは、わたしより10歳や15歳下ということも少なくないようだ。
これはvoicyを始めるまでは予想していなかったことだし、新鮮な驚きと、もちろん大きなよろこびを感じている。
システム故障から降ってきたアイデア
そんなvoicyのリスナーさんからの要望をきっかけに、突然わが身に天命のようにして降ってきたのが、「古いブログを再編集して電子書籍化する」というアイデアだった。
これについては、経緯をvoicyで語った(下記埋め込みリンクのチャプター5)。
音声でも語っているように、今まさに小さな子どもを育児中という読者の方から、わたしの過去のブログを読んで参考にしたいという声が届き、ひさしぶりに移転前の旧ブログ(現在もアーカイブとして閲覧できるようにしてある)を見たら、当然あるはずのカテゴリー表示や日付表示がなぜかブログのページから消えてしまっていた。
文字化けしたりレイアウトが崩れたりしているわけではないものの、最終更新の記事よりひたすら過去へと遡っていくしかない、という状態になっている。
すぐにシステム会社に問い合わせところ、使い続けてきたシステムのバージョンが古いことから不具合が起きていて、調査や復旧、さらにその後バージョンを定期的にアップグレードするのに数十万という費用がかかることがわかった。
このサイトのブログは2012年から2020年、娘が3歳から11歳までの子育ての日々がすべてそこに記録してあり、記事自体は残っているのだが、年やカテゴリで記事検索ができないのはやはり不便である。
けれど、ただ元の状態に戻すためだけにその高額の費用を払うのは、今やるべきことなのかという疑問が、まず浮かんだ。
自分の価値観のなかでそれが「正当な出費」とどうしても思えない。
しばらくウンウンと考えていたら、日課の朝ヨガの後ですっきりした頭にふわりと、「古いブログを電子書籍化したらいい」という案が浮かんできた。
山ごもりを経たからこそできること
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書籍『すこやかなほうへ』下書き集
2022年12月発売のエッセイ集『すこやかなほうへ』(集英社)に収録されたエッセイの下書きをまとめました(有料記事はのぞく)。書籍用に改稿…
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