冷蔵庫の買い替えで考えたこと
11年間使ってきた冷蔵庫を買い替えた。
数ヶ月前から、時おり異音が気にはなっていたが、今月に入って製氷機能の調子が悪く、一晩たっても氷ができていない。さらに冷蔵室の冷えも弱くなっていて、庫内が野菜室程度にしか冷えていない感じがする。
以前、夏場に冷蔵庫が壊れたという知人から、クーラーなどの工事が立て込む時期だったせいで販売店からの配送に数日かかり、その間に中身がどんどん溶けるわ腐るわ、新しい食材も買ってくることができないわで、悲惨な目に遭ったという話を聞いたことがあった。それを思い出し、完全に壊れるまで待っていては大変なことになるぞと、早めに購入に動くことにした。
この先10年を見越したサイズ決め
わが家は3人世帯だが、わたしも夫も在宅勤務で3食自炊、しかも夫婦ともに料理好きなものだから、この家に引っ越すタイミングで買った冷蔵庫は550Lだった。以来使い続けてきて、とくに大きすぎると感じたことはないし、目立つ不満もなく快適に使ってきたのだが、なんとなく今回の買い替えでは、1サイズ落としてもいいような気がした。
それは最近、月曜断食で自分の食べ方を見直したせいもあるし、これから先の10年を見据えたとき、わたしと夫は50代、娘は10代から20代前半の日々を過ごすことになる。中高生の食べ盛りといっても女の子1人だし、学校は給食があるおかげで日々のお弁当作りもない。だったら、これまでより食べる量は減っていくのではないか。少なくともわたしに関しては、少し減らしていいと思っている。
となると、サイズは400L台。予算は、配送費やリサイクル費、保証までこみこみで20万円未満でおさめたい。これは、10年使うと考えて、冷蔵庫に充てる費用は1年あたり2万までかな、という何となくの感覚から。
スペック面での第一条件として、わが家の冷蔵庫の設置場所の都合上、左開きか、せめて観音開きでなくてはならない。右開きだと動線的に使いにくいのが目に見えている。
そうそう、もう一つ大事なのは、野菜室の位置である。わが家は野菜が大好きで、買う量も消費する量も多いので、立ったまま出し入れができる、冷蔵庫と冷凍庫にはさまれた真ん中に野菜室があってほしい。
その条件で探してみると、なんと、今使っている冷蔵庫くらいしか該当するものがなく、結局同じメーカーの同じシリーズの1サイズ小さい460Lタイプを買うという結果に落ち着いた。
梅雨明け直前、購入の翌々日には配送してもらえたおかげで、何一つ腐らせず、捨てず、古い冷蔵庫を送り出し、新しい冷蔵庫を迎え入れられたことを、わたしと夫はまるで偉業を成し遂げたかのように喜び、自分たちの生活能力(というとだいぶ大げさだが)に少しだけ自信をつけた。
保証はどうする? 省エネって何?
製品選びは、最初は諸条件を打ち込んでネットで探し、候補をある程度絞り込んでから、夫と一緒に家電量販店へ出向き(事前に電話で目当ての型番の製品が展示されているか確認)、現物を見て決める、という方法をとった。もちろん候補の製品だけでなく、店内の展示在庫はもれなく見たが、いやそれにしても、冷蔵庫って高い。
ここ数年で高くなったのかと思ったら、11年前に購入した冷蔵庫の伝票を見ると、25万円だった。
今回は、運良く新製品が発売される前の値下げ時期というタイミングもあり、製品自体は14万円台。それに諸費用がもろもろ入り、ポイントもついて、結局18万円強で買えた計算になる。
最後まで散々悩んだのが保証で、5年保証ならサービスで無料、しかし10年保証だと2万円と提示された。さぁ、あなたならどうする!?
わたしは結局、2万円払って10年保証をつけることにした(18万円にはその2万円も含まれている)。なぜなら、せっかく買うなら10年以上は使い続けたいと思うから。
おそらく保証を使う事態が一番起きやすいのは、5年以上経ってからだろう(だから5年までは無料なのだ)。
たとえば8年、9年目のときに故障が起きて、修理するか、新しいものに買い換えるか、という選択を迫られたとき、10年保証に入っていなければ、買い替えの一択だ。でも保証を使えば無料か安価で修理ができ、寿命を2、3年延ばせるかもしれない。もちろん不調のレベルによっては数ヶ月とか1年前後の延命かもしれないが、それでも、せっかく買ったものはちょっとでも長く使いたいと思う。
購入完了までのステップ自体は、誠実そうな店員さんのおかげでとても気持ちよくスムーズだったが、会話のなかで彼がなにげなく言ったことで一つ「ん?」と引っかかったことがあり、後で夫と話したら、彼も同じところに疑問を感じていたことがわかった。
それは、最近の冷蔵庫は省エネ機能が進化していて、その機能の部品がどうしても精密で壊れやすいため、冷蔵庫の寿命自体は短くなっている、という話である。
実際、ひと昔前までは15年とか、まれに20年壊れない冷蔵庫もあったというが、最近は10年もてば十分寿命を全うしたと見るべきで、買い替えどきは8年から9年だという。
どの点を取り上げて「省エネ」と見るかだが、商品スペックを比較して、年間の電気代がより安い方が「省エネ優秀商品」ということになる。
でも、その電気代を安くするための部品が壊れやすくて、耐用年数が数年単位で短くなるのなら、それって本当に省エネと言えるのだろうか?
部品はリサイクルされるものもあるとはいえ、ゴミとなってしまう部分も当然ある。新しい製品をつくるのにかかるもろもろのコスト。使われるプラスティックの量。運搬や配送にかかる人件費や環境負荷。そうした面を考えたら、いくら「省エネ家電」を謳っている製品だとしても、短いサイクルでどんどん買い換えるのは、自分の価値観として望ましい姿勢ではない。
家電デザインに求めるのは「気にならないこと」
まぁとにかく、新しい家電を買い替えるときに、自分が何に重きを置くかをあらためて考えたり、この先の暮らしの見通しを立てたりすることは、頭や心の整理に、なかなかいいなと思った。
「モノ選びにうるさい人」というイメージを持たれがちなわたしが、意外にも短時間でパパッと決めたことに夫が驚いていたが、わたしにとって冷蔵庫の買い替えは、家づくりやインテリア選びで家具や照明やソファを決めることとは違う。
また、冷蔵庫の置き場所がリビングなどからはまったく見えない場所にあるため、おしゃれな人の部屋にある海外製の冷蔵庫や、そうでないならいっそこれ、と選ばれがちな無印良品でなくてもよかった(一応無印良品もチェックはしたが、野菜室の位置によって候補から除外)。
冷蔵庫に限らず、家電デザインには大してうるさくない方だと自分では思っている。見た瞬間「これはやだな」という感覚は明確にあるのだけど(具体的には、微妙な曲線とか、色とか)、「こうでないと」というのはとくにない。そもそも家電への興味が薄く、生活に本当に必要なものだけあればいいというスタンスだからだろうか。人の家に行ったときも、取材ではない限り、どんな冷蔵庫を使っているかなんてまったく気にならない。
うちの冷蔵庫は、白くて、余計なデザインがなく、右開きでなく、野菜室が真ん中にあれば、それでいい。
その条件をちゃんとクリアして、わが家にやってきてくれた新しい冷蔵庫を、これから10年以上、大切に使っていこうと思う。