令和7年度日大ロー入試第2期の雑感

全体的な講評

憲法・民法・刑法、いずれも基本的な分野からの出題となりました。この点については、例年通りということになります。

したがって、基本的なことを正確に表現できたのか、問題文を読み事実関係を正しく理解し適切に処理できたのか、といった基本的な部分で合否が分かれることになるでしょう。この点は、第1期と共通しており、第1期よりより基本的なことが問われたといっても過言ではないでしょう。

憲法について

憲法は21条1項からの出題でした。素材判例は、最判平成元年1月30日(最高裁判所刑事判例集43巻1号19頁)のいわゆる「日テレ事件」ですね。取材の自由と公正な裁判の実現との利益衡量を求めた判例で、百選には掲載がありませんが、TBS事件と併せて受験生としては押さえておくべき判例でしょう。

素材判例は、博多駅フィルム事件から取材の自由の意義・位置づけ、刑事裁判の公平な実現との対立があり得ることを論じた上で、「差押の可否を決するに当たつては、捜査の対象である犯罪の性質、内容、軽重等及び差し押えるべき取材結果の証拠としての価値、ひいては適正迅速な捜査を遂げるための必要性と、取材結果を証拠として押収されることによつて報道機関の報道の自由が妨げられる程度及び将来の取材の自由が受ける影響その他諸般の事情を比較衡量すべき」という判断枠組みを示しております。

なので、答案では、判例の理論を端的に示し、判例の判断枠組みで判断するのが良いと思われます。目的手段審査で論じた方もいるかと思いますが、判例が判断枠組みを示してくれていること、事案として、判例の利益衡量の考慮要素に対応する事実が挙がっていることを考えると、判例の判断枠組みの方が書きやすかったと思います。もっとも、わからなかったという人は目的手段審査をした上で、事実を自分なりに評価して結論を出せば、一定の評価はもらえると思います。

以上から、まずは取材の自由と刑事裁判の公平な実現が衝突する事案であることを指摘でき、取材の自由が一定程度制約される場合があることを論じた上で、今回の差押えが許容されるのかを論じることが求められております。そして、参考判例と事案がほぼ同じであることから、これを論じるにあたって判例の理解を正確に示すことができたか否かによって、差がつくと思われます。

民法について

民法は、177条論からの出題でした。

設問1については、単に二重譲渡の事案なので、反論としては、177条の「第三者」について触れた上で、法的主張として、対抗要件具備の抗弁が考えられることを指摘出来れば十分でしょう。

設問2は、177条の「第三者」に背信的悪意者が含まれるのかが問われています。結論として、含まれないことは多くの受験生が知っていると思いますし、その理由も比較的書ける受験生が多いと思います。なので、背信的悪意者であることの認定を丁寧にすることができたかという点は、差がつくポイントかなと思いました。

設問3は、背信的悪意者からの譲受人が保護されるか否かが問われています。これも基本的な論点ですね。

以上から、民法も極めて基本的な問題でしたので、いかに正確かつ丁寧に論じることができたかで差がつくことになるでしょう。

刑法について

刑法の素材判例は、最判平成16年12月10日(百選Ⅱ42事件)。事後強盗罪からの出題でした。

本問は極めて基本的であり、事後強盗罪の成立要件を丁寧に検討すること、具体的には窃盗の機会といえるか否かについて問われている問題でした。判例はこれを否定していますので、結論として肯定するにしても、判例を意識した論述が求められるでしょう。

本問は、極めて基本的であるからこそ、刑法の基本的な姿勢である、「正確に定義(規範)を示し、丁寧に当てはめをする」ということで差がつく問題だと思います。

最後に

このように見てみると、やはり基本的な問題からの出題ということがいえると思います。特に今年の2期は、3科目とも、非常に基本的な問題からの出題でした。

やはり、日大ロー受験生としては、基本的な事項について、しっかりと学習しておくことが大事だと思います。


なお、上記見解は、私個人の見解であり、日大ローの見解とは一切関係ありません。

また、当記事は無断転載禁止とします。

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