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大学院入試合格体験記

東京理科大学から東京工業大学(東京科学大学) 理学院物理学系の基礎理論に合格しました。

東工大の物理学系は力学、電磁気学、量子力学、統計力学、物理数学、物理学実験の6問で構成されています。それぞれの科目で院試対策に使った参考書をまとめておきたいと思います。どのようなスケジュールで勉強したか、などは多くの人がすでに書いていると思うので他の記事を参考にしてください。

1. 力学

東工大の場合はほとんど剛体の問題で、たまに中心力ポテンシャルの問題が出ます。ラグランジアンや慣性モーメントの計算には慣れておくと良いと思います。

  1. 力学(増訂第3版) (ランダウ=リフシッツ理論物理学教程)
    僕は理論物理学教程が大好きです。
    この本自体を読んだのはB1の時なのですが、院試勉強をしているときは復習の際にその時のノートを何度も見返していました。
    薄いのに幅広いトピックを扱っており、演習問題もやりごたえのあって面白いと思います。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4489023863/ref=nosim?tag=naohepth-22

  2. 力学 (大学院入試問題から学ぶシリーズ)
    問題のチョイスが良いのと回答が丁寧なところが良かったです。
    万有引力の問題が少ないため、そこは他の問題で補った方が良さそうです。
    ただ、残念なことに絶版になってしまっているので、入手が難しい場合は大学の図書館などで借りてやってみてください。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4535786062/ref=nosim?tag=naohepth-22

  3. 詳解力学演習
    この本は院試対策によく使われている本です。
    ただし、詳解演習シリーズの全ての問題を解くのは明かなオーバーワークです。僕は「大学院入試問題から学ぶシリーズの力学」では演習が足りないと思った万有引力の問題の補充に使いました。また、東工大の力学は剛体の問題が頻出なので、過去問演習の際に類題で演習していました。演習問題の前にある剛体の解説の部分は他のどの本よりも詳しく、コンパクトにまとめられていて良かったのでおすすめです。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4320030257/ref=nosim?tag=naohepth-22

  4. 演習しよう 力学: これでマスター! 学期末・大学院入試問題 (ライブラリ物理の演習しよう 1)
    この本もよく使われている本だと思います。僕は万有引力のところだけやりました。
    https://www.amazon.co.jp/dp/486481094X/ref=nosim?tag=naohepth-22

メインで読んでいたのはこの辺りだったと思います。

2. 電磁気学

Gaussの法則やAmpèreの法則、電磁場の波動方程式の導出などの計算は慣れておきましょう。東工大はこれらの計算をさせた後、接続条件やエネルギー収支を考える問題に帰着するパターンが多いです。

  1. 電磁気学の基礎 (1)
    これもB1の時に読んだものです。
    この本にしか乗っていない公式などが多数使われているためあまりお勧めはできませんが、この本は電場や磁場の計算が網羅されているため、変わった系の問題が出てきた時は当時読んでいた時のノートを見返して復習していました。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4130626132/ref=nosim?tag=naohepth-22
    無難に砂川先生の理論電磁気学を読んでおいた方がためになると思います。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4314008547/ref=nosim?tag=naohepth-22

  2. 電磁気学 第2版 (大学院入試問題から学ぶシリーズ)
    力学のやつと同じシリーズです。
    電磁気はバランス良く乗っていたと思います。これ一冊でも十分でしょう。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4535788243/ref=nosim?tag=naohepth-22

  3. 電磁気学演習 (物理テキストシリーズ 5)
    砂川先生の電磁気学の演習書です。
    コンパクトなサイズですが難しい問題が網羅されています。東工大では双極子放射の問題が出たこともあったので、類題があるのがとてもありがたかったです。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4000077457/ref=nosim?tag=naohepth-22

  4. 物質中の電場と磁場: 物性をより深く理解するために (フロー式物理演習シリーズ 13)
    著者の村上先生は東工大の先生で、東工大の過去問とそっくりな問題もいくつか収録されています。誘電体や表皮効果について詳しいのが良かったです。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4320035127/ref=nosim?tag=naohepth-22

  5. 詳解電磁気学演習
    上3冊で十分でしたがたまに参照していました。全てやる必要は全くないと思います。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4320030222/ref=nosim?tag=naohepth-22

3. 量子力学

B1, 2の頃に量子力学は沢山の教科書を読みました。1冊で理解できなくても諦めずにいろいろな本に目を通してくのが大事だと思います。
東工大は井戸型ポテンシャルや調和振動子はもちろん、水素原子なども出てきます。CoulombポテンシャルのSchrödinger方程式も一度計算を追っておいた方が良いと思います。また、摂動論は必ず出てくるためエネルギーは2次まで、状態は1次までしっかりと公式を覚えておくと良いと思います。

  1. 量子論の基礎: その本質のやさしい理解のために (新物理学ライブラリ 別巻2)
    あとで紹介するJJサクライの教科書と同様にブラケット記法で書かれています。JJサクライのものよりも優しいので軽く読みたい場合はいいと思います。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4781910629/ref=nosim?tag=naohepth-22

  2. 現代の量子力学(上、下)
    ブラケットで有名な本でみんなが1度は通るやつです。
    Schrödinger方程式をいろいろなポテンシャルを解くところと角運動量のところは必ず1度は計算を追っておいた方が良いと思います。また、演習問題が豊富なのもいいと思います。
    上巻
    https://www.amazon.co.jp/dp/4842703768/ref=nosim?tag=naohepth-22
    下巻
    https://www.amazon.co.jp/dp/4842703792/ref=nosim?tag=naohepth-22
    演習・解答
    https://www.amazon.co.jp/dp/4842703725/ref=nosim?tag=naohepth-22

  3. 量子力学 1 , 2改訂新版: 非相対論的理論 (ランダウ=リフシッツ理論物理学教程)
    僕は量子力学も理論物理学教程が最も好きな本です。絶版になってしまっているので図書館で借りて読んでみてください。
    1巻
    https://www.amazon.co.jp/dp/4489000588/ref=nosim?tag=naohepth-22
    2巻
    https://www.amazon.co.jp/dp/4489000596/ref=nosim?tag=naohepth-22

    ここからは演習書を紹介します。

  4. 理系大学院入試問題演習 1: 「工学」「理学」「理工学」「薬学」…研究科を目指す方必読! (I/O BOOKS)
    残念なことに量子力学と統計力学は大学院入試問題から学ぶシリーズがありません。院試の過去問集はこの本くらいだと思います。問題のチョイスは良いと思います。また、変わった解法も載っていて過去問を解くスピードが上がりました。
    ただし、この本に限らず姫野先生の本はとても誤植が多いので注意が必要です(この本の場合は解答どころか問題文に誤植がある箇所もありました、、、)。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4777516954/ref=nosim?tag=naohepth-22

  5. 演習しよう量子力学: これでマスター! 学期末・大学院入試問題 (ライブラリ物理の演習しよう 3)
    演習しようシリーズの中で唯一、最後の章に総合問題があります。最後の章だけでもやる価値はあると思います。
    ただし、この本も誤植が多いです。必ず正誤表は調べましょう(正誤表に載ってない誤植も多数ありました)。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4864810400/ref=nosim?tag=naohepth-22

  6. 量子力学 (1, 2) (KS物理専門書)
    演習問題が豊富、ということで有名な教科書ですが、計算が大変なだけであまり面白くない問題が多く、僕は少ししか読みませんでした。
    1巻
    https://www.amazon.co.jp/dp/406153209X/ref=nosim?tag=naohepth-22
    2巻
    https://www.amazon.co.jp/dp/406153212X/ref=nosim?tag=naohepth-22

  7. シュレディンガー方程式 ―基礎からの量子力学攻略― (フロー式 物理演習シリーズ 19)
    中心力ポテンシャルの演習に使いました。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4320035186/ref=nosim?tag=naohepth-22

  8. 詳解理論応用量子力学演習
    たまに辞書的に使っていました。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4320031717/ref=nosim?tag=naohepth-22

4. 統計力学

東工大ではほとんど熱力学の問題は出ません。
ミクロカノニカル、カノニカル、グランドカノニカル、Fermi分布、Bose分布などの基本的な問題は何が出ても大丈夫なようにしておきましょう。

  1. 統計力学 (1, 2) (新物理学シリーズ)
    みんなが読むやつです。
    僕は冗長に感じてしまったので、他の本で勉強した後演習問題のみ扱いました。
    1巻
    https://www.amazon.co.jp/dp/4563024376/ref=nosim?tag=naohepth-22
    2巻
    https://www.amazon.co.jp/dp/4563024384/ref=nosim?tag=naohepth-22

  2. 統計物理学 上, 下 第3版
    上巻はほとんど全て読みました。
    難しいと良く言われている理論物理学教程ですが、この本は比較的難易度も低いと思います。これも絶版になってしまっているので図書館で借りて読んでみてください。
    上巻
    https://www.amazon.co.jp/dp/4000057200/ref=nosim?tag=naohepth-22
    下巻
    https://www.amazon.co.jp/dp/4000057219/ref=nosim?tag=naohepth-22

  3. 熱力学・統計力学 熱をめぐる諸相 (KS物理専門書)
    演習問題がとても豊富な上に、著者の高橋先生がnoteで解説を掲載してくれています。最近の本ですがとても良い本だと思います。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4065319013/ref=nosim?tag=naohepth-22

  4. 相転移・臨界現象とくりこみ群
    先ほどの高橋先生の教科書の解説はまだ終盤の章は更新されていませんが、実はこちらに全く同じような計算が載っています。
    https://www.amazon.co.jp/dp/462130156X/ref=nosim?tag=naohepth-22

  5. 統計力学 (岩波基礎物理シリーズ 新装版)
    表面吸着系について詳しいです。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4000299093/ref=nosim?tag=naohepth-22

  6. ボーズ・アインシュタイン凝縮 (物理学叢書 100)
    BECはこの本が最もわかりやすいと思います。
    https://www.amazon.co.jp/dp/484270327X/ref=nosim?tag=naohepth-22

  7. 理系大学院入試問題演習 1: 「工学」「理学」「理工学」「薬学」…研究科を目指す方必読! (I/O BOOKS)
    量子力学でも述べたように、統計力学は大学院入試問題から学ぶシリーズがありません。院試の過去問集はこの本くらいだと思います。問題のチョイスは良いし、解放も参考になります。
    誤植は多いのでそこはもう諦めましょう。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4777516954/ref=nosim?tag=naohepth-22

  8. 量子統計力学 ―マクロな現象を量子力学から理解するために― (フロー式 物理演習シリーズ 10)
    とても質の良い問題が集められています。量子統計が苦手な人はぜひ読んでみてください。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4320035097/ref=nosim?tag=naohepth-22

  9. 物質中の電場と磁場: 物性をより深く理解するために (フロー式物理演習シリーズ 13)
    電磁気でも紹介したやつです。磁性についても詳しいのでおすすめです。また、誘電体の統計力学の問題が載っているのは珍しいと思うので目を通しておくと良いと思います。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4320035127/ref=nosim?tag=naohepth-22

  10. 大学演習 熱学・統計力学〔修訂版〕
    統計力学の演習書として有名なやつです。
    とても難しい問題が混じっているため、全部はやる必要がないとは思いますが、過去問の類題は必ずやっておいた方が良いと思います。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4785380322/ref=nosim?tag=naohepth-22

5. 物理数学

物理数学は、微分積分、線形代数、微分方程式、複素解析、Fourier解析、Laplace解析、特殊関数などから出題されます。出題範囲が広いので、過去問で演習を積み、苦手な分野は参考書を使うといいと思います。
各分野のおすすめの参考書を載せておきます。

  1. 物理数学
    先に各分野が載っている

    1. 詳解物理応用数学演習
      この本は持っておいた方がいいかもしれません。
      各分野沢山の演習問題が用意されているので、この本が一冊あれば安心です。また、東工大では定期的に解析接続が出題されていますが、解析接続について詳しいのもとても助かりました。
      https://www.amazon.co.jp/dp/4320031423/ref=nosim?tag=naohepth-22

    2. 演習しよう物理数学: これでマスター! 学期末・大学院入試問題 (ライブラリ物理の演習しよう 5)
      東工大で出題されたHermite多項式のFourier変換の解法が乗っており参考になりました。
      https://www.amazon.co.jp/dp/4864810370/ref=nosim?tag=naohepth-22

  2. 微分積分
    Gaussの定理、Stokesの定理、Greenの定理あたりの計算も慣れておくと良いと思います。

    1. 微分積分 (大学院入試問題から学ぶシリーズ)
      極限と積分を入れ替えて良いかなどの話がまとめられていたので良かったです。Fourier解析なども載っています。
      https://www.amazon.co.jp/dp/4535786046/ref=nosim?tag=naohepth-22

  3. 線形代数

    1. 線型代数演習 (基礎数学 4)
      齋藤先生の有名な線型代数の演習書です。
      https://www.amazon.co.jp/dp/4130620258/ref=nosim?tag=naohepth-22

    2. 線形代数 (大学院入試問題から学ぶシリーズ)
      パフィアンの話が載っていて、東大相関基礎の過去問を解くときに役に立ちました。
      https://www.amazon.co.jp/dp/4535786038/ref=nosim?tag=naohepth-22

  4. 微分方程式
    微分方程式は過去問で解いたり物理の問題を解いたりで十分演習は積まれると思います。僕は特に参考書を見ませんでした。

  5. 複素解析
    複素解析の授業資料と、場の理論を勉強していた時のFeynman図の計算をしていたノートを主に参考にしていました。半円以外の経路でも横着せずに計算できるようになりましょう。

    1. 複素解析 NBS (日評ベーシック・シリーズ)
      教科書ですが演習問題も豊富で良かったです。
      https://www.amazon.co.jp/dp/4535806314/ref=nosim?tag=naohepth-22

  6. Fourier変換・Laplace変換

    1. フーリエ解析 工学基礎演習シリーズ 1
      演習問題が335問も用意されています。たまに使っていました。
      https://www.amazon.co.jp/dp/4627930100/ref=nosim?tag=naohepth-22

  7. 特殊関数
    主に過去問で出題された特殊関数は、Bessel関数、ガンマ関数、Hermite多項式、Legendre多項式などです。直行性の証明と母関数扱いには慣れておくと良いでしょう。

6. 物理学実験

実験は大学ごとに題目が違うため基本的には過去問をやり込むしかないです。
全て捨てて挑む人も沢山いますが、同じ問題が何度も聞かれていたりするので知識問題くらいはやっておくと点をコスパ良く拾えると思います。一応参考にした本も紹介しておきます。

  1. 物理学ミニマ
    学部の各分野をコンパクトにまとめてくれている本です。
    このタイプの本では珍しく実験についても載っていて、過去問に出てくるものと同じテーマの実験もいくつか載っているため参考にはなるかも知れません。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4815807744/ref=nosim?tag=naohepth-22

7. 総合問題

各分野の演習問題がまとめられているタイプの本も何冊かやりました。

  1. 過去問
    ここに並べるのは違うかなという気もしたのですが、バランス良く各分野の演習をできるのは結局過去問です。僕は東工大は20年分ほど解いた後、直近10年はさらに2周解き直しました。何度も解いて傾向の分析を必ずしましょう。

  2. 詳解と演習大学院入試問題〈物理学〉
    難易度の高い問題が集められた過去問集です。
    この本の問題はどれも良いのでぜひやりましょう。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4864810362/ref=nosim?tag=naohepth-22

  3. 解法と演習工学・理学系大学院入試問題[第2版]
    この本も問題は豊富ですが、誤植は多いです。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4864810559/ref=nosim?tag=naohepth-22

  4. 大学院生のための基礎物理学 (KS物理専門書)
    演習問題の質がとても高いです。過去問に飽きたらこの本の問題を解いていました。ただ、電磁気がCGS単位系で書かれているところには注意が必要です。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4061532774/ref=nosim?tag=naohepth-22

特に量子力学や統計力学は良い演習書が少なく、参考書探しに苦労したので因子を受ける学生の参考になったら幸いです。院試は大学受験の時よりも情報が少なくかなり苦しいですが頑張ってください。

良ければ投げ銭してください。僕が喜びます(記事の続きは特にありません。)。

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