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第一話 安全ピンの自分語り

私はとある高校の第一期生だった。高校まではチャリで1時間くらいかかる遠い学校だったけど新しい学校で部活が作りたかった、軽音学部を。しかもその学校デザイン課があった。

小6の頃から思っていたがスタジオ代は高い。当方ドラマーなもので家で少年ジャンプを組み上げて自作のドラムを作って叩いてみたものの相当な近所迷惑。
親父が拾ってきたギターを昔店(実家は居酒屋さんでした)で使ってたカラオケのスピーカーに直で突っ込み弾きまくるもののこれもまた近所迷惑。
あの頃俺はだいぶ世紀末な団地に住んでいた。

盛り上がっちゃうから静かになんか出来ない。なにせおれはめちゃくちゃパンクだった。あの頃1番パンクだった。
唇にも耳にも安全ピンをたくさんつけてたから近所の島村楽器の店員さんの間で安全ピンと呼ばれていたらしい。

今考えると見た目割と普通なのに髪立てて唇に安全ピンついてたらだいぶ変である。(安全ピンの話はまた今度)

話がそれたが一体どうすれば俺はドラムが好きなだけ叩けるようになるんや…。安全ピンの頭の中はそのことと、好きな女の子のことばかり。あ、あと革ジャンとマーチンが欲しい!

待てよ、もしかして学校に軽音学部さえあれば音出し放題なんじゃないんか!?!?
そう安全ピンは考えたわけです。

高校入学初日の自己紹介で軽音学部をつくりたいですと自己紹介し、先生に相談したところ20人部員を集めたら同好会として学校内での活動を認めようって言われましてね。

血走った目で軽音同好会やらないかと勧誘して回ると20人くらいはすぐに集まった。
開始15分くらいで集まった。
これは、もっとたくさん集めたら部活になるかも?安全ピンは調子に乗った。

それから一つ一つクラスを回って何名だったか忘れたけどかなりの人数を集めた。
100人くらいか?その倍以上集まった気もする。雪だるまみたいに部員が増えた。ほぼ幽霊部員なんだけれども。

しかしノートにクラスと名前を書いてもらって提出。部員の名簿というよりは署名みたいなノートでもかなり驚かれてましてね。
活動を認めてくれはしたものの高校の合併で第一期生にありがちな旧校舎スタートだったので新しい部屋なし、顧問になってくれた英語の先生の資料室を部室としてつかわせてもらうことになった。

古い校舎、洋書がぎっしり詰まった古い木の本棚に囲まれて、本棚で窓も潰してある。
あとは大きい皮のソファが一つだけの部屋だった。3階の教室とは反対側の1番奥。
だーれも来ない。
最高の秘密基地が爆誕した。

安全ピンは念願の音出し放題バンドマンになったのだ。

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