キャッシュレス社会
「幸せ」のために手を取り合う
デンマークで暮らし始めて現金を全く使っていないことに3カ月目で気がついた。一番の要因は「モバイルペイ」に尽きる。銀行口座と電話番号が紐づいた、スマートフォン用の送受金アプリだ。
健常者と障害を持つ生徒が共に暮らして学ぶ、エグモントホイスコーレに入学して最初のパーティーに参加した時のこと。若者2人が目の前でこんなやり取りをした。
「タバコ1箱もらえない?」「ありがとう」と1人から受け取り、スマホを取り出し、モバイルペイのアプリからタバコの代金だけ彼に直接送金したのだ。
わずか10秒ほどの出来事に衝撃が走った。
そこから、学校内、街中、公共施設、様々な場所で使えることが見えてきた。支払いは、モバイルペイのみのカフェも。フリーマーケットも、田舎町にある、家の前に自作の野菜を販売するための小屋でも。
さらに驚いたのは高齢の方でもスマホを使いこなしてモバイルペイをしているのだ。
「キャッシュを持っている方が不安」と言う。
なぜこんなにもキャッシュレス決済が浸透しているのだろうか。
その答えは送受金アプリが1つしかないという点が大きい。
更に、銀行と直接繋がっているので、チャージするという概念もない。国もバックアップして1つにまとめているのだ。
理由はシンプルで、使う側が一番使いやすいから。国も企業もユーザーにとって使いやすいものを作ることが共通認識にあり「協力」する。
競争により、ユーザーが疑問や疲れを感じるのではなく、利益というより「幸せ」のために手を取り合うことが、最大の利益に繋がっている。
それがこれからの社会が発展していく上でのカギになると思っている。
(尚工藝代表・宮田尚幸)
2019年11月8日(金)発刊 シルバー新報より転載
フリーマーケットでケトルを購入。もちろんモバイルペイで
フリーマーケットが行われている施設にあるカフェ。ビュッフェ形式で自由に食事を楽しむことができる。
なにかのヒントになっていたら幸いです。