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2つの視点
取材の帰り、電車に揺られながら周りに目をやると、学校帰りらしい高校生たちがちらほらと。
以前までなら、その姿に過去の自分を重ねた。わたしも高校生だった頃があるんだよねえ。ああやって友達とバカ笑いばっかりしてたなあ。そうそう、恋バナで盛り上がったりね。まあわたしの相手は暴力野郎だったけど……。とか、なんとか。
最近では、それに加えてもう1つの視点が加わった。「息子or娘も、あと数年したらあんなふうになるのかな」という、母の視点だ。
同じ人を見ているのに、自分と重ねたり子どもと重ねたり。過去を見たり未来を見たり。なんだか変な感じだな、と思う。
子どもの頃見ていた大人は、大人という生き物でしかなかった。母は母でしかなく、父は父でしかない。けれど実際は、母にも少女の時代があり、大人になっても母親になっても、少女みたいな心があったのだろう。今同じような立場になって、同じくらいの年齢になって、はじめて見えてくるものはたくさんある。
子どもと大人なんて区別されて呼ばれるけれど、実際にはシームレスで、2者の間に継ぎ目や境界線はない。感覚としては、グラデーションのようなものなのかなあ。
そんなことを考えながら、家路につく。仕事をするわたしから、子どもの帰りを待つ母に。少しずつ、気持ちを切り替えながら。