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ココロすこやか
「今夜、出かけてきていい?」
夫から連絡が入る。どうぞどうぞ、と二つ返事で答えながら、じゃあ夜のご飯は子ども達と外で済ませようか。それとも、明日は土曜日だし夜遊びに出かけてもいいかもしれない。なんて考えを巡らせる。
ずいぶん変わったものだ、と感じる。わたし自身のことだ。結婚前、わたしはとても不安定で、恋人と常に一緒にいなければ耐えられないような女であった。「出かけてくる」と言われれば了承したけれど、寂しくて寂しくてたまらなかったし、出かけていく彼の腕を引っ張って泣いたこともある。置いていかれたひとりきりの部屋はがらんと寒くて、まるで世界中でひとりぼっちになったような気持ちだった。
いま思えばあれは、ちょっとおかしかったんだろうなあ。「家族がほしい」と渇望していたわたしは、自分でも気づかずに心の奥底に大きな寂しさを住まわせていて、ひとりきりになるとそれが大きくなって心を蝕んでいたのだと。
それが、なくなった。結婚して子どもが生まれて、ずっと望んでいた家族ができて。いつも不安定だった心が満たされ、安定を取り戻した。
もしここに子どもがいなくて、わたしひとりだったら?そうしたら、少しは寂しいかもしれない。けど、それはそれなりにのんびりできるだろう。わたしはひとりの時間が好きだし。ちゃんとそう思えるようになったのは、心がこんなにも健やかになったからだろうな。