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成仏しろよ。
15年越しの供養みたい。と思った。
15年前、わたしは通っていた大学を退学した。理由はまあいろいろとあったけれど、ざっくり言えば当時つき合っていた人から望まれたためだった。
当時その人から殴られたり蹴られたり、ほかいろいろな種類の暴力を受けて、まさにボロ雑巾みたいになっていたわたし。「大学を辞めて、男について行くなんて!」と、残り少なかった理性が警鐘を鳴らしたけれど、結果的に抗うことはできなかった。
後になって、同じ経験を持つ人からこう言われた。「そのとき、一番殴られない選択をしたんだよね」
そう。まさにそうだったんだ。
先のことなんか一つも見えなかった。自分の未来はこの人に縛られていて、この先一生、何の楽しみも喜びもなく死んでいくんだと本気で絶望していた。
運良くその男とは別れることができたけれど、大学を辞め、ピカピカの新社会人にはまんまとなり損ねた。それが、何年経っても悲しくて、悔しかった。
ピカピカの新社会人には、もうどう逆立ちしてもなれない。けど、大学に通って、卒業するのは、頑張ればどうにかなるかもしれない。と思って、ひとまず通っていた大学から、取得した単位数の証明書をもらうことにした。
辞めてから、初めて大学に連絡した。あんまり思い出もない大学生活だったけれど、それでも、書類を書きながら記憶が蘇ってきた。
3、4年生でラクをしたいから、という理由で、取れるだけ授業を取った1、2年生。パソコンを持ってなくて、大学の貸出してくれるパソコンを使って仕上げたレポート。
わたしは、そこそこ真面目だったんだ。そこそこ頑張って試験だって受けたし、もっと大学生活を楽しみたかった。
あの時間は戻ってこない。でも、せめて、「大学中退」という結果だけでもひっくり返せば、せめてもの供養になるんじゃないのかな。ボロ雑巾みたいになりながら、大学を辞めざるをえなかった自分の。
浮かばれない地縛霊みたいな気持ちが、ずっとずっと胸の奥に居座ってる。そろそろ成仏しろよ。