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思ってるより、世界は広い

「世の中には、こんなにもいろんな人がいるものなのか」

良くない方の意味でそう感じたのは、コールセンターで働き始めたときだった。同期で仲良しだった女の子もまったく同じことを言っていたから、これはわたしだけが感じたわけじゃない。

自分にとって「これが普通でしょ」と感じることは、誰かにとっては普通でなく、まったく通じないのだということ。それがたとえ、同じ日本語を話す人でも。

毎日用もなく電話をかけてくる人、ただただ電話口で罵りたいだけの人、女の子から名前を聞き出して卑猥な想像をする人……本当に、いろんな人がいて。正直、心底うんざりしていた。

けれど世界の広さ、誰かの常識は他の誰かの非常識という感覚は、ポジティブな面も持っている。なんとなくの「これが普通でしょ」に、無理に合わせる必要なんかないって思わせてくれる。パワーがある。

わたし自身は、ずいぶん「普通」に縛られてきた。普通でいられる自分にホッとしたり、普通でいられない自分にガッカリしたり。そもそも普通って、なんだったのかは知らないけれど。

万人にとっての「普通」なんてないんだよ。いろんな考えがあり、いろんな人がいる。きみ達が、そしてきっとわたしが思うより、世界はずっと広いんだ。

子どもに教えられることなんて何もない親だけれど、そういうことだけは伝えておきたい。たとえいま、子どもにはさっぱり意味がわからなくても。大きくなってつまずいたときに「そういえば…」と、思い出してくれるかもしれないから。

道は一本ではないし、居場所は一箇所じゃない。生きてさえいれば、いつかどこかにはたどり着けるのだから。

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