ありのままでいいじゃない
「ありのまま」という言葉が、けっこう好きだ。無条件の肯定、掛け値無しの愛情、そんな懐の広さみたいなのを感じるからかな。もちろん、「ありのまま」が「自分勝手」になってはいけないけれど。
わたしがこの言葉を好きなのは、はるか昔高校生だった頃、定年退職で学校を去る先生からもらった言葉に感銘を受けたから。先生は、「ありのままを愛してくれる人を見つけなさい」と言った。その言葉が、今もずっと心に残っている。
その当時、わたしには恋人がいたけれど、ちっともありのままなんかじゃいられなかった。彼は自分の気に入らないことがあればすぐに大声を出したり手を上げたりする人で、わたしは彼の機嫌を損ねないことにばかり神経をすり減らした。悲しくても笑い、悔しくても笑い、はらわたが煮えくり返っても笑った。そんなわたしにとって、「ありのまま」は魔法の言葉のようだった。
実は、高校生だった頃が遠い思い出に変わっても、自分のありのままはよくわからない。どんな姿でいればいいのか、わからないのだ。時に「ダメなやつだなあ」と思うこともあれば、「けっこう頑張ってるじゃん」と思うこともある。いわゆる自己肯定感は低めだが、それでいて自分のことはけっこう好きだったりする。要は、根っこでは「ダメなとこもあるけど、べつにいいじゃん、それで」と思っているフシがあるのだ。
人によっては、「その甘さがダメなんでしょ!」とお怒りになるかもしれない。うん、そうかもしれないけど、でもいいじゃない?ありのままで。先生も、そう言ってたし。