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はずかしい泣き虫

たぶん昔から、人より少しだけ感じやすい子だった。……かもしれない。

よく泣く子だった。うれしかったり、悲しかったり、悔しかったり、びっくりしたり、不安だったり。感情がたかぶると自然に涙が出てきてしまって、自分でもよく困ったものだ。

小学校低学年だった頃、夏休みのプールが悪天候で中止になった。朝はみんなで集合して、小雨が降るなかで「プール、あるかなぁ」「でも、どうせ濡れるんだし、これくらい平気じゃない?」なんて言いながら、学校へ向かった。でも、プールは中止だった。学校までみんなでぞろぞろと歩いて行ったのに、無情にも「今日はプールには入れません」と言われ、そこで終わり。みんな散り散りに帰っていった。

わたしはしくしくと泣いた。そんなにプールが好きだったのか?と言われれば、どうだろう。嫌いではなかったけど、そこまでプール好きなわけでもなかった。ただ「プール、入れるよね!」とみんなで言い合いながら歩いたあの時間が、あの期待に満ちていたわたし達が、いとも簡単に、ばっさりと切り捨てられたようで悲しかったんだ。

泣いたわたしに、母はあきれたように笑った。「なに泣いてるの。それくらいで、変だよ。他の誰も泣いてないじゃない。おかしい」

そのときからだったか。人前で泣くのを、はずかしいと思うようになった。他の誰も泣かないようなことで泣くのは、おかしなこと。みんなと一緒になって泣くのは、おかしくないこと。わたしだけが泣いているのは、変なのだ、と。

今でも、人に見せられる涙と見せられない涙がある。本当は何かある度に、すぐに泣きそうになるけれど、それははずかしいことなので、唇を噛んでぐっと我慢することにしている。

見せられない涙ほど、本当は誰かに見てほしいのだと思う。でも見せられないから、一人で泣くしかないから、たぶんわたしは寂しいのでしょう。


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