ぱっと消えてしまえたら
リセットボタンを押すように、存在ごと、ぱっと。
ふとそんなことを思うことが、稀にある。以前、人間関係がアレだった職場に勤めていたときにはもう少し頻繁にあったけれど。最近は、あんまりなくなっていた。
ポジティブとネガティブが同居している。
前を向けば足が後ろを向いている。
気にしても仕方ないじゃん、と口では言いつつも、頭の中はぐるぐるし続けている。
誰にだってあるだろう。べつに、自分が特別だとは思わない。打たれ弱いが、一晩寝ればまあまあのことは忘れられる。そういう意味では、そこまでメンタルが弱いわけでもない。たぶん。
ただ、何かにつけて思うのだ。わたしは、生物としてとても弱い。いや、この表現はちょっと変かな。人間という生物としては、ほかの動物に比べればみんな等しく弱いだろう。
そうじゃない。わたしたちが仮に弱肉強食(物理的な意味で)の世界で生きていたら、わたしはきっと、真っ先に食べられてしまう側なんだろうな、と思うんだ。
でも、たとえ食べられてしまうとしても、何もしないでいるのは嫌で。だからまあ、弱いなりにいろいろと足掻いてみる。足掻いてみるけれど、時々弱ると「やっぱり、ダメじゃん」が顔を出す。
これはもう、どうしようもない。この歳になって、今さら性格や考え方や、そんな内面的なものが劇的に変わろうはずもない。それもわかってる。だって、40年間ずっとこんな調子なんだから。自分のことですし。
「ああ、もうダメ。なんでわたしって、こんなにも何もかもが下手くそなの。みんなみたいに、上手にできないの」
こう思った日は、本当に消えてしまいたくなる。「みんな」にだって、きっといろいろあるだろうことはわかってる。わかってるけど、そんなもん知ったこっちゃねえ。……と、思ってしまう日もあるのです。
あきらめるのは、簡単なんだけどね。もうジタバタするのはやめます。どーぞ、食べてくださいと。大口を開けたライオンか何かの前で棒立ちでもしてれば、それきり、余計なことを考えることもなくなるでしょう。でもなんか、それも嫌だよね。って言ってくる自分もいて。
あきらめたら、そこで試合終了ですよ。
わたしの心の中で、安西先生がささやく。うん……そうですね。わかりました。もう少しあきらめずに頑張ります。いつもそう返す。心の中の安西先生に。直接お会いしたことはないですが。
ところで、最近の若い人にはリセットボタンって通じないかもしれないな。リセットボタンがついていたゲーム機って、何までだったっけ。