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色彩検定UC級:第5章 高齢者の見え方
5-1.加齢による見え方の変化
<高齢者と生理機能の関係>
20~24歳の心身機能を100とすると、
55~59歳は、視覚・聴覚などの「感覚機能と平衡機能」が顕著に衰え、中でも明暗の順応は35程度にまで低下する
<加齢による視機能への影響>
水晶体の硬化
水晶体の透過率の低下
焦点調節機能の低下
瞳孔径の縮小
網膜感度の低下
視神経の減少
↓
視力の低下
老眼
色を見分ける感度の低下
皮膚のたるみ、筋肉のゆるみ → 瞼が下がる → 視野が狭まる
<眼球光学系の変化>
角膜、前房、水晶体、硝子体の透明性が低下
↓
まぶしさ(グレア)を感じることもある
1.水晶体の加齢変化
・水晶体透過率の変化
網膜に届く光の量が減少し視力の低下、網膜像の質の低下、光の散乱が起こる。特に短波長領域の青い色が暗くなる
・調節力の低下による視力の低下
水晶体自身の弾力性が低下し、焦点合わせが円滑にできなくなる。視力の低下、近くの物が見えにくいという老眼を引き起こす。
動体視力の低下:加齢による変化は、静止視力よりも著しい
2.瞳孔径の加齢変化・・・老人性縮瞳
虹彩は、網膜に届く光の量をコントロールするはたらきを担っている。
瞳孔径の拡大縮小の幅が、高齢者は小さいため適応しづらくなる
加齢に伴い、瞳孔径が大きく広がらなくなり、取り込む光の量が減少し、暗い環境では物が見えにくくなる
3.順応時間
網膜に届く光の量は、20歳の人を基準にすると、50歳では約50%、60歳では約66%も減少するといわれいてる
急激な明暗の変化に対応できない
<加齢にともなう目の各器官の変化>
・角膜:黄化や細胞密度の低下:散乱光の割合増
・前房:前房水中にフレアと呼ばれる浮遊物増加:透明性が徐々に薄れる
・水晶体:タンパク質の分子量増加により散乱光の割合が高くなる:グレアが生じる(さらにその粒子が多くなると白内障になる。その過程で水晶体は黄変する)
・硝子体:加齢により水溶化し、空洞が生じ、しわが寄り、網膜との付着部がはがれる
5-2.高齢者の見え方の特徴
水晶体の黄変や白濁により、各波長に対する透過率の低下、特に短波長領域の透過率低下が顕著に生じる。また、網膜の中心部(黄斑部)にある錐体細胞中の色素量が、加齢に伴って減少することも報告されている。これにより高齢者は色の弁別能力が低くなったり、色自体の見え方が若齢者と異なってくる
<色の弁別機能>
「100hue test」(100色相配列検査器を使い、特定の色と色の間を順に並べるテスト)
加齢により低下するが、その低下度合は個人差が大きい。色相の中でも赤紫系と青緑系は加齢による色彩弁別能力の低下が著しい
<加齢とまぶしさ感>
<作業をする上で必要となるコントラスト>
高いコントラストは必要だが、明るい光を用いることは避ける
まぶしいほどの明るい光は、高齢者にとってはマイナスの効果をもたらす
5-3.加齢にともなう眼疾患者の色の見え
1.老人性白内障
60歳代 60~70%
70歳代 90%
80歳代 100%近くに及ぶ
水晶体の中心で白濁が進むと霧がかかったように見えたり(霧視)、物が二重に見えたりする(未熟白内障)
水晶体全体が白濁すると、明暗を感じるのみとなる(成熟白内障)
光が散乱するため明所ではまぶしさを感じる
表示が読みにくくなる
色の識別も困難になる
2.緑内障
40歳以上の3.5%が発症
視野異常(中心から30度以内に出現することが多い)
視野欠損(部分的に視野が欠ける)
視野狭窄(全体的に視野が狭くなる)
霧視
視力低下
視野欠損が生じると実線と点線の区別などがつきにくくなる
3.加齢性黄斑変性
加齢により網膜の中心にある黄斑に障害が生じ、視野の中心が見えにくくなる
50歳を超えると増え始める
中心暗点(視野の中心部が見えにくくなる)
変視症(ものが曲がったり歪んだりして見える)
失明原因となる
5-4.高齢者がわかりにく事例
表示された画像が単純で、鮮明なほど見やすく、読みやすいという傾向がある
2003年JISZ8071「高齢者障害者配慮設計指針」
<高齢者への視覚に関する配慮すべき対象物>
・手で触れる可能性のある鋭い角、縁
・スリップ、つまずき、衝突、転落など、またはケガの危険につながるような同一面上の段差、障害物または突起物
・むき出しの火及び炎
・腐食物
・避難誘導システム
・色でしかわからない、または背景と文字のコントラストが低い警告表示
その他
・飲み薬の色の区別
・黒いてんぷら鍋にどれだけ油を入れたかわかりにくい
・青色の標識が黒に見えて目立たない
・道路の凹凸がわかりにくい(立体感、奥行き感が減少)
共用品推進機構「高齢者の家庭内での不便さ調査報告書」
・文字や表示が小さすぎて見えない
・解説書が読みにくい
・コンロの火がちゃんとついたかどうか不安
・階段の段の区切りがわかりにくい
5-5.高齢者やロービジョンへの配慮
重要な情報を伝えやすくするための配慮(さまざまな視覚特性を持つすべての方に有効)
・照明の明るさや位置を適切にする
・表示の大きさや背景とのコントラストなどを適切にする
・文字は使用状況に適した書体、配置、太さとする
・色分けに頼りすぎず、形や質感の違いなども用いる
・視覚情報以外の、聴覚、触覚なども活用する
・段差や危険な場所には、床面に色つきの標識を置く
・階段、ホーム、横断歩道には触覚式の床標識を置く
(JISZ8071より加筆修正)