本村伸子議員(共産)2024年4月10日衆議院法務委員会
本日の本村議員の質疑を書き起こしました。
本村議員
日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。今日も資料を出させていただきました。
一般社団法人 日本乳幼児精神保健学会、「離婚後の子どもの養育の在り方についての声明」ということで、人格の土台を作る乳幼児期の重要性を踏まえてということで、2022年6月に出された声明です。
これに基づいてまず質問をさせていただきたいと思います。それで5ページ目を見ていただきたいんですけれども、専門家による子どもの意思の聴取の必要性ということで書かれております。
そこには、読み上げさせていただきますけれども、
「DV事案(面前DV)の場合、子どもが暴力を目撃しているうちに、母親に対する父親の歪んだ見方に同化したり、虐待を受ける環境で生き抜くための心理的背景から、虐待を否認することがある。すなわち、権力と支配による支配・非支配の関係は、子どもの意思形成過程と意思表明に大きな影響を及ぼす場合がある。故に、DV虐待過程に育った子どもの複雑な心理を理解するためには高い専門性が求められるというべきである。
また、子どもの意思を確認するためには、言葉だけに頼るのではなく、情緒・行動・身体も入れた柔軟な子どもの全体像の受け止めや理解も必要である。面会交流が試行的に行われる場合などは、面会交流の場面だけではなく、その前後の時期における生活や身体に現れた影響を観察する必要もある。
よって、DVや虐待の疑いがある事案で、加害親と主張される親との面会交流はDVや虐待の被害者支援の経験を有する児童精神科医や児童心理師等の専門家による子どもの意思の確認を司法の判断に先行させるべきである。」
というふうに書かれております。
これも先日求めさせていただいておりますけれども、しかし、私は納得できる答弁がなく、繰り返し行わせていただいております。
もう一度お伺いしたいと思いますが、専門性のある方から子どもたちの意思・心情の聴取を必ず行うようにしていただきたいと考えますが、見解を法務大臣と最高裁にお伺いしたいと思います。
最高裁家庭局長
お尋ねは、いかなる法的手続を想定したものであるかは必ずしも明らかではありませんが、家事事件手続法65条におきまして、「家庭裁判所は、未成年の子がその結果により影響を受ける事件において、子の利益に配慮した解決を図るために、適切な方法により子の意思を把握するように努めるもの」とされておりますところ、裁判官または調停委員会において、その事案に応じた適切な方法により子の意思を把握し、審理運営に当たっているものと承知しております。
その上で、調停委員会等が子をめぐる紛争の有無や内容、子の状況、その他の事情を踏まえ、子の意思や心情を把握するために行動科学の専門的知見や技法を有する家庭裁判所調査官の関与が必要であると判断した場合には、家庭裁判所調査官が最新の心理学、社会学、社会福祉学、教育学等の行動科学の専門的知見や技法を活用し、子の意思及び心情を把握するための調査を行っているところでございます。
法務省民事局長
個々の事件における専門家の関与のあり方等につきましては、家庭裁判所において適切に判断されるべき事項でありますため、法務省として具体的にコメントすることは差し控えたいのですが、一般論として申し上げれば、家庭裁判所においては子の利益を確保する観点から、適切な審理が行われることが期待されるところでございます。
本村議員
調査官を抜本的に大幅に増やして、専門性をさらにブラッシュアップしていただくということは非常に重要だというふうに考えておりますけれども、この資料の今度は3ページ見ていただきたいのですけれども、3ページから4ページ、子どもには意思があるという部分です。
「子どもの意思は、別居親を拒否するものである場合にも、その子自身の実体験に基づく意思として尊重されるべきである」、というふうに書かれております。
そこには、「現在の家庭裁判所の実務では、子どもが別居親を拒否すると根掘り葉掘り拒否の理由を尋ねたり、「どういう条件であれば会ってもよいか」というような聞き方で直接の面会交流が実施されるように誘導し、あるいは子どもが別居親を拒否するのは同居親の擦り込みであると評価して、子どもの意思を尊重しないという扱いが見られる。しかし、子どもの意思を反対方向に誘導するやり方は子どもの意思を拒否することに等しい。
面会交流を拒否する場合でも、そのほとんどは子どもの主体的な意思に基づいており、子どもなりの理由や根拠がある。例えば、別居親が忘却していても、子どもには同居中に別居親が威圧的だった記憶が焼きつき、そこで自分の主体性を奪われ、自尊心を損なってきたという心の傷を抱えている場合がある。そのような心の傷は会いたくないというその子なりの意思表明を否定され、面会を強いられることで一層深まる。
その結果、別居親との良い関係は始まらず、親子関係の改善が困難になるだけではなく、大人不審・社会不審を募らせるリスクも持つ。子どもの意思を否定して子どもの福祉は図れない」
というふうに書かれております。こういう実態があるというご指摘については、家庭裁判所家庭局長、どういうふうに受け止めておられますでしょうか。
最高裁家庭局長
様々な指摘がされるところについては真摯に受け止めたいと思っております。
その上で、子が別居親との交流について示す意向や感情は、肯定や拒否といった二者択一的で明確なものではありません。
複雑なものである場合が少なくないところでございまして、家庭裁判所としては拒否的な面を含め、その真意を慎重に分析し、これを通じて把握した子の意思を十分に考慮して交流をするかどうか、またするとした場合のその方法や内容を含む親子交流のあり方について検討しているものと承知しているところでございます。
本村議員
それでは今度は8ページですけれども、
「臨床の現場では、家庭裁判所で面会交流を決められた子どもたちが、面会交流を嫌悪し、面会をめぐる別居親との紛争にさらされ、あるいは過去のトラウマから回復が進まず、全身で苦痛を訴え不適応を起こして健康な発達を害されている事例が増えている」というふうに書かれています。
この増えているという状況を改善していくために、どういうふうにしていくつもりなのか、これは法務大臣、責任があると思います。
法務大臣そして最高裁、お答えをいただきたいと思います
小泉法務大臣
親子交流の実施にあたっては、その子どもの安全・安心を確保すること、これは極めて重要であると思います。
ただし、個別の事案において親子交流を実施するかどうか、またどういう形でそれを行うか、これはそれぞれの事案における具体的な事情を踏まえて、家庭裁判所において適切に判断されるべき事項であるため、法務大臣として具体的なコメントをすることは差し控えたいと思います。
また、裁判所において適切な審議が行われるよう期待をしております。ただ、今後引き続き裁判所において適切な審議が行われるよう、そういう対応がなされるよう、法務省としても国会におけるこういうご審議で指摘された事項については、裁判所と適切に共有することも含め、裁判所の取組に協力をしてまいりたいと思います。
最高裁家庭局長
親子交流により子の健全な成長に悪影響が生ずる事態を避けるべきであるということは委員ご指摘のとおりであると考えております。
例えば、親子交流により同居親の心身の安全・安心が脅かされる場合には、同居親と長い時間を共にする子にとっても否定的な影響が大きく、同居親の安全・安心を確保することは、子の安全・安心を図る上で重要であるものと認識しております。
またDVが問題となっている場合には、子が父母の争いに晒され続けたり、別居親により再度トラウマを受けたりする可能性があること等から、親子交流が子に及ぼす潜在的なリスクがあるものと認識しております。各家庭裁判所においても、このような認識を踏まえて必要な事案で、家庭裁判所調査官が行動科学の専門的知見や技法を活用して調査をする等、親子交流が子に与える影響について十分に検討されているものと承知しております。
最高裁においても引き続き、子の安全・安心を最優先にして、子の利益を適切に考慮した事件の解決が図られるよう各家庭裁判所の取組を支援してまいりたいと考えているところでございます。
本村議員
各裁判所で統一した何かがあるわけではないというふうなお答えだったと思うのですけれども、日本乳幼児精神保健学会をはじめ、専門性のあるDV虐待事案を取り扱ったことのある児童精神科医や児童心理師等の皆様も寄せて、子どもの意思・心情の確認の方法や判断への反映の方法も、今一度検討し直して、健康を害するようなものが増えているという、子どもたちに害が増えているということだと思いますけれども、そこら辺を見直していただきたいと思いますけれども、最高裁お願いしたいと思います。
最高裁家庭局長
子の利益に適う親子交流のあり方につきましては、様々な立場からの様々なご意見があるものと承知しております。
家庭裁判所においては、研修等の機会を通じて、国内及び海外の最新の知見を取り入れて、子の安全・安心を最優先にした親子交流の解決が図られるよう努めているものと認識しておりますが、最高裁といたしましても、引き続き、子の利益を適切に考慮した事件の解決が図られるよう、各家庭裁判所の取組を支援してまいりたいと考えます。
本村議員
今の現状が改善されるのかが大変不安なわけでございます。その点も改善することが大前提であるというふうに思います。
次に、リーガル・アビューズと言われるような状況について質問させていただきたいと思います。参考人質疑でも、DV被害を受けて逃げておられる斉藤参考人からもご指摘がありました。その時に斉藤さんは、「このまま共同親権になると本当に人権侵害になると思います。子どもの利益である子どもの安心や安全が損なわれることがとても心配です」というふうに言われ、そして、「実際に6年間の間に16個の裁判が起こされた人がいます。裁判官を訴えたり、診断書を書いた医師を訴えたりすることも珍しくありません。
自分自身が訴えられることはもちろん苦痛ですが、助けてくれた人が訴えられることは、そのうち誰も助けてくれなくなるのではないかと思うと、絶望的に苦しい思いをされている」ということを表明をされておられました。
また岡村参考人も、「DV被害者に対して誘拐罪での刑事告訴、民事裁判、被害者側の弁護士に対する懲戒請求、SNS等での発信、写真や個人情報の公開など、加害行為が別居後にも終わらず、むしろ復讐にも近い形でエスカレートするケースが増えています」と、こういう実態についてどういうふうに把握をしているのか、法務大臣お答えをいただきたいと思います。
法務省民事局長
法制審議会での議論の過程におきましては、各委員や参考人からDV加害者が元配偶者やその代理人弁護士に対して様々な形で攻撃的な言動を繰り返す事例の紹介がございまして、それを踏まえた議論が行われたところでございます。
4月3日の参考人質疑、私も拝聴いたしましたが、実際に様々なDVを受けられた経験を有する参考人や、そのような方々の代理人の弁護士である参考人のお声もお聞きすることができたものと受け止めておるところでございます。身体的暴力あるいは精神的暴力あるいは性的暴力を含むあらゆるDVは、被害者に深刻な精神的苦痛や肉体的苦痛をもたらすとともに、その尊厳を傷つけるものでありまして、決してあってはならないものと認識をしているところでございます。
本改正案におきましては、父母相互間の人格尊重義務や協力義務の規定を新設しているところでございますが、ご指摘のような行為も、事案によりましてはこの義務に違反することがあり得ると考えているところでございます。
本村議員
今、協力義務の話がありましたけれども、今回の法案を施行するということになれば、例えば情報提供義務違反とか、協議協力義務違反とか、そういうことで訴えられるという可能性はないでしょうか。局長お願いしたいと思います。
法務省民事局長
一般論としてお答えを申し上げますと、先ほど申し上げましたような、夫婦相互の人格尊重義務ですとか、あるいは協力義務に何かの行為が違反するとして訴訟が提起される恐れというのは、それはあり得るところかとは思います。
ただ、現行法の下でもそのような、そのようなと申しますか、訴えの提起が乱用的にされたような場合でございますね、自分の主張が全く根拠がない、法的に根拠がないということを知りながら、あえて訴えを提起したような場合には、不法行為に該当するというような案でもございますので、そのような対処が可能かと考えているところでございます。
本村議員
また訴えられる要素が増えてしまうのではないかということも、また大きな懸念の一つでございます。
しっかりとした対策を取らなければDV被害者を守る弁護士がいなくなってしまうのではないかと斉藤参考人が言われましたように、誰もそのうち助けてくれる人がいなくなるのではないか。こういう状況は絶対に作ってはならないと考えますけれども、これは大臣お答えをいただきたいと思います。
小泉法務大臣
今回、子どもの利益を中心に考える、そして夫婦相互の尊重義務、また子どもの尊厳を守る、こういう条文を入れました。
これに違反する場合には義務違反ということになりますが、そのことを我々がしっかりと周知をしていく、社会全般に対して、まずそれが必要なことだというふうに思います。それがそういった行為を抑止する効果を用いるというふうにも考えます。その上で、施行後の状況を丁寧に注視をして必要な対応があれば検討していきたいと思います。
本村議員
ぜひDV被害者支援を行っている弁護士の実態調査を行っていただきたいと思います。
その弁護士自身も心身への影響がございますし、経済的な持ち出しもかなり多いわけですので、その点もしっかりと実態調査をしていただきたいというふうに思いますけれども、そうした被害のリーガルアビューズと言われるようなそういう被害の実態を調査し、対策をぜひ検討していただきたいと思いますけれども、法務大臣お願いしたいと思います。
小泉法務大臣
そういう状況におられる弁護士の方々の実情を、法務省としてお伺いする機会、これは必要だというふうに思います。
本村議員
いつも網羅的には把握していないとおっしゃることも多いわけですけれども、網羅的にしっかりと調査をして対策が打てるようにしていただきたいと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。
小泉法務大臣
それはまず代表的な方々のお声を聞いて、その状況をしっかり把握させていただいてから検討したいと思います。
本村議員
ぜひお願いしたいと思います。
法案によって、ポストスパレーション・アビューズのきっかけを無限に加害者に作ってしまうのではないかという懸念に対して、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の別に対策をどう考えているのか、そして急迫の事情の判断でも十分配慮されるべきだというふうに考えますけれども、見解を伺いたいと思います。
法務省民事局長
本改正案におきまして、離婚後の父母双方を親権者とすることができることとしておりますのは、離婚後の父母双方が適切な形で子の養育に関わり、その責任を果たすことを可能とすることで、子の利益を確保しようとするものでございます。
また本改正案では、父母間の人格尊重義務や協力義務の規定を新設するとともに、親権は子の利益のために行使しなければならないことを明らかにしているものでございます。そのため、離婚後の父母双方が親権者となった場合におきましても、別居の親権者が同居親による養育に対して違法・不当な行為をすることを許容するものではございません。こうした本改正の趣旨が正しく理解されるよう適切かつ十分な周知に努めてまいりたいと考えております。
委員お尋ねの協議離婚、調停離婚、裁判離婚の場合でございますが、まず協議離婚につきましては、協議離婚の際に委員ご指摘のようなDVなどを背景とする不適切な形での合意によって親権者の定めがされた場合には、子にとって不利益となる恐れがありますので、それを是正する必要がございます。
そこで、本改正案では、家庭裁判所の手続による親権者の変更を可能とするとともに、その際に家庭裁判所が父母の協議の経過、その他の事情を考慮すべきことを明確化することとしております。
調停離婚、協議離婚につきましては、裁判所は必ず父母の一方を親権者と定めなければならない場合の例として、虐待の恐れがあると認められるときと、DV被害を受ける恐れ等の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときを挙げております。
従いまして、子への虐待の恐れ、あるいはDV被害を受ける恐れがある場合には、父母双方が親権者と定められることはないと考えております。
本村議員
ぜひ子どもとDV被害者を守っていただきたいと思います。
続きまして今結婚している方も、そして離婚をした後に共同親権になった方、この法案の場合についてお伺いしたいと思います。
資料で出させていただいております。
これは「親権概念の整理等」ということで法制審の家族法制部会に出されたものですけれども、ここの中に親権に起因するものということで書かれているわけですけれども、これでお伺いをしたいと思います。表で色々まとめられてわかりやすいと思いますので。
そこで、3ページのところから進みたいと思いますけれども、「教育に関する場面の例」ということで、子どもにどのような習い事をさせるのか、幼稚園や学校の選択、就職か進学かの選択、宗教に関わること、子にどのような宗教を教育するのか、宗教学校への進学、この点も、これは日常的なものなんだ、日常の行為ということで考えられるのか、という点まずお伺いをしたいと思います。
法務省民事局長
まず前提でございますが、委員が今回参考資料としてご提出になりました資料でございますが、これは法制審議会への諮問前に行われた研究会がございまして、そこでの議論のたたき台とする目的でされたものになっております。したがって、本改正案自体の説明をするものではないということをご理解いただきたいと思います。
その上で、委員お尋ねのところが、主に日常の行為にあたるかというところかと思います。監護及び教育に関する日常の行為とは、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないというものを指しております。
その上で、委員ご指摘の参考資料に記載されたもののうち、日常の行為に該当するものの例としてお示しをいたしますと、例えばある日子どもにどのような服装をさせるかや子にどのような習い事をさせるか、あるいは風邪の診療等日常的な医療行為等のように、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないものは日常行為に該当するものと考えております。
他方で、委員ご指摘の参考資料に記載されたもののうち、日常の行為に該当しないものの例をお示しいたしますと、例えば幼稚園や学校の選択や進学か就職かの選択、進学か就職かの選択、生命に関わる医療行為、子の妊娠中絶、子の住居の決定、長期間勤務する会社への就職の許可等のように、子に対して重大な影響を与えうるものについては日常の行為に該当するとは言えないと考えております。
本村議員
例えば、宗教に関しては子にどのような宗教を教育するのか、そして宗教学校への進学、これについてはどうでしょうか。
法務省民事局長
なかなか網羅的にお答えすることは難しいところでございますが、委員ご指摘のような行為につきまして、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に対して重大な影響を与えないというものであれば日常の行為に該当し得るものと考えております。
本村議員
日常の行為かどうかわからなかったら訴えられるリスクがあるわけですよ。
だから、これをしっかりと明確にする必要があるというふうに考えます。
今日この資料に出させていただきましたけれども、この全てにおきまして日常の行為とは何なのかと全部これ丸ペケとか書いていただきたいと思いますし、その日常の行為とされない場合でも急迫だから単独行使はできるんだというケースもあると思います。
それぞれのケースでどういう場合が急迫と認められるのか、という点を一覧表にして、この委員会に提出をしていただきたいと思います。
委員長、お取り計らいをお願いしたいと思います。(そうだの複数の声)
衆・法務委員長
ただいまの件につきましては理事会で協議いたします。
本村議員
終わります。ありがとうございました。