仁比聡平議員(共産)の質疑 2024年4月19日参議院本会議
仁比聡平議員の質疑を文字起こししました。
参議院議長
ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。
順次発言を許します。(略)仁比聡平君。
仁比議員
日本共産党の仁比聡平です。
会派を代表して民法改定案について質問いたします。
離婚後共同親権を導入しようとする本法案は、親子関係と家族のあり方に関する戦後民法の根本に関わる改正であるにも拘わらず、国民的合意のないまま、まるで波風が激しくなる前にと言わんばかりに、衆議院採決、本院に送付されました。(複数のそうだの声)
とりわけ、DVや虐待から逃れ、安心・安全な生活を取り戻そうとする方々や、行政・弁護士の支援に対し、「裁判所の保護命令が出された者以外は虚偽DV」などと一律に非難する質問まで行われましたが、法務大臣、そうした非難は誤りではありませんか?(複数のそうだの声)
多くのひとり親家族から悲鳴のような怒りの声が吹き上がっています。
衆議院法務委員会採決の朝、10万筆に達したSTOP共同親権オンライン署名は、1週間で23万筆を超えようとしています。
ある方は、「裁判の尋問に立ち、震えながら喋る時、一人きりで怖かった。でも思った。私は一人じゃない。私たちだった。」と、SNSに投稿されました。
これまで沈黙を強いられてきた多くの方々が繋がり、あげてきた声を正面から受け止め、丁寧な審議が尽くされなければなりません。(複数のそうだの声)
法務大臣、広がるこうした声をどう受け止めますか?
離婚後共同親権の導入が、どのように子の利益の実現になるのか伺います。
夫婦関係は破綻しても、父母間に子どもの養育だけは協力して責任を果たそうとする関係性があり、親権の共同行使が真摯に合意され、それが子の利益に適う場合には、離婚後も共同親権とした上で諸々の規律を定めることはあり得ます。しかし、本法案はそうした合意がない、できない父母間にも裁判所が共同親権を定め得るとするものです。
法務省は、「父母の合意がないことのみをもって双方を親権者とすることを一律に許さないとするのは、かえって子の利益に反する結果となりかねない。子の利益のため必要なケースがあり得る」と言いますが、それが一体具体的にどのような場合、累計なのか今なお示しておりません。
逆に、法制審議会の民法学者から、「共同親権が望ましい場合と単独親権の方が良い場合の基準や運用について、十分な議論ができなかった」との発言がなされたのは驚くべきことです。(そうだの声)
改正法案によって、新たな人権侵害の危険があってはならないのは当然です。父母間に真摯な合意がないのに親権の共同行使を求めれば、別居親による干渉や支配を復活・継続する仕掛けとして使われ、結果、子の権利や福祉が損なわれてしまう危険は否定できないのではありませんか。
同居親の不適切養育に対しては、現行法下でも児童相談所をはじめとした支援が取り組まれ、民法上も親権者の変更や親権の停止・喪失などの対応が可能です。
あえて非合意型共同親権を導入することが子の利益に必要だとする立法事実を、法務大臣、お示しください。
法務大臣は私の質問に、「両親が離婚をせずにその家庭の中で子どもが育つ。これが一番子どもの利益」だといい、離婚後においても父母双方が適切な形で子どもの養育に関わり責任を果たすことによって、子どもの利益を守ることができると述べましたが、それは大臣の家族観であって立法事実ではありません。(複数のそうだの声)
関係が破綻した父母の葛藤に晒されることこそ、子の利益を害するのではありませんか。
日本乳幼児精神保健学会は声明で、「子どもは離婚により傷つくと言われることがあるが、正確ではない。離婚に至るまでの面前DVによる心理的虐待など、父母の諍いに伴う親子関係、離婚後の生活環境や親子関係の変化などの複数のストレス要因の絡み合いにより、身体的、心理的、社会的に大きなダメージを受けるのであり、子どもの成長発達にとって最も重要なのは、安全・安心を与えてくれる主たる養育者との安定した関係と環境が守られること」と強調して、離婚後共同親権のリスクを厳しく指摘していますが、子ども政策担当大臣、法務大臣、どのように受け止めますか。
さらに、日本乳幼児精神保健学会は、家庭裁判所で2012年頃から鮮明になった原則面会交流と呼ばれる運用に対し、臨床現場では、家庭裁判所で面会交流を決められた子どもたちが面会交流を嫌悪し、面会をめぐる別居親との紛争にさらされ、あるいは過去のトラウマからの回復が進まず、全身で苦痛を訴え不適応を起こして健康な発達を害されている事例が増えていると厳しく指摘しましたが、法務大臣、どのように受け止めますか。
「別居親との面会は原則良いこととし、子どもが別居親を拒否すると根掘り葉掘り拒否の理由を尋ねたり、どういう条件なら会っても良いかという聞き方で、直接の面会交流が実施されるように誘導し、あるいは、子どもが別居親を拒否するのは同居親のすり込みであると評価して、子どもの意思を尊重しない扱いは、子どもの意思を否定することに等しい。それは逆に親子関係の改善を困難にし、大人不信、社会不信を募らせるリスクを持つ」との指摘はその通りだと思います。
法務省は、最高裁判所とともに、この間の面会交流を含む子の監護をめぐる家庭裁判所の運用の実態について検証すべきではありませんか。(そうだの声)
本改正に当たっても、子どもの人格を尊重するというだけでなく、子どもの権利条約、子ども基本法の精神に立ち、子どもの意見表明権を明記すべきです。答弁を求めます。
子どもの意思に反する強制は、子どもを傷つけることになります。
戦前の家制度を引きずるかのように、親の子に対する支配権という認識が色濃く残る親権という用語概念を改め、子どもを主体に親子関係を捉え直し、子どもが安心・安全に暮らせるようにするための親の責務であり、社会による子どもの権利と福祉の保障であることを明確にするときです。(場内から拍手)法務大臣、どう取り組むのですか?
法案では、既に離婚し単独親権となっている親子に対して、別居親が共同親権への親権者変更を申し立て、合意できないのに裁判所が共同親権を定めることもあり得、その後、約定の養育費が払われないことがあり得ることになります。
盛山文部科学大臣は、高校無償化の就学支援金について、「共同親権で2人の親であれば、合算親権者2名分の収入に基づいて判定を行うということに当然なる」と述べましたが、共同親権になって高収入の別居親が授業料・養育費を払わないとき、無償でなくなるのは子の利益に反することは明白ではありませんか?(複数のそうだの声)
法務大臣、親の資力・収入などが要件となっている各省庁の主な支援策は児童扶養手当や日本財団のまごころ奨学金など、昨日までの調べで少なくとも28件あります。(場内からえーという声)
親の同意や関与が規定されている法令も多数に上っています。
離婚後共同親権の導入が、これらにどのような影響を及ぼすか、関係省庁ときちんと協議し、当該施策の基準と運用、課題と検討の見通しを国民が一覧できるよう、速やかに示すべきです。(場内から拍手)
子を監護する者が誰かなどの混乱をなくすためにも、少なくとも非合意型で裁判所が共同親権を定めるというなら、監護者の指定を必須とすべきではありませんか?
さらに省庁横断的な連携協力体制の構築について、衆院では与党の質問に対し、「構築に向けて具体的な検討を進めてまいりたい」と逃げ道を残す答弁にとどまっていますが、一体どう進めるのですか?
養育費の国による立替え払いと給証制度も具体的速やかに検討すべきだと考えますが、いかがですか?
法務大臣の明確な答弁を求め、質問を終わります。
仁比議員に対する答弁はこちらをご覧ください。
また、「親の資力・収入などが要件となっている各省庁の主な支援策少なくとも28件」については、その一部が下記質疑内で触れられています。(質疑当時は25件)
以上
誤字脱字がありましたらすみません。