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仁比聡平議員(共産)質疑前半 2024年4月25日参議院法務委員会

本日行われました、仁比聡平議員(共産)の質疑の文字起こし前半です。

仁比議員
日本共産党の仁比聡平でございます。
今日初会の議論を始めてみて、やっぱりこの法案というのは、親子関係と家族のあり方に関する戦後民法の根本に関わる改正なんだと。これを国民的合意のないまま押し切っては絶対にならないということを改めて強く思います。
与党からも厳しい懸念が示されている。
野党の問いに対して安心できる答弁は返ってきていない。
それがこの参議院の審議が、委員会審議が始まってなおそうなのかと、私は率直に思います。そうしたもとで、この法案でいう子の利益とは何なのかという問題について質問したいと思いますけれども、まずこども家庭庁に伺いたいと思います。
先の本会議で私は、日本乳幼児精神保健学会の「離婚後の子どもの養育の在り方についての声明」これを土台にして議場の皆さんにも質問をお伝えをし、認識を問うたわけですね。
今お手元にお配りをしております、2枚目以降に全文を紹介してますが、人格の土台を作る乳幼児期の重要性を踏まえて、2022年の6月25日に発されたものですが、ご覧のとおり発達科学の到達点を共有し、臨床現場の実情、あるいは知見に基づいて、家族法制部会当時のその審議についてこう述べています。
「その議論においては、子どもの育ちにおける重要な科学的事実が礎とされているであろうか」。これ厳しい指摘ですよね。現在の司法制度において、科学的実証的な視点が軽視されているのではないかと。
私はこの厳しい指摘を正面から受け止める必要があると思うんです。
そこで傍線を引いていますが、「子どもは離婚により傷つくと言われることがあるが、正確ではない」という一文をご紹介しました。
「子どもは離婚という事象だけで傷つくのではなく、離婚に至るまでの生活環境(面前DVなどによる心理的虐待)などや、父母の諍いに伴う親子関係、そして離婚後の生活環境や親子関係の変化などの複数のストレス要因の複雑な絡み合いにより、身体的、心理的、社会的に大きなダメージを受けている。」
この学会の指摘に対して、こども家庭庁の認識を問いたいと思って聞いたんですが、これに対する加藤大臣の答弁は極めて素っ気なくて、この問題の指摘に対する答弁を避けたのかというふうに聞こえましたし、議場でもそういう声が上がりました。
そこで改めて伺いますが、答弁でいう「婚姻状態であるかを問わず、子どもの健やかな育成に支援していく」という趣旨の答弁はどういう意味なんですか。

こども家庭庁審議官
ご指摘の4月19日の本会議でございますけれども、婚姻状態であるか否かを問わず、面前DVなど子どもに対する虐待なり得るような身体的・精神的な暴力は防がなければならない旨を答弁申し上げたという経過でございます。
これの趣旨と今紹介でございますけれども、前回の本会議での質疑でも、先生の方からご指摘がありました、日本乳幼児精神保健学会の声明にもございますように、安全・安心が得られる養育者との安定した関係性の中で育まれると。こうしたことは子どもの健やかな育成においても重要であると。
その上で、面前DVなどの心理的虐待などによる身体的・心理的・社会的ダメージについては、ご指摘のこの離婚後の共同親権の場合のみならず、婚姻中であるとか、あるいは離婚の協議中であるなど親権のありようと言いましょうか、有無と言いましょうか、そういった状況に拘わらず、どのような状況においても、こうした身体的・心理的・社会的ダメージが与えられるような事態というのは防ぐべきであるという趣旨でのご答弁というふうになったものでございます。
こども家庭長といたしましては、引き続きこの離婚前後への親の支援でございますとか、あるいは虐待への未然防止の対応、こういった支援などを行いながら、子どもの健全な育成に努めてまいりたいと、こうした趣旨をお答えしたところでございます。

仁比議員
つまり、離婚をめぐる葛藤というもとで子どもがこうやって傷つくというのはこの学会の指摘のとおりだろうけれども、それは離婚の時だけではない。
婚姻中であっても、事実婚の場合であっても、どんな場合であってもそうなんだと。
だから、児童相談所をはじめとした児童福祉行政としては子の利益といいますか、つまりこの子どもの健やかな育成、この観点から一貫して取り組むんだと、そういう趣旨のご答弁なんだ、ということですね。

こども家庭庁審議官
はい、さようでございます。
こうしたダメージというものは、婚姻関係があるかないかとか、そういったことに関係なく、他の要因でもいろいろ発生する故に、児童虐待というのは年間20万件を超える相談通報件数となってございます。
そうしたところ、要因如何問わず、しっかり対応していきたいと、そういうふうにお答えをしたということになります。

仁比議員
ということなので、そういうご答弁として受け止めたいと思うんです。
そこで改めて伺うんですけども、この私が今指摘しているようなダメージというのは、子どもをどのように深く傷つけるのか。
こうした自分が育っている環境の下でのこうした葛藤なり、ダメージというのは、子どもに対してどんな影響を与えるのか。これはいかがですか。

こども家庭庁審議官
面前DVに限らないと思いますけれども、子どもに対する虐待になり得るような身体的な、あるいは精神的な暴力につきましては、子どもの心身に深い傷を残すということ。
さらには子どもが成長した後においても、様々な生きづらさ、こういったものにもつながるものであるというふうに考えております。
その意味で、どのような状況においてもこういったダメージが起こるということは防ぐべきであるというふうに考えておりまして、その意味では、離婚前後の親の支援もそうでありますけれども、虐待の未然防止、こういう観点からも取組みを進めてまいりたいとと考えているということでございます。

仁比議員
委員会としても、深く認識を共有していく必要があるんじゃないかなと思うんですが、今日はちょっと次の問いに進みますけども、もう1点、私が本会議場で問うたのは、子どもの成長発達にとって最も重要なのは、安全・安心を与えてくれる主たる養育者との安定した関係と環境が守られることだという、この声明に対する認識だったんですね。
私はそのとおりだというふうに思うんですけれども、ここも答弁をちょっと避けられた。
確かに主たる養育者の養育が常に適切とは限らない、不適切な養育というのがあり得ます。典型が同居親による虐待ということだと思いますが、それを調査し、評価し、一時保護や施設入所や里親委託といった親子分離を行うという取組をするんですが、それらは子どもの健やかな育成を実らせるための取組だと思うんですよね。
ここはどんなふうに考えて取り組んでらっしゃるんですか、

こども家庭庁審議官
子どもの心身の健やかな育成という観点では、養育にあたる養育者など大人との間でしっかりとした愛着形成を基礎として、情緒の安定でございますとか、信頼感の醸成、こうしたものが図られて、自己肯定感をもって成長していくことができるようにしていくこと、これが重要な課題であると認識をしております。
児童虐待があるなど、子どもにとって適切な養育環境が確保されていないという場合、こうした場合には、児童相談所などで適切にアセスメントを行い、ご指摘がありましたように、場合によっては児童を一時保護するであるとか、あるいは施設入所あるいは里親といったところに措置をすることなどによって、親子分離を行うなどの対応をしております。
こうした親子分離の対応でございますけれども、こうした対応によって、子どもが暴力などで傷ついたり、あるいは必要な愛着関係が得られないといった時期が続くようなことを防ぎながら、安定した養育環境を提供する、つまり保護先の施設とか里親のもとで安定した養育環境を提供することで、ひいては子どもの健やかな育成が図られることになると、そういう考えでやっております。

仁比議員
例えばネグレクトなどの関係があったときに、一時保護をして親子を分離して、その取組の中で子どもも安心・安定をする。で、親のほうもいろいろ学び直しとか、自らの生活の立て直しとか、いろんな取り組みを行って、もう1回一緒に暮らせるように再統合を目指していくと、そういう取り組みもありますよね。

こども家庭庁審議官
失礼いたしました。施設・里親を前提にしたようなご答弁になってしまいましたけれども、ご指摘のように、確かに施設であるとか里親のところで安定した養育環境を作ることもあれば、令和4年の児童福祉法の改正の中で事業を盛り込みましたけれども親子再統合に向けて支援をしていく、こうした形でまた安定した養育環境を再構築していくとか、そういったいろいろな取り組みを児相などを関与しながら行っていく、ということでございます。

仁比議員
その学会の声明の、1枚目の下の方にこんなくだりがあります。
「主たる養育者をはじめとする周囲の人とやりとりし、優しく温かい声やウキウキするリズム、心地よい身体的刺激などの肯定的な交流を得て、脳や神経が成長し、心と体を発達させていく。子どもにとって、主たる養育者とこうした幸せなやりとりができることは生存と発達の重要な要素である」と。
こうした指摘についてはどう思いますか。

こども家庭庁審議官
先ほどの答えと重なるところはありますけれども、子どもが育っていく過程で、養育者を中心にする周りの大人としっかり愛着的信頼環境をつくっていくと、そのもとでのびのびと安心と安全ということの拠り所を得た上で、そして外の世界と触れ合っていく、探索の拠点とか、拠り所になっていくような拠点があるということが大事だと発達の場面でもよく言われますので、こうした子どもを養育していく際の環境整備、こういったものが大事な課題であると考えております。

仁比議員
ありがとうございました。
今ご答弁いただいたような、児童福祉の上での取組の、いわば指導理念と言っていいんだと思うんですけれども、児童福祉法の2条1項にこういう下りがあります。
「全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない」という規定ですけれども、これが指導理念として重いものだということでしょうか。

こども家庭庁長官官房審議官
ご指摘の児童福祉法第2条第1項の規定、これは児童虐待について、発生予防から自立支援まで一連の対策の更なる強化等を図った平成28年の児童福祉法改正の際に、児童福祉法の理念の明確化を図るために盛り込まれた規定でございます。
これは子どもが権利の主体であること、その最善の利益が優先されるべきことが、それまで法文上明確にされていないという課題があったことを踏まえて改正されたというふうに承知しておりまして、こうした児童福祉法の理念は、全ての子どもの福祉を保障し、子どもが心身ともに健やかに育つことができる社会を実現する上で極めて重要なものと認識しておるところでございます。

仁比議員
そのとおりだと思います。
そこで民法家族法の親子関係における子の利益とは何かということなんですけれども、今日もこれまで何度か質問がありましたが、大臣の答弁あるいは局長の答弁というのは、極めて抽象的ですよね。
子の利益って何をもって子の利益とするのかということが、実際の子どもの姿がこの議場にイメージが出てこないじゃないですか。ワクワクしないじゃないですか。
子の利益のために親権行使しなきゃいけない、なんて言いながら、結局なんか父母間の争いに焦点になっちゃってるじゃないですか、子どもが。おかしいでしょう。
そこで民事局長に聞きますけども、2011年の改正で、親子法制に「子の利益のために」という条文が明記されました。
820条、資料の1枚目に条文をちょっと抜粋しましたけど、監護及び教育の権利義務について子の利益のためにと、親権喪失の審判において834条が子の利益を著しく害するとき、親権停止の審判について子の利益を害するときと要件を掲げ、先ほどもお話ありましたが、民法766条の1項離婚後の子の監護に関する事項を定めるという条文について、子の利益を最も優先して考慮しなければならないと規定されたわけですね。
この現行法の下で裁判も行われてるわけですよ。だから、施行後たくさんの事案がこの法の適用という形で取り組まれてきたわけですね。
だから2011年から今日までの間の取り組みも踏まえて、改めて子の利益とは何なんですか。

法務省民事局長
具体的な子の利益が何であるかは、それぞれの子が置かれた状況によっても異なりまして、一概にお答えすることが困難ではありますが、一般論といたしましては、その子の人格が尊重され、その子の年齢及び発達の程度に配慮されて養育され、心身の健全な発達が図られることが子の利益であると考えております。
その上で概括的に申し上げれば、民法も含めたご指摘の法律等の規定における子の利益、児童の利益というものについては、それぞれ特に異なる内容のものとして定められたわけではないと理解をしております。


長くなったので後編に続きます。


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